玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

秩父幻視行

2005年11月30日 | 捨て猫の独り言
 もうだいぶ前に秩父の結婚式に出席したんだ。新郎は紋付袴で花嫁は高島田を結っていた。黒塗りのお膳に紺の座布団の宴席だった。最初はビールだがすぐにお酒だね。とっくりにおちょこじゃ間に合わない。金色に輝くやかんとグラスで秩父錦が振舞われるんだ。体裁より実質だね。土地の人が 「蜂の巣」 にしなさいと言う。何のことかと思うだろ。グラスをさかさまにしてごらん。六角形にカットされていてまるで蜂の巣だよ。飲み干しなさいということなんだ。さかさにするともう一杯とつぎのやかんが来るんだ。仲人というのが野武士のごとき人でね。黒光りして精悍な顔をしている。新郎よりもいい男だった。新郎はしこたま飲んでしまったんだね。二日酔いのせいで新婚旅行の出発を一日遅らせたそうだ。よぽどうれしかったんだね。

 秩父には創意工夫の伝統があるんだ。酒、ワイン、山菜などの特産品をはじめ観光名所も多い。天然の氷まで商品にしているんだよ。自然の恵みをとてもうまく生かしているんだ。連帯感も強いんだね。いくつかある町内会が秩父夜祭の盛りあがりを支えているんだよ。ここ5年ほど 「芝桜の丘」 が爆発的な人気になっている。知恵者がいるんだね。ピンクや白や紫などの花のパッチワークだ。北海道のラベンダーの丘を思い出すよ。4月から5月にかけての芝桜の盛りには羊山公園のあたりは大混雑だ。遠来の車で大渋滞になるんだ。電車のお客は近くの2駅を下車駅と乗車駅とに分けて利用することにしてある。地元の車は動きがとれずに生活に困る。すべてがよしとはいかないもんだね。

 落葉を踏みしめて秩父の丘陵を歩いたんだ。亜熱帯の沖縄の人たちはね、とてつもなく紅葉にあこがれるらしい。そんなことを考えながら歩いているとぽつんと一軒うどん屋がある。入ってみると客はいない。青年が出てきて店のものは旅に出てうどんはできない。手作りのジェラートならあるという。こんな山奥で色とりどりのジェラートが食べられるとは思わなかったね。ひとしきり歩いたあとで駅の近くのしゃれた飲み屋に入ったんだ。一番のお勧めのものを注文したよ。出てきたのはコチンコチンに凍らせた瓶から注がれるトロトロになったウオッカだったよ。変な言い方だけど透明な味だね。秩父はいろいろのものがあるね。中央アジアの大草原にワープできる秘密の入り口があるかも。こんな他愛ない夢を見ているうちが一番だね。

コメント (3)
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