実はモーツァルトの(後期)交響曲全集を持っていない。モーツァルトの演奏には、なぜだか「こうあって欲しい」というこだわりが強く、同じ理由でピアノソナタ全集も未だに揃えていない。単品では色々と買ってはいるのだが、これまで全集で揃えたいと思うものには出会えなかった(局所的に感動するものはある。例えばクレンペラーの40番とか、ピアノならバックハウス。しかし全集なし)。先日書いたベーム・ウィーンフィルのライブ(34番)が、自分の思い描くモーツァルト像にマッチしており、またモーツァルトはウィーンフィルに限るとも前々から思っていたので、ここはベーム・ウィーンにするか・・と思ったのだが、実はベーム・ウィーンフィルによるモーツァルト交響曲の録音は意外に多くない。ベームにはベルリンフィルとの全集があるのだが(決定版と言われる)、昔ちらっと聴いた限りこれは重厚感に溢れており、今求めているイメージのものとは違う。そこで閃いたのが「バーンスタイン・ウィーンフィル」。ねちこいバーンスタインによるモーツァルトなんて考えられない組み合わせだったが、先日読んだ本によれば、バーンスタインはウィーンフィルに「モーツァルトはよくわからないので、皆さん教えてください」と語って指揮したらしい。ベームもそうだが、ウィーンフィルは指揮者に引きずられずに自主的な演奏をするときに最大の成果を出す場合が多い。これは意外といい演奏かもよと考え、25.29.ハフナーが入った廉価DG版を購入(800円)。これが予想をはるかに上回って大当たり!テンポはいたって快速。音楽に停滞がなく、下手な小細工もなく、完全にウィーンフィルの音だ。3曲ともライブ録音で(デジタル録音・音質もよい)その前向きな演奏がよい。やはり高い音に伸び上がった時の弦楽器の音の輝きはウィーンフィルだけのものだ。2曲目で十分に及第点だったのだが、驚いたのがハフナーの4楽章。速い!それも無茶に煽り立てられているような速さではなく、10速まで可能だけど8速でドライブでいるような安定した速さ。これだけの速度でも、全く崩れず、さらに音楽をしているウィーンフィルはさすがだ。バーンスタインは最初のテンポだけ示して後は指揮台で飛び跳ねてニコニコしていたんだろう。まさに予想があたった名盤だった。初めて求めていた演奏にCDで出会ったように思う。最後期の交響曲群も同じコンビで録音があるので、早速注文してしまった。ジュピターはメータ・ウィーンフィルによる1991年のライブ映像が一番の好みなのだが(これもウィーンフィルがノリノリの演奏)、それに迫るか、超す演奏であってくれればと思う。(ジャケットのWien Philharmonikerの綴りが間違えて、Philharmoninerなのが玉に傷)