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幸福のアリバイ

2016年11月29日 | 邦画(16年)
幸福のアリバイ~Picture~』を渋谷TOEIで見ました。

(1)俳優の陣内孝則が監督の作品というので、映画館に行ってみました。

 本作(注1)の冒頭で「葬式 Last Request」の字幕。
 次いで、通夜の模様が映し出され、僧侶の読経(般若心経)や木魚などの音がし、お焼香が執り行われています。
 亡くなったのはヤクザの親分・松田鏡蔵山田明郷)。
 その子分でしょうか、遺影の置かれている座敷で、男が二人話しています。
 男1(谷田歩)「大変だよな、お前のところいくつだ?」。
 男2(坂田聡)「オヤジが71、オフクロが69」。
 男1「じゃあ、まだだな。うちなんか80だ」。
 男2「上に2人いるんだろ?」。
 男1「だから、余計面倒くさいんだ」。
 そこへ、喪主(親分の息子:平賀雅臣)の妻(小野ゆり子)が、「足りてます?お酒。どうぞごゆっくり」と言って現れ、またすぐに出ていきます。

 隣の部屋からは、「断固反対です」と遺族の怒鳴り声が聞こえてきます。
 男1「まだ揉めてんのか、ちゃんとしないとダメだな、遺言は」。
 男2「気を使えよ、デリケートなもんだよ」。
 男1「書かせたのか、お前んとこ?ここみたいになったら、大変だ」。
 男2「黙れ」。

 そこに葬儀屋(佐藤二朗)が、「こちらで打ち合わせをしても?」と言って、部屋に入ってきます。
 男1「まだ揉めてんの?」。
 葬儀屋「いやまあ」。
 男1「やっぱ必要?遺言」。
 葬儀屋「やっぱ、あった方が」、「失礼ですが、喪主様とはどのようなご関係で?」。
 男1「会社の後輩」。
 葬儀屋「ちなみに、会社というのは?」、「ご家族が、どなたも話をしてくれないもので」。
 男2「強いて言うなら、サービス産業」。

 ここまではほんのはじめの部分。この後、話はどのように展開していくのでしょうか、………?

 本作は、人生の節目となる葬式、結婚、誕生などのイベントを5つの短編で繋いだ作品。最近では女性がメインとなる映画が多い中で、本作はどちらかと言えば男性がメインとなって描かれており、さらにどの短編もコミカルな味付けがなされていて、まずまず面白く見ることができました。

(2)本作は、副題に「Picture」とあるように、写真を巡って5つの話がオニムバス形式で描かれます。
 例えば、上記(1)でごく最初の部分を紹介した「葬式 Last Request」では、亡くなった親分・松田の遺言状が騒動の種となります。
 と言うのも、そこには相続のことは何も書かれていない代わりに、残した写真を皆に見せてくれと言っているだけながら、その写真にはとんでもないものが写っているからなのです(注2)。
 騒動の輪は広がりますが、結局、通夜にやってきた別の組の親分(大地康雄)が、「死んだ親分は、皆に笑ってもらいたいのだ。そういうヤツなんだよ、お前のオヤジは」と喪主に言い、死んだ親分が幸せそうに笑っている写真を皆が一緒に見て、お互いに笑い合うことになります。



 本作は、「葬式 Last Request」に続いて、「見合い Gift」、「成人 Suits」、「誕生 Father in Law」、「結婚 Wedding March」と4つのエピソードが綴られますが、どれも写真が意味を持ってきます。
 この点について、本作を制作した陣内孝則監督は、次のように述べています(注3)。
 「「なんで人間って、写真を撮りたがるのかな」っていうところから始まったんですよ。僕、こういう仕事をしているのに、写真が嫌いなんです。それで逆に、写真を撮る時に見えてくる人間模様が面白いんじゃないかと思ったんです。写真といえば冠婚葬祭で、葬式なら遺影、結婚式なら結婚写真や集合写真など、いろんな写真があるじゃないですか。だから、写真で始まって写真で終わる形で、その中の人間模様を切り取れないかな、というところからの発想です」。

 確かに、人生の節目となるイベントでの写真が本作では取り扱われています。
 それらの写真はどれも、如何にも幸福そうに人物が写っていますが、でも、その背後にはそれぞれの複雑な思いが隠れているのだ、ということがそれぞれのエピソードで綴られています(注4)。
 それで本作は、静止画である写真が主役のようでありながらも、それを動画で描き出しているところが面白いなと思います。
 というか、写真の方が、むしろ動画よりも背後の思いを強く感じさせることがあるようです。
 例えば、唐突ですが、『八日目の蝉』におけるこの写真(注5)。



 本作で言えば、特に、「誕生 Father in Law」のエピソードにおけるCDのジャケットの写真(注6)。
 それに、「結婚 Wedding March」のエピソードにおける最後の集合写真。
 そこでは、式場カメラマンのサラ木南晴夏)が写真を撮るのですが、打ちひしがれたサカキ山崎樹範)は写真の枠組みから外れていることでしょう。

 なお、そのエピソードは、「見合い Gift」のエピソードの後日譚のようでもあります。
 こうしたところを見ると、陣内監督はオムニバス形式のものは当たったことがないと述べているのですが(注7)、その理由の一つが分かる感じがします。
 というのも、短編のあつまりにすると、展開が不十分だと思えてくるのではないでしょうか?
 確かに、「見合い Gift」でもオチはついているように思えるものの、「幸福のアリバイ」という総タイトルからすれば、充分に描き切っているといえないかもしれません。それで、「見合い Gift」に登場するサカキとサラが、最後のエピソードに再度登場することになったのではないでしょうか(注8)?






(注1)原案・監督は陣内孝則
 脚本は、『桐島、部活やめるってよ』や『幕が上がる』の喜安浩平

 なお、出演者の内、最近では、中井貴一木南晴夏は『グッドモーニングショー』、柳葉敏郎は『踊る大捜査線 The Final―新たなる希望』、木村多江清野菜名は『金メダル男』、坂田聡は『百円の恋』で、それぞれ見ました。

(注2)親分が残した写真には、亡くなった親分がにこやかに愛人と一緒にいる姿が写っていたり、男1が「ダメよ、ダメダメ」(日本エレキテル連合の朱美ちゃん)の仮装をして親分と写っていたりするものや、男2がカツラを被っていることが分かる写真、それに政治家が親分からカネを受け取っているところを写した写真があるのです。
 喪主は、「オヤジがこんなに笑っているところを見たことがない」と言います。
 ただ、喪主は、愛人が写っている写真について、「ばあさんなんか鼻血を出して、葬式なんかしなくていいと言っている」と話します。
 それに、男1は、自分の写真を皆に見せてはダメだと言いますし、男2も、彼の写真を見せると喪主が言うと、懐から短刀を出します。さらに、政治家との写真が知れ渡ると組の存続が危うくなってしまうと、喪主が言います。

(注3)この記事より。

(注4)ただ、細かく見ていくと、2番目の「見合い Gift」で登場する「見合い写真」は、他のエピソードにおける写真とは違って実に形式的なものであり、背後の「思い」が何もないように思われます。もしかしたら、「見合い写真」に添えられている履歴書が、その背後にある「思い」なのかもしれませんが(なにしろ、写真の人物は、37歳のダサい男ながら、開業医で年収がものすごいのですから)。
 なお、タイトルにある「Gift」とは、見合い写真が、送り主である父親から娘・サラへの「お届け物」(配達人がそう言います)ということなのでしょう。

(注5)あるいは、『非情城市』(1989年)におけるこの写真。



(注6)義父(柳葉敏郎)の一人娘・ヒロミ清野菜名)が小学校入学の時の写真。義父がヒロミの相手の男(浅利陽介)に話したところによれば、この写真はヒロミの母親が撮ったが、彼女はその後すぐに失踪してしまったとのこと。

(注7)このインタビュー記事において、陣内監督は、「(オムニバス映画は、)みなさんから興行的にどうなのかといわれたが、当たったことがないから面白いんじゃないかという考え方もありますからね」、「あえてオリジナルで、オムニバスで、しかも俳優上がりの監督でという、それだけマイナス要素が重なれば、逆に面白いんじゃないか」などと述べています。

(注8)その点からすれば、「成人 Suits」も、一応、父親(中井貴一)と母親(木村多江)と成人式を迎えた息子(柾木玲弥)の写真は撮れてオチはついたものの、息子がどういう格好で成人式に臨むのかという当初の問題は何も解決はしていません。





★★★☆☆☆



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2 コメント

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Unknown (atts1964)
2016-11-29 08:48:00
オムニバス作品は、短い時間の中でどう展開をしてオチをつけるか?結構ハードルが高くて私は好きなんですが、消化不良になってしまう場合が多いですよね。
確かに「見合い」は不十分で、「終わり?」と思って軽いネタを挟んだのかな?でしたが、しっかし続編を作っていたところは、陣内監督なかなかでした。
ただ、短編オムニバスですが、ちょっと表現がくどいところが多々見受けられたのが気になりました。
もうちょっとテンポを上げて、展開をもう一つずつ入れたらもっと良かったのに。
こちらからもTBお願いします。
Unknown (クマネズミ)
2016-11-29 18:41:20
「atts1964」さん、TB&コメントをありがとうございます。
おっしゃるように、「オムニバス作品は、短い時間の中でどう展開をしてオチをつけるか?結構ハードルが高」いように思います。特に、それぞれの短編を上手くまとめながらも、全体として統一感を出さなくてはいけないところが難しいように思います。その意味で、2番目のエピソードは問題含みでしょう。とはいえ、さすが陣内監督、本作の中でちゃんと「続編を作っていた」わけですから、大目に見てあげなくてはと思いました。

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