真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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スノーデンのリークした機密文書とアメリカのグラデーション民主主義

2022年07月22日 | 国際・政治

 7月20日、ゼレンスキー大統領のオレナ夫人が、米議会で演説し、「大統領夫人としてではなく、一人の娘、一人の母親として演説したい」と語り、「ロシアは人々を殺し、米国は救っている。我々は感謝しているが、残念なことに戦争は終わっていない」と述べ、市民の犠牲を防ぐために武器や防空システムの供与など、さらなる軍事支援の提供を訴えたといいます。
 でも、子どもたちに「もう空爆もミサイル攻撃もないから、安心して眠りなさいと言ってあげられるように」するためには、停戦・和解を実現し、戦争を終わらせることではないのか、と私は思います。
 アメリカが合意すれば、停戦・和解が可能なのに、なぜ武器や防空システムなどの軍事支援の提供を呼び掛けるのか、と思うのです。ウクライナの人たちはもちろんですが、世界中の人々が、ウクライナ戦争のために、食糧問題やエネルギー問題で追い詰められ、特に弱い立場の人々にとっては、死活問題になっています。それをすべてロシアのせいにして、停戦・和解のための話し合いを呼び掛けず、軍事支援を訴えるのは、おかしいのではないか、と私は思います。

 私は、ウクライナ戦争の経緯を考えると、ゼレンスキー大統領やオレナ夫人に、武器や防空システムの供与など、さらなる軍事支援の提供を訴えさせているのは、ロシアをヨーロッパから排除し、弱体化させたいアメリカではないかと疑わざるを得ません。ゼレンスキー大統領やオレナ夫人は、アメリカのシナリオ通りに動いているように思います。

 アメリカの過去の戦争が、それを物語っているように思います。

 アメリカが国連憲章違反やハーグ条約、ジュネーブ条約などの国際条約違反をくりかえしてきたことが否定できません。第二次世界大戦時における日本の都市に対する空爆も、広島・長崎に対する原爆の投下も、さらには、ベトナム戦争時の枯葉剤の散布や絨毯爆撃なども、明らかに国際法違反であったと思います。 
 
 湾岸戦争で、アメリカが国連憲章違反や国際法違反をくり返したことは、ラムゼー・クラークの告訴状を中心にすでに取り上げましたが、さらに、湾岸戦争以降のイラクに対する経済制裁について、エリック・ホスキンズ博士(湾岸平和チーム医療協力者公衆衛生と災害援助の専門家)は、
イラクの民間人の苦しみや死は、戦争自体よりもむしろ、制裁の結果であるところが大きいように思われる。イラク人民に対する本当の戦争は、経済制裁による永続的な戦争だった。継続的に課された懲罰目的の制裁は、確実に、流行病(コレラを含む)の蔓延、飢餓そして死へと導いた。制裁は、基本的人権のあからさまな侵害をいろいろな形で感じさせた。
と語っていることも見逃すことができません。

 アメリカが、敵対する国の人たちの人権を侵害してきたことは、数え切れないのです。 
 だから、シリアにおけるアメリカの資源略奪行為について、先日新華社通信が報じた、
”China urges U.S. to stop looting Syrian national resources
Source: XinhuaEditor: huaxia2022-07-20 19:46:30
BEIJING, July 20 (Xinhua) -- The United States should immediately stop plundering Syria's national resources, a Chinese Foreign Ministry spokesperson said here Wednesday.・・・”
 という記事なども、私は、事実に基づいたものであろうと思います。
 そうしたことを踏まえると、私は、ウクライナ戦争の停戦・和解を呼びかけ、国際社会におけるアメリカのやりたい放題をやめさせることが、今、最も大事なことではないかと思います。

 下記の「スノーデン 監視大国日本を語る」エドワード・スノーデン、国谷裕子、ジョセフ・ケナタッチ、スティーブン・シャピロ、井桁大介、出口かおり、自由人権協会監修(集英社新書)の国谷裕子氏の文章は、アメリカの民主主義がいかなるものであるかを知り、課題を解決するために重要な一文であると思います。

 世界人権宣言(外務省の仮訳文)第十二条
 何人も、自己の私事、家族、家庭若しくは通信に対して、ほしいままに干渉され、又は名誉及び信用に対して攻撃を受けることはない。人はすべて、このような干渉又は攻撃に対して法の保護を受ける権利を有する。
とあります。
 でも、プライバシー権に関する国連特別報告者の、ジョウセフ・ケナタッチ氏(Joseph A. Cannataci、法学者、マルタ大学教授)は、”アメリカ法の下では、プライバシー権が保障される主体は、アメリカ人だけ”であると言っています。
 そしてそれは、スノーデン氏がリークしたNSA機密文書が証明しているのです。

 だから、アメリカの民主主義は、グラデーション民主主義で、あくまでも自国中心の民主主義であり、真の民主主義ではないと思います。
 グラーデーションは、アメリカの次に、ファイブアイズの国々が「白」に近い状態で続き、その次に、その他の同盟国があり、さらに非同盟国が灰色で続き、ロシア・中国の友好国、社会主義体制の国々、反米的な独立国などが濃い「灰色」となり、対極に中国やロシアがほぼ「黒」に近いグラーデーションで続いているように思います。
 そして、アフリカやラテンアメリカ、中東や東南アジアの濃い灰色の国々が、アメリカに逆らったために主権を侵害され、基本的人権を侵され、軍事侵攻を受けて荒らされてきたと思っています。 
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               あとがき 浮かび上がった情報格差の深い溝
                                                国谷裕子

 スノーデン氏によってリークされたNSA機密文書の衝撃は、その報道からすでに5年が経過しているにもかかわらず、静かにしかし深く続いています。
 NHKは昨年(2017年)4月、インターセプトと共同で、スノーデン氏がリークしたNSA機密文書のうち、日本に関わる文書を明らかにし、NSAが日本の諜報活動を支援するために、スパイのグーグルと呼ばれる大量監視を可能にするアメリカの諜報プログラム、「XKEYSCORE(
エックスキースコア)」を日本側に提供していたことを報道しました。そして、その後、この機密文書による取材をNHKは継続し、今年(2018年)5月、NHKスペシャル「日本の諜報、スクープ最高機密ファイル」において、さらに新たな多くの事実を明らかにしています。
 この番組によって報道された機密文書およびNHKの取材によって明らかにされた主な内容を以下にまとめてみます。

・機密文書でDFS(Directorate for SIGINT)と記載されている日本の組織は、防衛省情報本部電波部のことであり、このDFSがNSAの日本側のパートナーとなっている。その活動実態は防衛省内でもあまり知られていない。またDFSと深い関係にある組織として内閣情報調査室も機密文書にCIRO(Cabinet Intelligence and Research Organization)という名称で頻繁に登場している。文書には、日本のネット諜報導入を推進しているのはCIROとの記述がある。
・米軍横田基地に通信機器を製造する新たな工場を建設するにあたり、660万ドルの建設費のほとんどや年間37万 5000ドルの人件費は、日本政府のおもいやり予算として計上しているものから支出されていた。その費用によって製造された通信機器は、米軍によるアルカイダ攻撃を支えた。
・90年代から2000年代はじめにかけて、クロスヘア作戦と呼ばれる諜報作戦に日本も参加していた。
・DFSの傍受施設は全国に6ケ所ある。
・2012年以降、DFSの通信傍受システムのサイバー化により、ネットによる傍受など日本の諜報も新たな時代に入っていたとみられる。
・コードネームでマラード(MALLARD)と呼ばれる衛星傍受システムにより、日本は、民間通信衛星を経由しているインターネットから大量の情報を収集している。
・文書には、マラードは1時間あたり50万件の傍受を行っていたが、そのなかで安全保障関連のリスクとなるのは一件、との記述がある。
・機密文書について内閣情報調査室は、文書については出所不明のものであり、コメントは差し控えると回答。また防衛省は、情報収集活動は法令を遵守して適正に行われており、一般市民の情報を収集しているものではないと回答している。

 番組は、国民の知らないところで社会的議論もないままネット諜報が肥大化することに警鐘をならして終わっています。
 スノーデン文書とそれに基づくNHKの取材によるこの報道は、これまで明らかにされてこなかった日本の諜報活動の一端と、一般市民の情報を大量に収集している可能性を指摘したのであり、今後の日本における個人情報をめぐる議論にとって極めて重要なものと思われます。

 問題はプライバシーかセキュリティか、という二者択一ではない
 今回のインタビューのなかでスノーデン氏は、 XKEYSCOREなどの監視技術がアメリカから日本に提供されていたことをあらためて明らかにしたうえで、その提供されていた事実にだけこだわってはならない、このようなことは、いたるところで行われ、それが諜報機関の役割であり、このこと自体は、衝撃的ではないのだと話しています。NSAの元分析官として直接諜報活動に携わってきたスノーデン氏にとっては、たしかに、そう思えるのかもしれませんが、これまで、まったくと言っていいほど、日本の諜報機関に関する情報が知られていない日本においては、スノーデン氏が明らかにしたこと、そして機密文書をもとにNHKが取材し、番組として伝えた内容は、やはり衝撃的なものでした。しかし、スノーデン氏はインタビューのなかで続けて、「重要で啓示的なことは、必要がないとの理由で国民に事実が知らされていないということです」と語りました。まさに5年前の告発以来一貫してスノーデン氏が主張しているのは、このことなのです。
 スノーデン氏がリークしたNSAの機密文書により明らかにされたことのうち、世界中、とりわけアメリカ国民に最も大きな衝撃を与えたのは、Collect it all’アメリカの政府機関NSAが、一般市民も含めた世界中の人々の個人情報を大量に無差別に収集しているという事実でした。国民に知らされることなく、閉ざされたドアの向こうで行われているこの個人情報の大量収集は、単にアメリカ国内法を逸脱しているだけでなく、民主主義の根幹を侵しているものと受け止められたのです。
 国家の諜報機関による情報収集の在り方については、それが安全保障上の措置を理由として行われているだけに、情報の収集やその秘匿の妥当性について必ずしも否定できない面があり、個人のプライバシー保護との関係については議論が難しいと言えます。日本においても2020年の東京五輪を控え、欧州での相次ぐテロ事件や北朝鮮をめぐる緊張関係のなかで、「安全安心」「安全保障」への志向、関心が高まるなか、個人のプライバシー保護よりも「国家の 安全安心」「国民の生命」が大切、プライバシーよりはセキュリティが重要との風潮が勢いを増しているように感じます。アメリカが9・11以後、大量監視システムを積極的に導入した状況に似てきているのかもしれません。しかし、プライバシーかセキュリティか、という問の立て方は果たして正しいでしょうか。
 このことについてスノーデン氏は、繰り返し、問題は目的ではなく、結果なのだと強調しています。
テクノロジーの進歩により、特定のターゲットの情報だけではなく、すべての人々の情報通信を目的のいかんにかかわらずすべて収集できてしまうこと、Collect it all、が問題の根幹にあるとしているのです。つまりプライバシーかセキュリティかという問いではなく、安全保障のための情報収集活動の結果として生まれた個人情報の大量収集、大量監視をどうコントロールすべきなのか、という問いを立てることが重要なのです。
 また、スノーデン氏へのインタビューに続くシンポジウムでは、スノーデン・リーク後のアメリカの動きが報告されています。それによれば、明らかにされたNSAの大量収集、大量監視について、法廷においてその一部が違法とされ、またアメリカ議会もNSAの情報収集権限を部分的に制限するよう法律を修正しています。アメリカ自由人権協会(ACLU)のスティーブンシャピロ氏は、講演のなかでこのことを「プライバシーのささやかな勝利」と呼んでいました。リーク以前には、誰一人として誠実な議論をしていなかったにもかかわらず、スノーデンリークによって最低限ではあるが、情報収集による監視についての議論が始まったことを評価しているのです。もちろんシャピロ氏は、NSAは、いまだにあらゆるインターネット上に飛び交う個人情報に対し、「より広範で、かつ侵入的」な監視を行っていると指摘することを忘れてはいませんでした。

 情報収集と監視の時代にもとめられるもの昨年の4月、スノーデン氏がリークした機密文書のうち、日本に関わる文書がNHKとインターセプトによって公開されたことにより、日本では情報収集や監視はどのように行われているのか、アメリカが開発、実用化し、日本にも提供されているとされた大量収集、大量監視プログラムは、どう利用されているのか、など大きな疑問が一挙に湧き上がりました。それにもかかわらず、その後、先ほど触れた「NHKスペシャル」による報道を除けば、その疑問に答えた報道はなく、依然としてブラックボックスに入ったままの状態が続いています。しかしそうしたなかでも、スノーデン氏へのインタビューやNHKの報道によって、日本政府はいま、アメリカとの同盟関係において、これまでの「サード・パーティー」の位置付けから、「セカンド・パーティー」(ファイブ・アイズ)への「格上げ」(シックス・アイズ化)を志向しているのではないかとの疑念が浮かび上がってきます。それは、セカンド・パーティ国間で行われている大量の個人情報の相互交換の環(ワ)に日本も加わることの可能性を意味します。スノーデン氏は2013年に成立した特定秘密保護法も、その法制化の背景には、日本とアメリカの間に秘密についてのパートナー関係を強化したい思惑があるのだと従来から主張していました。
 しかし、個人情報の大量収集と大量収監視という世界中に衝撃を与えた報道があり、日本国内での実施の可能性が指摘されながら、いまだに日本においてはこのことについて大きな議論とはなっていません。そのことの原因の一つには、政府の対応の在り方にあると思えます。
 スノーデン氏はインタビューのなかで、アメリカにおけるプライバシーに対する脅威はなお深刻だが、アメリカ政府は暴露された監視プログラムの一部が違法であったことを認めるなど、プログラムの存在を認め、対話を試みている。しかし日本政府は、明らかにされた機密文書自体を信憑性に欠けるとしてメディアの質問をかわそうとしている。それは国民を侮蔑するものだと述べています。文書の存在さえ否定してしまうのであれば、議論そのものが成立しません。2018年8月5日の「NHKスペシャル」においても、政府の内閣情報調査室はNHKの取材に対し、文書については出所不明のものであり、コメントすることは差し控える、と回答したことが紹介されています。これでは、国民の情報収集についてのあり方を議論することはできません。
 先ほど触れたように、シンポジウムでは、個人情報の大量収集、大量監視について、アメリカでは情報の管理にかかわる法律が無視されたリ、法律を逸脱した行為なのではないかとの議論が行われ、愛国者法など、法律自体のあり方も問われることになったとの報告がありました。このことは、大きな限界や運用体制の不備があるものの、またその実際の運用については、その多くが知られないままであったにしろ、情報やの収集や監視といったものは法によって規定されたものでなくてはならないという考え方自体は、 アメリカでは従来から定着していたことを示しています。それだからこそ、スノーデン・リークによってさまざまな議会での議論も含めた社会的対話が成立し、法の修正、運用体制の不備の整備、今後の問題点などがさまざまに検討されたのです。
 このことを踏まえれば、スノーデン文書によって明らかにされたようにアメリカから日本に大量収集、大量監視のシステムが提供されたのであれば、すべてをブラックボックス化するのではなく、その運用にともなって発生するであろう個人情報の大量収集、大量監視について、それをコントロールするための法整備が必要となります。このことについて法空間に大きな欠落部分を残したままでは、立法、行政、司法による相互牽制、相互チェック機能が働きようがありません。シンポジウムでの出口かおり氏の、多くの日本の監視政策が法律の定めなく行われているとの報告に、ケナタッチ氏は懸念を表明し、監視政策のコントロールのための国会による法制化の必要を力説しています。データ収集の目的を限定し、当人に何が集められているかを知らせるという個人情報保護におけるプライバシーの原則と、監視のための情報収集行為の関係性、整合性を法的に規定することがいま求められているのではないでしょうか。それが民主主義社会の基本なのです。
 日本でも議論されるべき法整備について、ケナタッチ氏がシンポジウムにおいて紹介し、この本にも収められた「監視システムに対する保護措置」についての5つのカテゴリ、①法による監視政策の規定、②独立機関による承認、③大量監視の禁止 ④監視の事後的検証、⑤透明性・情報公開、これからの議論にとって、 極めて重要な指摘だと私には思えます。

 スノーデン氏へのインタビューを始めるにあたり、テクノロジーの発達によって可能になった個人情報の大量収集、大量監視によって、国家と国民相互の情報アクセスの格差は、飛躍的に拡大してしまい、国民主権という民主主義の根幹を揺るがしかねない状況が到来しています。テクノロジーの発達によって高度化していく情報収集技術、監視技術を前に、そのコントロールはどのようにして可能になるのでしょうか。もはや、私たちには政府をコントロールすることは無理なのでしょうかとの、いささかネガティブ私の質問にスノーデン氏は、政府に対して説明責任を追求する人権NGOやメディアの強い姿勢と、テクノロジーの進化を個人情報を守るためにも活用することが重要だとして、その双方に自らも関わっていきたいと、答えていました。この答えは、日本へのメッセージでもあります。
 情報格差の深い溝を少しでも埋めるべく、政府が何をしているのか、力を持つ者に対して説明責任を求めて問い続けていく責務を報道機関は負っています。そしてまた大量の個人情報をふだんあまりにも無警戒にインターネット上に流している私たち一人ひとりがネット空間でのプライバシーを取り戻すためのさまざまな行動を起こさなくてはなりません。シャピロ氏が語ったように魔法の解決策はありません。これからも、スノーデン氏が告発、提起した問題を私たちは受け止め続けなければならないのです。

 

 


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