脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

群盲評象

2018年08月04日 | 二段階方式って?

若い読者の方は、今日の表題?と思ったかもしれません。
フロックス(散歩途中、いつもきれいにお花を咲かせているお宅の方が、招じ入れてくださいました)

この成句の意味の解説から始めましょうか。
目が見えない人を集めて象に触ってもらい、それぞれキャッチした「象」の説明を求めると、それぞれの人が触った部分の説明を「象」と主張したというインドの故事から来ています。
触った場所が、鼻、耳、脚、牙、しっぽだとしたら、たしかにまったく違う説明に終始してしまうことはよくわかります。
キキョウ

「象」という全体を知らないために、自分が触った部分こそ「象」であると思い込んでしまう。正しいと信じ込んでいることが全体ではなくそのものの一部にしか過ぎないことに対する警句です。
差別用語の印象が強いためか、最近使われることが少ないようですが、「目が見えない」というのは象徴的で盲人というよりも物事の本質が見えない人の意味なのですが。ちなみにブッダは「悟りの境地にある人、つまり目覚めた人」という意味です。
ヒャクニチソウ

ついでに。
小人物には、大人物の評価はできないという意味にも使われます。
ヒャクニチソウ

閑話休題(カンワキュウダイ。それはさておき話を戻しての意味)
国立精神神経医療研究センターの「認知症のリスク因子研究」の紹介記事に目が留まりました₊。(2018.7.19.産経新聞)
見出しは「日常活動、社交性が大切」でした。40歳以上の男女を対象にネットを通じて調査するという新しいやり方で、半年のスパンを開けて二回認知機能検査を行うというものです。認知機能低下の項目として1「加齢」2「毎日の活動力や周囲への興味の減少」3「聴力の損失」4「体のどこかに痛みがある」5「人生が空っぽに感じた」などの項目が強く関係していた
結論として、「新しいことに取り組むと脳が刺激されるといわれる。他者との交流が予防策の一つになれば」との意見を紹介していました。
ヒャクニチソウ

報道されたのはほんの一部かもしれませんが、一瞥しただけで、質問したくなるところがたくさんあります。
認知機能は「単語をどのくらい憶えていられるかのテスト」ということで、いくらなんでもそれだけで認知機能のレベルを決めることができるかどうかという疑問。
先にあげた2「毎日の活動力や周囲への興味の減少」5「人生が空っぽに感じた」これらは、このブログで何度も話しているように前頭葉機能低下の症状です。つまり前頭葉機能が低下すると「新しいことに取り組む意欲も、他者との交流を求める気持ちもなくなる」のです。卵が先か鶏が先かの議論が必要なテーマです。
ルリタマアザミ

疑問は全部横に置いて、国立精神神経研究センターが、少なくとも認知症予防に「日常活動、社交性が大切」と発表したことを評価したいと思ったのです。
私たちエイジングライフ研究所は、認知症は前頭葉を含む脳全体の使い方が足りなくて発症する、いわば生活習慣病であることを、長く主張してきました。
日本における研究者分野の趨勢は、アミロイドβやタウ蛋白や脳の萎縮などに、認知症の原因を求め続けています。アセチルコリンが原因物質と言われたこともありますが、これは否定されました。アミロイドβ説も世界的には過去のものになりつつあります。例えば世界屈指の製薬メーカーである、イーライリリー社が「アミロイドβにターゲットをおいた認知症の治療薬開発からは手を引く。期待の大きさを理解していただけに残念」という発表があったのですよ・・・

【米イーライリリー】認知症治療薬「セマガセスタット」の開発を中止

そんな中で新しい視点を持ってくださったと、私はうれしく思いました。
コンロンカ

ところが、ところがです。
FBを眺めていたら、「認知機能を維持する『ノビレチン』で人生100年時代を凛と生きる」という宣伝ページが飛び込んできました。
これは宣伝のページではあるのですが、国立長寿医療研究センターのドクターが、その大部分の解説をしていらっしゃいます。
「認知機能維持に重要な3つの行動」として「運動」「食事」「社会・知的活動」をあげた後で、アルツハイマーマウスを使った実験で「ノビレチン」を投与するとアミロイドβがたまりにくくなるという結果や最近の研究結果までを紹介。
沖縄の高齢者が元気なのは「ノビレチン」を多く含むシークァーサー摂取のためという推論まで記されていました。
この花の名前は「度忘れ」と言われました。私も聞いたことはあるのですが度忘れ(笑)

「国立」を冠した研究機関に所属していらっしゃるドクターが、まったく違う見解を述べてしまわれるのが「認知症」という巨象なのです。
正しい視点を持って眺めたとき、いくら巨大でもその全体像を見ることはできます。その条件は二つでしょう。
生活実態からではなく、その実態を生み出す脳機能から見る。特に前頭葉に注目する。(マウスには前頭葉がないので、アルツハイマーマウスの実験では、ヒトの前頭葉機能は理解できません)
セルフケアもおぼつかないようなレベルではなく、正常レベルからどのように認知症が始まっていくかを知る。

スエ―デンのカロリンスカ研究所の研究発表を日経サイエンスで見つけて、ちょっとうれしくなったこともついでに報告します。
大規模調査で見えたカギ 生活習慣でリスク低減









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