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いかさま師 柳原慧 著

2007-07-28 | 心に残る本
おだやかでない表題だが、宝島社文庫の本のタイトルだ。
本の表紙のこの女性の目線。思わずひるんでしまいますね。
元の絵はこれです。



ジョルジュ・ド・ラ・トゥール Georges de La Tourの「いかさま師(ダイヤのAを持った)」。
ルーブル美術館所蔵。
後ろ手で持っているトランプがダイヤのエース、同じタイトルでスペードのエースがある。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールは、作品数も少ないし、真贋論争が尽きない画家です。

それらを踏まえて、この本を読むと、なかなか面白いところに目を付けたと感心する。

ラ・トゥールの絵に出会った明治の文学者、鷲沢絵林。彼は秘かに、5枚のラ・トゥールの絵を日本に持ち込む。後に画家となった彼の息子絖は、天才的な技量を持ちながらも、不遇のうちに自殺してしまう。その後の鷲沢邸には、あるべきはずのラ・トゥールの絵がない。時価数十億とも言われるラ・トゥールの絵は、どこに消えてしまったのか。
絖に愛された母が、鷲沢家の絵の相続人に指名されたことから、主人公の高林紗貴は錯綜した人間関係に足を踏み入れることになる。絖は紗貴の父ではない。
誰が敵で、誰が味方か?
紗貴は真実を追い求めて行く。
本の解説を読むと、鷲沢絵林のモデルは小泉八雲、絖は息子の画家で自殺した小泉清らしいとのこと。ますます興味津々です。
もちろん小説ですからフィクションです。

絵の主役は「ろうそくの下のイエスキリストと聖ヨハネ」
小説同様にインターネットで検索したが見つかるはずもないか...。(笑)



これは「大工の聖ヨセフ」という作品。
右がキリストですね。ろうそくの火の白、キリストの顔の白。
素晴らしい白です。
「ろうそくの下のイエスキリストと聖ヨハネ」
も多分、こんな雰囲気の絵なんでしょうね。
カラヴァッジョに似た作風なんですね。

ゴッホのひまわりの話も出てきます。


これは15本のひまわり。損保ジャパン東郷青児美術館で見ました。


小説のストーリー展開と並行して、美術関係のお話も一杯で楽しめます。

「女は誇りや衿恃を捨ててはならないものよ」それが母の生き方だったのだ..

たくましい女性たちが活躍する本です。
そして5つの作品はどこへ。これは予想通りの決着でした。
そこしかない。というやつですね。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールも小泉清の絵も見たくなりますね。
小泉清は今、静岡県立美術館「NHK日曜美術館30年展」に出品されているようですが...遠いな。京都に巡回してたのに残念。
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