駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

後期高齢者の時間感覚

2022年01月12日 | 診療
            

 半世紀前になるが患者さんの病歴を取る時、日時を特定するように注意されたものだ。この前、ちょっと前、先日からお腹が痛いと言われても三日前か一週間前か一ケ月前かわからない。人によって随分幅があるからだ。日時だけでなく痛みの場所も臍の周りか右寄りか下腹部かなど特定しなければならない。
 痛みの場所はともかく、時間の間隔は高齢になると延びるというか曖昧になってくる。しばしばこの前貰った塗り薬をまた欲しいとか頂戴とか頼まれることがある。爺さん婆さんのこの前は要注意で、一目でわかる過去一年間の投薬の中に入っていないことがある。ひどい時は三年前のことだったりする。
 先日、お久しぶり又診てくださいと高齢のご夫婦が受診された。八十四歳の夫に奥さんが付き添って来られたのだ。懐かしそうにされるが、マスクをしている上に年を取られたので分からずえっ誰としげしげ顔を眺めながら戸惑ってしまった。それも当然で二十五年振り、しかもお見限りで他院に変わられていたのだがその先生が閉院ということで戻って来られたのだ。そんなことで余計に懐かしそうにされたのだろうか。二三分話しているうち漸く、ああ年を取られたと面影が戻り話の辻褄が合ってきた。どうも年を取ると時間感覚が変容するようで手間取ることがある。
コメント (2)
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