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駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

ちぐはぐな進歩

2009年01月13日 | 小考
 人類が月に行って40年、今や猫や杓子まで携帯電話を使う時代になった。恐るべき科学技術の進歩があるように思えるが、意外なところ(機械的な機構に多い)が旧態依然でさほど進歩がないのに驚く。たとえば印刷機の紙詰まり、確かに回数は減ってきたが、数百回に一回は遭遇する。これはほとんどが自分で直せるトラブルなので実害は大きくないが、胃透視のレントゲンフィルムの詰まりとなると厄介だ。検査は中止になり、患者さんには平謝り、わざわざ修理の係に来て貰わねばならない。信用時間費用を失うわけだから大変な損害である。
 不思議なことに、この胃透視の機械のフィルム詰まりは私が医者になった37,8年前からある古典的なトラブルだ。どこの医者からも苦情が届いているはずなのだが、いっこうに改善しない。そして未解決のまま、今やフィルムレスの時代に移行しつつある。しつこく苦情を言えば先生この機械はそろそろ寿命です、デジタルにされてはどうですかと話を逸らされてしまう。デジタルの透視装置となれば二千万円近い価格で家が建つ値段だ。週に一、二名の検査では元を取るのに五十年掛かる、絶対にペイしない。無理に買えば余計な検査をする可能性があり、医療が歪んでしまう。
 どうも格段に進んだと見える科学技術の進歩は電子機器部門に負うところが大きく、機械的な部門は亀の歩みのようだ。デジタル化可能でパワーが微少なものはどんどん進歩し、デジタル化が難しく大きなパワーを扱うものの進歩は遅いのだ。
 医療部門でも検査は進歩したが、診察は徴候の取り方や診断の思考過程がまだデジタル化できておらず、医師がロボットに代わられるには間があるようだ。
 もっともロボット医師が優秀になったとして、患者さんがロボット医師を選ぶ時代がくるかどうか、もしロボット医師が選ばれる時代になれば、昭和生まれは生きづらいだろうなあ。もっともその時まで生きているかどうだか。
コメント
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