Wilhelm-Wilhelm Mk2

B級SFからクラシック音楽まで何でもあり

カラヤンの偉大さ

2004-10-29 | クラシック音楽
フルヴェンの次に好きな指揮者と問われたら、間違いなくカラヤンをあげる。これを多くの人は疑問に思うかもしれない。というのは、フルヴェンとカラヤンは水と油のようだと世間では曲解されているからだ。確かに生前フルヴェンはカラヤンを警戒していた言われている。しかし、それはカラヤンの非凡な才を認めていたいうことの裏返しであって、またカラヤンは自分が少なくともフルヴェンと同じような種類の感動を呼ぶ指揮はできないことは認めていた。しかし、カラヤンには独自の「美学」と「磨き抜かれた音」があり、これほどまでオーケストラを自在に操れる指揮者はいないのではないかと思う。実際にカラヤンの指揮する曲のアンサンブルはどれを聴いても完璧だ。複雑な構造をもつリヒャルトシュトラウスの作品なども、何なく噛み合わせてしまう。フルヴェンほどテンポを大きくゆらす事はしないが、音楽の場に合わせて独特の推進力を魅せることがある。(弛緩することは絶対にない。)私は世間で言われるほど譜面に忠実な「即物的」な指揮者ではないと思う。
私も相当のカラヤン録音を持っているが、一番好きな録音は、ベートーヴェンの「英雄」である。実はフルヴェンの英雄よりも感動する。と書くとさらに驚かれるかとも思う。というのはフルヴェンの英雄といえば、信者からすれば神棚にまつるほど神聖的なものだからだ。しかし、私は重厚壮大なフルヴェン解釈より、カラヤンの爽快かつ強靭な英雄のほうが好きだし、この曲の性格にあっていると思う。カラヤンはベルリンフィルの100周年記念でも「英雄」を振ったのだが、そのライブ映像は市販されているので是非見ていただきたい。まずオーケストラの機能とはここまで凄いものかと徹底的に知らしめてくれる。記念演奏会だけあって、ベルリンフィルの全てのトップ奏者が勢揃いし、またライブ一発取りのためカラヤンも汗だくで鬼気迫る指揮ぶりを魅せてくれる。特に3楽章から4楽章にattacaで突入する前に、さっと手で顔の汗を払いとばす所が堪らなくカッコイイ。私はオーケストラの機能は軍楽隊と同じであり、指揮者は指揮官のようなものだと思っているのだが(古の指揮者はそういう雰囲気を持っている)、カラヤンはある意味でそういうタイプの最後の指揮者っだのかもしれない。

アマでもプロでも実力者 カートアングル

2004-10-29 | プロレス
木曜なので、WWE Smackdown!を見ています。
今日はそのレポートを。
写真の人、Kurt Angle カートアングルは
アマチュアレスリングの金メダリストです。
アマレスの下地とメダリストのキャラを
ふんだんに使ってレスラー街道ばく進中です。
といっても、アメリカを代表するヒーローなのでなく、
皆から「バカにされる」キャラなのです。
なにせ、入場曲「メダル(笑)」がかかると、
それに合わせて、客全員が You Suck!と大合唱。
それに戸惑いながら入場してきます。
試合は反則をして勝ったりしてブーイングを浴びてます。
そう彼は「悪役=ヒール」の一種なんです。

しかし、もとオリンピック金メダリストだけあって、
試合運びや技の切れと豪快さ(とくに投げ技)は
WWE内でも圧倒的な実力をみせてくれます。
試合だけで魅せれられる数少ないレスラーなのです。
そんな彼ですが、あえて「嫌みなエリートキャラ」を貫いて、
プロとして仕事をしているのは非常に感心させられます。
観客も彼のことを馬鹿にしたり、ブーイングしたりしますが、
それは「お決まり」であって、彼の入場や試合での盛り上がりは、
彼が実力あるメインイベンターであり
皆から愛されているレスラーだということが一目瞭然でわかるのです。
彼の口癖はit's true!!, it's dammn true!!
(ほんとだぞ、ほんとにほんとだぞ~!)

シャカのことを想う

2004-10-27 | Weblog
お釈迦様といえば、「仏教」を作った人と皆認識していると思いますが、その仏教は殆ど絶滅してしまったことを誰も知らないんじゃないでしょうか。え?日本にはお寺も沢山あって仏像もあるじゃん?いえ、それは仏教といえば仏教だが(まあそう名乗っているし)、シャカが見つけた考え方とは全くもって正反対もしくは、相当に薄まった別の宗教です。いや別にだから邪教だとかいってんじゃないですよ。別物だということです。
シャカは悟りを開くのですが、実は自分だけでその得た境地を楽しんで人生を終わるつもりだったようです。つまり元々、誰かを救うためにとかそういう救済思想はなかったのです。しかし、伝説では「神」に請われて「一般人には無理でも、話せば少しは役立つかもしれない」と自分の考えを説いて回る訳ですが、結局は「てめえの力で何とかしないと駄目だ」というとても「宗教」とはいえない突き放したものなのですよ。お経を百万遍唱えれば天国に行けるぞ!とかそういうことは言ってないのです。

「死は必ずやってくる。これは絶対」「自己が何かに執着している限り、そこから生まれる苦しみは逃れられない」「無茶な修行は無意味。誰もそれで悟ってない」「中道をいくこと。やり過ぎも怠け過ぎもだめ」「私の像などを作って崇拝してはならない=偶像崇拝禁止、意味無し」「死後の世界のことはわからない。知らないことは知らない」「神も強欲で悟りに至って無い=絶対神の否定」

2500年前の人間がこんなこと考えてたんですよ。これって、すごい「ニヒリズム」だと想うのですよね。そりゃ、普及せずに絶滅するなって感じです(実際には色々な宗教と融合していった)。でも「正しい」という感じがします。人間というものが陥りがちな穴を全て見透かしているというか。現代の我々の生活スタイルでは全くもってシャカの「悟りの境地」に到達することは不可能でしょうが、少しでも自分の人生に取り入れることはできるんじゃないかと想うのです。今、一番勉強したいことの一つですね。

メシアンを聴く

2004-10-27 | Weblog
現代音楽は苦手というか、あまり聴いてないのだが、メシアンは素直に聴くことができる(メシアンはもう現代作曲家とはいえないかもしれないが)。疲れて帰宅した時に部屋に低い音量で流していると、メシアンの優しいハーモニーは心に染み渡る。このナクソスのCDには有名な「Qurtet for the End of Time」が入っているが、後半に収録されているピアノとヴァイオリンによる「主題と変奏」も素晴らしい。

フルトヴェングラーの第9を聴く

2004-10-26 | Weblog
今日のとどめを聴く。フルヴェンによる第9だ。録音は1942のもの。所謂バイロイト版よりこちらが好きだ。実はもっと狂ったやつも好きなのだが、それは持って来なかった。私は趣味でコントラバスを弾くのだが、復帰したらこの曲から参加させてもらおうと思い、スコアもパート譜面も持ってきているのだが、なんといってもこの曲は難曲中の難曲。演奏不能箇所といわれる部分もあちこちにある。例えば、4楽章のAllegro energicoのところとか(エネルジーコですよ、エネルジーコ!)。正直リハビリどころではない、はっきり言って無理。過去にも第9を数度弾く機会があったが毎回「返り討ち」状態だった。実はベートーヴェンの友人にドラゴネッテイというイタリア人のベースの達人がおり、その影響でベートーヴェンのバスパートは異様に強化されているのだ。しかし、ベートーヴェンの書いたバスパートはただの徒労でなく(ブルックナーとは違う!)古今東西の管弦楽作品の中でも圧倒的に「カッコイイ」。一人でさらうだけでも十分に痺れる譜面だ。

フルヴェンの演奏はもう何もいうこともない。細部は省略するが、聴きながら息がつまるというのはこういうものだ。これこそ「演奏芸術」だ。近年「ピリオド演奏」だの「古楽器奏法」と色々理知的な演奏が溢れている。まあそういう理屈や後付けはどうでもいい。ただ何でも好いから感動させてくれ。演奏は博物館に飾るためにするのではない。私が聴いた限りこの手の演奏は(すべては言わないが)
「塩っぱい」
です。ササミですよ。セルロースですよ。ライナーノーツで細々説明しなきゃいけない音楽なんて音楽でない。

WWE

2004-10-26 | プロレス
科学の話を書こうと思ってたのだけど、今見ているアメリカンプロレス
WWE
が異様に面白いので、そのネタを。

アメリカにも多くのプロレス団体があったのですが、いまではこのWWEの一人勝ちです。面白い事にこの団体は、RawとSmack Downという2リーグ制をしいていまして、前者は毎週月曜にライブで、後者は木曜に録画で放送されます。これは吸収合併してふくれあがった選手を巧く使うためですが、マンネリを防ぐために、たまにドラフトで選手を交換します。各リーグにそれぞれGM(たいてい悪党)がいて対戦カードを決める権利が与えられているのですが、その上に泣く子もだまる社長のマクマホン(写真)がいるわけです。どんなに幅を聴かせている悪党GMでも、社長の「You are fired!!」が発せられると、もう従うしかありません。

今日もRawで悪の限りを尽くしていたGMが、社長命令でハゲにされてました。それまでの悪行が酷かったので、ここで客のボルテージは最高潮に。こういう演出がアメリカですよね。ほんと面白いです。

Backhaus

2004-10-25 | クラシック音楽
帰宅して、私が必ず冥土に持って行く1枚、バックハウスのベートーヴェンの後期ソナタ集を聴く(30-32)。はー。。なんでこんなに美しい音なんだろうか。枯れきって澄みきってるんだよなあ。私がいつも想像するのは「高級備長炭」。
曲も奇跡なら、演奏も奇跡。

実は、このCDはお小遣い貯めて初めて自腹で購入したCDなんだよね。写真は全集だけど、貧乏学生だった私は、一枚一枚買いそろえていったものです。バックハウスの録音はよく再販されて、その度にジャケットも変わっていくので(それもどんどん安っぽく)、最後のほうは中古屋巡りして、同じジャケットのものを探すのが大変だった。普通のCDは外見は全然気にしなく廉価で買うのだけど、これだけは譲れなかった。でもディアベリ変奏曲だけはこのジャケットを見つけられなくて他ので持ってます。考えたら15年くらい前になるのか?一生変わらない気持ちとか感動があるとすれば、こういうことを言うんだろうな。

バックハウスが好んだ言葉「真面目な仕事は、真の幸せをつくりだす」

日本で一番有名なアメリカ人は!?

2004-10-25 | プロレス
そりゃ間違いなく「スタン・ハンセン」でしょう。ええ。この人を知らない日本人はいないと思うのですが。ウィー!ですよ。ブルロープですよ。テキサス・ロングホーンですよ。必殺のウェスタンラリアート!ですよ。私が最も尊敬しているアメリカ人です。もう引退しちゃいましたが、取り合えず、テレビをつけたら、そこにいつも彼がいた。入場から大暴れ。ブルロープで客を蹴散らしながらリングへ猛突進(コアなファンは自分から打たれに行きます)。リング上でコールされると、客も一緒に大合唱で「ウィー!」、私もテレビの前でロングホーン作って叫んでました。

いや、真面目な話、本当に尊敬してます。まず何が凄いかって滅多に「休まない」こと。そしていつも「全力ファイト」すること。デビュー当時からスタイルを変えてないこと。リングを降りると「紳士」であること。実はプロレスする前は小学校の「地理の先生」だったこと。そして、両膝を人工関節にするまで現役にこだわったこと。いや「プロ」中の「プロ」ですよ。まさしく。

面白いことに、ハンセンは本国ではあまり人気がなかったのですよね。アメリカはセクシー路線なので、ハンセンのような荒くれ系は駄目だったみたいですね。私はこういう古きよき時代の「職人」はどの分野でも好きです。

うーん。

2004-10-25 | クラシック音楽
今聴いてる音楽。
Steve Reichの Tehillim
ミニマル後の作品で、ヘブライ語の詩を歌っています。
美しい。(でも聴くってよりはBGMですね。)

うーん。いまいちですなあ。すでにネタ切れか?
じゃあ「座右の銘」を一つ。

「三日坊主にならないためには、三日で終わらせろ!」

一般常識は真実なのか?

2004-10-25 | Weblog
ヘビー?なタイトルですが、いや、ちょっとネットで面白いこと知りまして。皆さん(って、どのくらいの人が実際見ているのかしりませんが・・)石油(炭化水素)は一体何からできたか知ってますか?小さい頃、学校で習いましたよね。「大昔の植物とかプランクトンが、地下にたまって強い圧力で押されて出来たもの。」つまり、生物由来ということです。まあ、だから「化石燃料」って呼ばれんているんですが。

私もずっとこれは当たりまえだと思っていました。しかし、これは「有力な説」の一つに過ぎないって事を知ったんです。研究者によっては(主にロシア)、地球の地下には莫大なオイルが眠っていて(無機由来、つまり炭酸ガスと水素からできた)火山活動等で浅い所に上がってきたという説です。石油には「バイオマーカー」と呼ばれる生物由来(生物にしか作れない偏った立体)の物質が入っておりこれが「化石説」の決定打とされているのですが、それは後から混入したとしても説明がつくとか、実際に昔生物がいなかったはずの地層を掘ったら石油が出たということもあり、科学としては、どちらが完全に正しいとはまだ結論づいてないのです。(どちらも正しい可能性もある)

だから、何だよ?って感じだと思うのですが、子供の頃「教科書」から習ったことって、全部が正しいのかな?とか思って。何でも少しは疑ってかからなきゃいけないんじゃないかと思って(度が過ぎると、陰謀論者になってしまうけど)。20世紀以内に全ての石油は枯渇する!とか散々子供の頃脅かされて、かなりびびっていたのですが、いや、全然。まだまだ余裕であるみたいです。なんだかなあと思ってしまいました。まあ私は「水素エネルギー」信者なので、石油の利用は早くやめるべきだと思っていますが。

「しょっぱい」とは何か?

2004-10-24 | Weblog
単刀直入に「塩」です。ええ。しょっぱいんです。元々の出自はわかりませんが(相撲?)、プロレスでは、あるレスラーが不甲斐ない試合をした後、自らマイクで「今日は、塩っぱい試合してしまい、申し訳ありません!」と潔く観客に誤ったことから、「塩っぱい」という言葉が爆発的に使われるようになりました。でも、雰囲気はわかりますよね?全然盛り上がらず、面白みのない、あーあという試合です。でもこれって興行としては「最悪」なんですよね。「つまんねー」と言われるのがなんたって最悪。「わざわざ来た甲斐ねー」という感じですか。でも、どの世界にもこの「塩っぱい」というのはあると思うのですよ。研究世界でももろにこれがあります。研究も人が見て「面白い」とか「役に立ちそう」とか思ってくれないと、ダメなんですよね。自分だけで「いけてる」と思っても駄目なんですよ。他人が思ってくれないと。学会発表した時に、質問も拍手もこないようなものはやっぱ「塩っぱい」んですね。ほんと、私もつまらない発表とかしてしまい、塩をまき散らすことがあります。ちなみに、プロレスでは、塩っぱかったレスラーが吹っ切れたりして良い試合を連発しはじめると、「脱塩した」とか言われます。化学用語なんですけどね。

カミングアウトするか

2004-10-24 | Weblog
こういった日記みたいなものを書くのは始めてなんですよね。もともと日記は苦手で人生で一度もつけたことないし。色々と試してみたけど、すでに飽きてきました、やばい。やはりクラシック音楽だけではネタがもたないか。音楽は一番大事な趣味なんだけどなあ。しゃーない、ここはひとつカミングアウトする事にします。

実は私「プロレス」大好きなんです。ええ、正直なところ舞台を使った興行という意味では、音楽と「全く同じ」だと思っております。この意見をいうと、大抵の人は怪訝な顔してひいていくのですが。(生で見た事は1回しかないんですがね)でも本気で思っています。

勿論、プロレスが「ショー」だってことは当然知ってます。私は真剣勝負の格闘技は嫌いです、野蛮ですから。プロレスはそういうところとは全く違うところに力点があるのですよ。プロレスほど「即興能力」を要求されるショーはないです。確かに「勝ち負け」は決まってます。でも約20分間をどう動くかは決まってません。2人の人間がそれだけの時間を寸断なく動き回れますか?言葉で確認なんかし合ってる時間はないですよ。客が見てますから。そこで個々の選手の力量がでるのですよ。もう下手な選手同士だとお互い顔を見合わせて動きが止まってりして、下手な役者のドラマみたいに見てられません。そして、やはりメインイベンターを務めるような選手の攻防は、流れといい技の決まり度といい興奮させられます。世に有名だった選手(猪木とか)の試合は本当に素晴らしいです。「巧い下手」があるんです。これを楽しむのが好きですなんですね。
こちらアメリカに来て初めてアメリカプロレスをテレビで見ましたが、いやさすがショー世界の国、素晴らしい!最近の日本のプロレスはもう「しょっぱい」ので、ここ数年は全く見てなかったのですが、アメリカは人種のるつぼといわれてるだけあって、色々な肌の色のレスラーが、その出自背景をいかした個性を出して頑張っていて面白いです。(写真はメキシコ系アメリカンレスラーのエディゲレロ。下積み時代は日本にいました。今はメインイベンター。)こちらに来ている日本人レスラーも勿論頑張っていますよ。
そういえば、「しょっぱい」という言葉は一般には通用しないことを最近しったんですよね。次はこの「しょっぱい」という言葉を説明したいと思います。

尊敬する科学者

2004-10-24 | Weblog
写真の人がすぐに認識できる方は素晴らしい。そう、アメリカのテレビSFシリーズ「STAR TREK」のMr.Spock(スポック)です(ドクタースランプではスコップ君として出てきましたね)。彼の役割は宇宙船の科学主任なのですが、実はヴァルカン星人と地球人とのハーフで、日頃は感情表現を抑制しています。私、このスポックを架空の存在ながら非常に尊敬してまして、理系の道に進路を決めたのもこの人の影響です(本当に)。Star Trekはシリーズ化されていまだに続いてしますが(私は原理主義なので最近もののは知りません)、科学力の偉大さを知らしめてくれる番組です。特にこのスポックは天才的で、とんでもない計算を一瞬でやったり、特殊な発想をもって毎週船の危機を救ってくれるわけですが、たまに人間性をちょろっと出したり、実は趣味でハープが弾けたりとなかなか深いキャラなのです。
スポックは劇中でなかなか含蓄のあることを言うのですが、
「代替案は必ず存在するものだ。」
という台詞は、今実験がどんづまりで苦しんでいる私の心の支えです。

3人目のWilhelm

2004-10-23 | クラシック音楽
さて3人目のWilhelmとしてフルヴェン、バックハウスと同時期の偉大なピアニストWilhelm Kempffの登場です。巷の評論本ではドイツ正統派の継承者としてバックハウスと「双璧」と言われてます。(まあ評論家は色々と冠詞をつけたりカテゴライズするのが仕事ですからね。)私の感動したケンプの演奏はベートーヴェンなら「田園」と「テレーゼ」ですね。ケンプの人情を感じさせる優しいタッチがよく曲奏にマッチしていたと思います。ケンプは非常に長生きしたのですが(1895-1991)、彼が亡くなった時「追悼限定版」と銘打って彼のベートーヴェン全集をグラモフォンが発売したのですが、当時貧乏高校生だった私はその特別版が欲しいというよりは、ここで手に入れないと一生ケンプのベートーヴェンは手に入らないと勘違いしまして(アホ)、親に頭を下げてその「限定版」を手に入れたのですが、その後すぐに少しだけデザインを買えた普及版(写真)が廉価で出てきまして、アコギな大人の世界の洗礼をうけたわけです。よくケンプはテクが無いとか揶揄されますが、それほど気になったことはないですねえ。でもバックハウスに比べるとやはりその点は確実に劣るか。私がケンプの録音で一番感動したものは、ロンドンにいれたバッハの「半音階幻想曲とフーガ」でした。この曲なんかかなりヴィルトオーゾさを感じさせてくれたんだけどなあ。あのアルバムに入っていた他のバッハやベートーヴェンの小品も絶品でしたね。私にはケンプは温かいという印象が強いです。なんか書いているとケンプの演奏を聴きたくなってきますね。帰国したら室内楽とかを新たに聴いてみよう。このケンプ、フルヴェンとも共演を何度もして録音もあるらしいです。確かにバックハウスよりケンプのほうがフルヴェン向けですよね。でもバックハウスも温かいんだけどなあ。ちょっと質が違うんだけど。ベートーヴェンの27番の2楽章とかもう涙ものなのだけど。

Barenboim "Rhenish"

2004-10-23 | クラシック音楽
今晩も軽く晩酌。BGMはバレンボイムのシューマン全集から3番ライン。ピアニストとしてのバレンボイムは好きなのだが、指揮者としての彼はそれほどでない。未だ鳥肌ものの演奏に出会ってないから。指揮者としての実力は有ると思う、オケさばきも明確でいつも快演だ。だがなあぁぁ。いつもただの「快演」「善戦マン」なんだよなあ。誰でも知ってると思うが、バレンボイムはフルヴェンを痛く尊敬しており(幼少の頃、ピアノを褒められたそうだ)、自称「後継者」らしい。しかし、出てくる音楽は正反対なんだよなあ。テンポ取りとかは似てるんだけど、フルヴェンの凄さってそうじゃないんだよ。「人間力」なんだよ。フルヴェンの有名な逸話に、他の指揮者のもとで練習しているベルリンフィルが、たまたま覗きにたフルヴェンの姿を見ただけで音ががらっと変わったというのがある。尊敬度とか畏怖とかは、弾き手の筋肉=音まで影響を与えるんだよ。バレンボイムにはそれを感じないんだよなあ。カラヤンもクーベリックもショルティもアバドも方向性はそれぞれ違うけどそれぞれの「音」があったんだよなあ。この最新のシューマンCD。昨日書いたアバドショックがあったものだから、バレンボイムもそろそろそういう円熟味を出してくれるかと思ったけど、やっぱ「快演」だけだった(涙)。といっても全敗ってわけでなく、自分としては3番だけはちょっとグッときたかな(最終楽章)。実際、巧いんだよね。オケはシュターツカペレだし(ベルリン)。アンサンブルもばっちりだし、加速も推進力ありまくりだし、バレンボイムも気合い入りまくりで鼻息聞こえるし。生で聴いたら絶対会場は総立ちでブラボーの嵐だと思う。でもなあ、なにか大事なものが足りないんだよなあ。ビールで言えば「バドワイザー」なんだよ。損した気にはならないけど、やはりバレンボイムのピアノを評価している自分としては、物足りない。
ちなみに、私はシューマンの交響曲はどれも好きで、特に2番がお気に入りだ。この曲は縁があって3回も演奏した。また、好きな録音はクーベリックがベルリンフィルと入れた全集。特に2番が’いい。4番は勿論フルヴェンのスタジオ録音が絶品。あれが一発取りだったなんて。