秋生のEtude

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「倚りかからず」

2006年02月20日 17時30分53秒 | 言葉
今朝の新聞に、詩人の茨木のり子さんの訃報の記事が載っていました。79歳だったそうです。・・・心からのご冥福をお祈りします。
茨木のり子さんは、二十歳のときに終戦をむかえ、27歳の時に川崎洋さんらと共に、雑誌『櫂』を創刊。
戦後詩のリーダーの一人として活躍され、詩人の新川和江さんは茨木さんを“戦後現代詩の長女”と評しています。

茨木さんの詩集「倚りかからず」。
・・・1999年、今から6年半前の秋、人生の岐路に立ち、さまざまなことで悩む私に、ある年上の友人が贈ってくれた一冊の詩集です。


 
「倚りかからず」   茨木のり子

  もはや

  できあいの思想には 倚りかかりたくない

  もはや

  できあいの宗教には 倚りかかりたくない

  もはや

  できあいの学問には 倚りかかりたくない

  もはや

  いかなる権威にも 倚りかかりたくない

  ながく生きて

  心底学んだのはそれぐらい

  じぶんの耳目

  じぶんの二本足のみで立っていて

  なに不都合のことやある

  倚りかかるとすれば

  それは

  椅子の背もたれだけ


この一篇の詩を前にして、当時、私は、自分の弱さが見えてきて、誰かを頼って生きてきた自分が無性に恥ずかしく、そしてこの先の人生を、人としてどう生きるのが最良の方法なのか・・・そんなことをずいぶんと考えました。
茨木さんが長い人生の末にたどり着かれた、人としての生き方。それは男女の性差の前に、まず一己の人間として自立して生きる、という実にシンプルな答だったことに、私は生意気ながら、深く共感しました。

人は一人でこの世に生まれ、そして最後は一人で死んでいくのです。
人は孤独です。そして同時に人の中で生きていくのです。
まずは、自分の足で立ててこそ、人となるのです。そして、ある時は誰かを支え、ある時は誰かに支えられ、人と関わりながら生きていくことが、人としての使命であり、しあわせでもあると思うのです。

私の人生に目標ができたとすれば、“自立”・・・これしかありません。
子育てのゴールも同じです。子どもたちが、それぞれに自分のことが自分でできる人となるように、世のためにはなっても、世の迷惑にならぬよう生きていって欲しい、というのが私の理想であり、目標です。
・・・とはいえ現実は、なかなか理想には近づいていかず、一進一退の日々ですが。
はあぁぁ~~~

茨木さんの、生きていく上で、自らに問い掛けるような、はっとするような鋭い数々の詩のなかで、もうひとつ。
ぬるくなった私の気持ちに、気合いをいれてくれる詩を。


「自分の感受性くらい」   茨木のり子
 
  ぱさぱさに乾いてゆく心を
  ひとのせいにはするな
  みずから水やりを怠っておいて

  気難しくなってきたのを
  友人のせいにはするな
  しなやかさを失ったのはどちらなのか

  苛立つのを
  近親のせいにはするな
  なにもかも下手だったのはわたくし

  初心消えかかるのを
  暮らしのせいにはするな
  そもそもが ひよわな志にすぎなかった

  駄目なことの一切を
  時代のせいにはするな
  わずかに光る尊厳の放棄

  自分の感受性くらい
  自分で守れ
  ばかものよ




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6 コメント

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自分の感受性くらい・・・自分で守り続けたい! (まざあ・れいく)
2006-02-21 22:39:03
秋生さん、はじめて「コメント」させていただきます(ドキドキ)

今朝の朝刊に、茨城のり子さんは、ぴんと背筋の伸びた日本語の使い手で、「戦後現代詩の長女」と評された方だと書いてありました。

「自分の感受性くらい」は、心につきささりました。まだまだ未熟な40代です。
返信する
同じです (秋生)
2006-02-21 23:53:43
まざあ・れいくさん、ようこそおいでくださいました

ずっと、お待ちしていましたよ!うれしいです。



茨木さんの書かれる詩は、静かに激しく、けっして誰かを責めたりせず、常に自分を律しているような、凛としたところがあって、その清々しさに、ハッとさせられます。

「自分の感受性くらいは」

・・・本当に、気持ちいいくらい心につきささります。私も、同じくまだまだです。



また、いつでもおいでくださいね。楽しみにお待ちしていますよ~
返信する
ありがとうございます (ひろみ)
2006-02-24 00:06:53
>なにもかも下手だったのはわたくし



その通りですよね・・・・。

未熟である自分から、何とか脱皮して成長したいです。



目からウロコでした。。涙



マクベスの先行は厳しいようですが、充実の観劇になるように祈ってます。

返信する
自立、と書いて自ら立つ (秋生)
2006-02-24 21:37:27
ひろみさん、どこまで生きれば、目標に手が届くのでしょう。

もう、人生の半分は生きてきたはずなのに・・・

いつまでたっても上手に生きられません。



それでも、前に進むしかないのですが・・・



茨木さんの詩の中で、もうひとつ好きな詩「汲むーY・Yにー」というのがあります。



・・・・・

年老いても咲きたての薔薇  柔らかく

外にむかってひらかれるのこそ難しい

・・・・・



私も目からウロコどころか、涙があふれそうになりました。



日々精進。

・・・これしかありませんね、きっと。

返信する
素敵な人 (ぎん)
2006-09-17 07:25:16
でしたよね。



トラバありがとうございます。

なんか、秋生さんとは、どこかで同じ感性感じます。

(^^)V
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あこがれます (秋生)
2006-09-17 21:12:37
ぎんさん、こちらこそTBありがとうございます。

茨木さんの作品はどれも、本当にその生き方が現れていて、素敵だな、と思います。

ぎんさんも、「汲むーY・Yにー」お好きなんですね。

私もです。

いつか、茨木さんの生前の死亡通知書のこと、紹介させていただいても、よろしいでしょうか?



>同じ感性

・・・こんな未熟な私でおはずかしいですが、そう言ってくださると、うれしいです。

共感って、同じ感性だからこそできるのでしょうね(笑)
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