駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

命をつなぐ

2020年11月21日 | 人生
      

 こうした感想は不謹慎と言う人も居るかもしれない。しかし時々、こんな小さなお婆さんがと思うことがある。大男は立派で貫禄がありそうだが、総身に知恵が回りかねなどとからかわれる。どことなくちょっと馬鹿にした感じが漂う小男という表現にはしばしば迫力があるとか実力があるとかいう言葉続く。大女は、どことなく肩身が狭そうで小さくなりたい雰囲気を漂わせているものだったが、今じゃあ170cmなど珍しくもなくさっそうと歩いている。
 どういうものか小女とは言わない。勿論、大女に対しての言葉であるがほとんど使われない。
 人間年を取ると縮まる。背中が曲がったり骨が脆くなって潰れたりで八十歳になれば若い時よりも5cmも6cmも背が低くなる。
 そのうえ筋肉や脂肪が落ちて体重も5kgも10kgも減ってしまう。そのため八十半ば過ぎのお婆さんには140cmに満たない30kgない人が居られる。診察をするとよくこの身体で何人もお子さんが産めたなあと思うことがある。勿論、若い時には140cm以上で35kg以上あったのだろうが、それでも小柄だったのには変わりない。多少難産でも、おそらくためらうことなく命を宿してきたのだろう。本能と言えばそれまでかもしれないが、生命の凄み不思議さを感じる。人間は社会化されているから生殖というものが露骨に現れることは少ないが、医者をしているとそうした属性に触れることがあり、心の中で唸ることがある。
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