コマーシャルに出てくる輝くように美しい若い女性の肌にお目にかかることは年に一度もなくなった。なんだかおばさんの首筋が光っているなあと思うと汗だ。細かい汗が窓からの斜光で輝いている。
玉の汗のおじさんおばさんを診察する季節になった。診察する時、手持ちのハンカチで慌てて汗を拭いてくださる患者さんも居られるが、そうでない方も居られる。稀だが触診する時、汗で手が滑ることもある。あんた汗かきだねえと言いたくなるが、笑ってごまかしている。汗拭き用のタオルを用意してもよいように思うが、用意しないまま三十年過ぎてしまった。タオルとまではいかなくてもレストランと同じようにおしぼりを用意してもよいかもしれない。もう院長ではないので差し出がましいかと提案していない。はたして用意している医院があるだろうか。