Wilhelm-Wilhelm Mk2

B級SFからクラシック音楽まで何でもあり

廃墟価値の理論

2007-05-16 | Weblog
ふとしたことで、ナチス時代の建造物に興味が沸いてる。ヒトラーお抱えのA.シュペーアという建築家は、建造物は数千年後でもその美しさと威容を誇れるものでなくてはならないという「廃墟価値の理論」を主張し、それを非常に気に入ったヒトラーが、彼の案をもとにベルリンを壮大な神殿首都に改造しようとした。名前もゲルマニアと変更する予定だったらしい。残されたその設計案だけでも、圧倒される思いだ。ファシズムらしい発想だと切り捨ててしまえばそれまでだが、ギリシャやローマの遺跡も、東大寺の大仏も、当時の帝国が民衆からの搾取と奴隷の使役によって作り上げたわけで、民主主義の現代からみたら褒められた代物ではない。本来、為政者というものは巨大建造物を造るのが常である。最近の日本では都庁舎がその良い例ではあるが、あれだけの高層建造物であるにも関わらず、偉容さも壮麗さも何も感じさせない。デザイナー丹下某は、民主主義の現在を鑑みて、為政者の圧力をできる限り消すことに腐心したのに違いない。「廃墟価値の理論」には全くもってそぐわない建造物ともいえる。そして現在、都庁は雨漏りに悩まされているらしい(笑)。

舞台恐怖症とか

2007-05-10 | Weblog
毎日更新するというのは難しいものです。最近読んだ本、観たDVDについて。

1)「記憶の遠近法」澁澤龍彦:古本屋に立ち寄ると、澁澤氏の著作を探すのが常となっています。氏の残した作品は膨大なんだけど、文庫でも結構高いし、見つけにくいものもある。本作は氏の短編エッセイ集です。前半は澁澤氏らしく西洋のオカルトやアイコンについて(タロット、一角獣・・)、後半は玩具や雑貨、地方の町に関する氏の感想が詩情豊かに書かれてます。澁澤氏についてはもっと書きたいことがあるので、また後日。好きな一文(糸車から)「糸車を見ていると、私はなにか女の悲しみというようなものを感じてしまう。」

2)「舞台恐怖症」ヒッチコック監督:パブリックドメインの500円DVD。ヒッチコック前期の傑作といわれてるものです。マレーネ・ディートリッヒとジェーン・ワイマンという2大女優の共演。ディートリッヒが妖艶な悪女を、ワイマンがコミカルだけど芯のある主人公を演じています。まさにお互いに当たり役。彼らの演技を観ていると、やっぱり大女優ってのは凄いな・・・とつくづく思わされます。ディートリッヒの美しさは、もう異星人級だな。あれは地球人の造形ではないと思う。ラストはヒッチコックらしい大どんでん返し。私も完全に騙されてしましました。パブリックドメインの廉価DVDは色々とあるけど、とにかく英語字幕がでるものを選ぶようにしてます。ここのシリーズがお薦め。

3)「タイタンの戦い」ハリーハウゼン監督:特撮オタクには神様なハリーハウゼン最後の作品。ペルセウス伝説の映画なのであるが、出てくる怪獣すべてを人形アニメーションで表現してしまうのだ。確かに、人形アニメは動きも硬いし、合成ではめ込んだ生きた人物とかみ合わないことも多々ある。しかし、質量感や、末端箇所の細かい動きはCGや着ぐるみでは表現出来ないのだ。本作の薄暗い宮殿の中でのメデューサとの対決などは手に汗を握る緊張感のある演出となっている。メデューサを半人半蛇の「蛇女」としてデザインして、人形アニメで表現したのは正解だったと思う。あれがかぶり物だったら、あれだけの緊張感とグロテスクさは表せなかった思う。ストーリーは、色々と脚色してあるので、実際のギリシア神話と違う点も多いが、道案内をする機械仕掛けのフクロウ「ブーボー」(写真)が心を和ませてくれる。(アテナが自分のフクロウを渡すのが嫌だったので、鍛冶屋の神に代用品を作らせた。)このブーボー、首や目がくるくる廻ったり、水に落ちてもザブザブ川底を歩いてはい上がってきたり、飛ぶ前に羽のチェックをパタリパタリしたりと、所作が可愛く、SWのR2D2を思い起こさせます。
 色々とギリシア神話の知識を補完しようとWikiを読んでいたのだけど、アンドロメダ王女ってのは設定ではエチオピアの王女なんだね。勿論映画の中では、金髪の女性が演じていたけど、実際は黒人の王女で、ペルセウスとは異民族同士の結婚だったはずだという意見もあるとか。(エチオピアが黒人の国であることはギリシア神話成立時にはわかっていたから)。

欧州コンサート巡り

2007-05-01 | Weblog
 色々な演奏会を現地で聴いてきました。
ウィーン・フィル(オペラも)、ウィーン放送響、ドレスデン・シュターツカペレ(オペラも)、ゲヴァントハウス、ベルリン・シュターツカペレ(オペラのみ)、ベルリン・フィル。
 すべての演奏会が、今まで聴いてきたものは何だったのか?と思うような音響。どれも日本公演でもおなじみの楽団だが、やはりホームグラウンドでの定期は違う。滅多に来られない会場だから、なるべく良い席で聴くべきと思い、席代をけちりはしなかったが、それでも日本で聴くより全然安い。なんだか日本のオケを高いお金を払って聴きに行く気がしないな・・・。それぞれの楽団に独特の個性を感じたが、とにかく現在のウィーンフィルとベルリンフィルの音作りは全く違う方向性なのだとつくづく感じた。音量はベルリンフィルのほうが大きいのだろうけど、耳を通して脳内で響く音量はウィーンのほうが印象的。ベルリンフィルは全員が一生懸命弾いて(ドレスデンもそうだった)、それで分厚さを出しているような感じだが、ウィーンフィルは徹頭徹尾、音色と音程の美しさを大事にしており、倍音を綺麗に積み重ねて音量を表現しているような感じか・・。といってもベルリンフィルの圧倒的な迫力感は、ベルリンだけにできる音楽だと思う。ウィーンフィルのコンマスはホーネック氏でした。これまで聴いたウィーンフィルの日本公演はすべてキュッヒル氏だったので嬉しかったですね。ちなみにベルリンフィルは安永さんでした(前回ベルリンで聴いたときもそうだったな)。どのオケにも若い団員が目立っていたのも印象的だった。ベルリンフィルのVa主席に金髪の若い女性が座っていました。清水さんは残念ながら乗ってませんでした。ウィーンフィルのバスも若者が首席の位置に座っていました。誰よりも一生懸命に、そして的確そうに弾いていました。公式サイトでの経歴を読む限り、まだ20代前半らしいが、すでに歌劇場オケの首席であるようだから、ウィーンフィルでも首席ということなのだろうか?終演後、前に座っていた金管の団員から握手を求められていたので、あれが首席デビューだっただろうか?今年のニューイヤーでソロを弾いたらしいので(観てない)DVDを購入してみよう。