Wilhelm-Wilhelm Mk2

B級SFからクラシック音楽まで何でもあり

Great Pianists (1) : Geza Anda

2006-12-15 | Weblog
 ハンガリー出身でスイスのピアニスト。もちろん名前は知っていたが、DGの廉価CDでよく見かけるばかりで(失礼ながら)、ほとんど聞いたことがなかった。今回、セット中で7枚目のアンダを真っ先に聞いたのは、HMVで視聴用に置いてあったのがこのアンダで、聞いた際にあまりにも吃驚したから。曲目はショパンの練習曲Op.25、シューマンのダヴィッド、それにシューベルトの13番。ショパンのエチュードはこれまで自分が求めていた演奏そのものといってもいい演奏。とにかく音が柔らかくて、音色の変化が万華鏡のように強弱剛柔遠近と多彩、ルバートが自然でそれでいて貴族的な粋さがあって、テンポは速くないけど快速なの。こういうショパンを待っていたんだよな。ショパン・アルバムとかあったら是非揃えたいものだ。シューマンのダヴィッドはあまり知らない曲というか、持っている録音が最近のポリーニのもので、冒頭からの轟音で全曲聴き通す前にノックダウンしてしまいお蔵入りになっていた。しかし、アンダの柔らかく気品のある演奏を聴いて、ああこんな優しい曲だったんだとこの曲を見直した。先日のS・ネイガウスのクライスレリアーナでも感じたことだけど、これまで聴いたきたシューマンのピアノはどちらかというと「豪腕」系ばかりで、こういうソフトで音色で勝負する演奏で聴くと格別だなと。そしてやっぱりシューマンはピアノだなあと。(交響曲もいいけど、ピアノには全然到達してない。皆が言うとおり。)。プログラムの最後は、シューベルトのソナタでしっとり締めるという粋さ。なんてハイセンスな選曲なんだろう?前半の前プロでもいいくらいなのに。ほんと、いい趣味していたピアニストなんだろうな。フルトヴェングラーが絶賛したのも頷けます。このシューベルトも透き通る様な音で語りかけるような演奏。古典もいい。ベートーヴェンはどうかわからないけど、モーツァルトの協奏曲が全集で出ているようなので揃えてみよう。実はこれまでモーツァルトの協奏曲全集は誰のにしようかと迷って20年。今回のアンダの演奏でやっと決まりました。

GREAT PIANISTS

2006-12-14 | Weblog
ボーナスが出たので、久々にCDを大人買いする。といっても廉価ものばかり。(総額8000円、16枚)
目玉は10人の名ピアニストのライブを一人一枚で編集した「グレート・ピアニスツ」。1960-80年代のルガーノでのライブ録音を中心に構成されている。

CD-1:【フリードリヒ・グルダ】
CD-2:【ヴィルヘルム・バックハウス】
CD-3:【ルドルフ・ゼルキン】
CD-4:【シューラ・チェルカスキー】
CD-5:【ラザール・ベルマン】
CD-6:【エミール・ギレリス】
CD-7:【ゲザ・アンダ】
CD-8:【ヴィトルド・マルクジンスキ】
CD-9:【ジェルジ・シフラ】
CD-10:【ブルーノ・カニーノ】

 曲目も各ピアニストの得意なものばかりという感じで、ゴルドベルグから古典派ーロマン派まで多彩。オムニバス的にも楽しめる。またすべてライブ録音(拍手入り)なので各ピアニストのライブでの力量がわかる。私は昔から演奏はライブに限ると思っているので(雑音とかは気にならない)、こういうライブ録音集が廉価で手に入るのは本当に嬉しい。(10枚で1700円)。
 まず「気品の権威」と言われ、フルトヴェングラーに「ピアノの叙情詩人」と褒め称えられたゲザ・アンダから聴きました。点数だけ先に言うと95点。この感動はまた次に書きます。もう最初のショパンのエオリアンからとろけるようですよ。一日一枚ずつ鑑賞して年末までこのネタを続けるのもいいかも。

カウント・ゼロ

2006-12-05 | Weblog
 読了。読み終わったのはもっと前だったが、何度も戻っては読み直して、自分的に掴んだ感があるまで繰り返した。凄い・・・・世界観。ギブスンの本は難解で取付きにくいけど、はまると本当にはまるというのがわかる。とにかく修飾・形容詞が多くて人物の姿、情景を一つ一つ丁寧に想像して読み進めなくてはいけない。それを積み重ねていくと、本当にサイバースペースに突入している気分になる。右脳で読む本。訳した漢字に付けられた英語読みのルビがまたクール。ギブソンが日本を好きだったのか、出てくるハイテク企業はすべて日本のもの。ソニー、日立、JALとなんでも出てくる。そして世界で一番違法な生体移植、生体改造ができる都市は千葉シティ・・・なぜか。ちなみにカウント・ゼロは伯爵ゼロのことで主人公のアカウント名。本作は3人の主人公が独立して話を作っていくので、登場人物も3倍。そして最後にそれがひとつによりあわされる。前作「ニューロマンサー」ではAIが自己進化のために表裏一体のAIをハッキングするという内容だったが、今回はそれから7年後の世界。どうやらその影響で、サイバースペース内に何かがいるらしい・・・
すでに次作「モナリザ・オーヴァドライブ」を読み進めてるが、文体(訳)にも大分と慣れてきてスピードが上がってきた。以下キーワード集(自分のため)

チバシティ
スプロール
電脳空間:サイバースペース
カウボーイ
デッキ
氷(ICE):黒い氷
ホサカ
オノ=センダイ
マース
没入:ジャックイン
冬寂:ウィンターミュート
迷光:ストレイライト
テスィエ・アシュプール
ディクシー・フラットライン
フィン
ケイス
ボビィ:カウント・ゼロ
ターナー
モリィ・ミラーシェイド

スタニスラフ・ネイガウス

2006-12-02 | Weblog
 最近はまったピアニストというのはスタニスラフ・ネイガウスのこと。ブーニンの父と言えば想像しやすいが、両親は早くに離婚してブーニンは母方で育てられ、S・ネイガウスは早死にしたので(53歳)、親子の接点は希少だったようだ。それよりも、スタニスラフ・ネイガウスは、ロシアピアノ界の親玉ゲンリヒ・ネイガウスの息子というべきである。この両親も早くに離婚し、母の再婚相手がノーベル賞作家のバステルナーク(「ドクトル・ジバゴ」)の息子であったので、S.ネイガウスはバステルナーク家で育ったらしい。しかしピアノの指導は実父ゲンリヒがきっちり行い、スタニスラフは後にロシアで教授となり後進を指導している。このように血統も生活環境もサラブレッド中のサラブレッドだったので、そのプレッシャーと、もともとナイーブな性格だったことから、生前は色々と苦労したようだ。確かに写真をみると、ちょっと薄幸な雰囲気がある。(最期は突然だったらしく、自殺とも言われている・・・)

購入したCDはDENONが再販したロシア・ピアニズムのシリーズから1979年に行われたモスクワ音楽院でのライブ録音。演目はシューマンから「色とりどりの小品」「クライスレリアーナ」ドビュッシーの前奏曲から5曲。スクリャービンの小品とソナタ5番に練習曲嬰ニ短調。とにかく激しい。といっても叩きつけるような強音の激しさでなく、何かにとりつかれて没入している感じ。静かなところでは透き通るような柔らかい弱音で、どこか影のある半透明の絹の音。安易な言い方だけど、アーティストな感じ満々なんだよね。ショーマンシップでさは全く無くて、乾坤一擲ステージに命かけてるって感が響いて堪らない。こういう演奏に弱いんだよね、自分は。