オペラファンの仕事の合間に パート2

大好きなクラッシック音楽やフィギュアスケート、映画などを語ります。メインは荒川静香さんの美しさを語るブログ。

映画「シベールの日曜日」

2010年06月30日 14時26分25秒 | 映画
映画「シベールの日曜日」 (フランス映画 モノクロ)

主演 ハーディ・クリューガー、パトリシア・ゴッチ
監督 セルジュ・ブールギニヨン  音楽 モーリス・ジャール

1962年ヴェネチア映画祭特別表彰、1963年アカデミー賞外国語映画賞 受賞

あらすじ
インドシナ戦争で誤って少女を射殺したと思っている心の闇を持ち記憶喪失になったピエールは、ある日、寄宿学校に入れられるために町にやってきた12歳の少女に出会う。
彼女の孤独に自分と通じるものを感じたピエールは、日曜日ごとに彼女と会って遊ぶようになる。
ピエールは、名前もわからない、この少女(シベール)が自分の心の中に立ちこめる霧を払いのけてくれるような気がしてくる。そして少女もこの過去の記憶を失ったピエールだけが、家族にも捨てられて孤独な自分をやさしく包んでくれるものを感じる。
しかし、周囲の人々は異様な目で見ており、そして悲劇的な結幕をむかえる。

私は、この映画はかなり以前、レンタルビデオを借りてきて見て深い感動を憶え、もう一度見たいものと思っていましたが、今月、HDニューマスターで初DVD化され、迷わず購入しました。

「シベールの日曜日」

アンリ・ドカエ撮影のモノクロの映像が本当に美しい。2人が湖のほとりで楽しげに遊ぶシーンは特に詩情あふれ美しい。
少女がピエールを見つめる眼差しが凄い。少女の眼差しではない。恋する一人の女性の眼差しである。12歳で命をかけた恋なのである。これを映像で伝える当時のフランス映画界の物凄さ!
もし現在、この作品を映画化したら単なる興味本位の映画になってしまったかもしれない。
清らかで孤独な魂の触れ合いによる本当に純粋な愛の物語である。
映画のラストでの少女の叫びが心に響き胸をかきむしられる思いがします。
「私はもう名前はないの。誰でもないの」

今回この映画のDVDを見終えて、今は亡き映画評論家の淀川長治氏がスピルバーク監督の「シンドラーのリスト」を見た時のコメントを思い出しました。
「アカデミー賞を取ろうとする魂胆が見え見え。何と貧相なんだ。」
そして戦闘シーンや残虐シーンがなくても戦争の悲しさが伝わってくる映画としてフランス映画の「かくも長き不在」(1961年)を挙げられていました。
この「シベールの日曜日」も何か共通するものを感じました。
最近の映画はCG全盛で、見た目勝負の映画が多くなってしまいましたが、心の奥底を揺るがすような映画をもっと見たいものです。