トシの読書日記

読書備忘録

観念としてのパシヴァとレシヴァ

2009-06-26 17:04:12 | ま行の作家
村上春樹「1Q84」BOOK1 BOOK2読了


5月の末に発売されてから、4日後くらいにアマゾンに注文して、その時は1週間くらいで発送可能とのメールを受け取ったんですが、その後いつ発送できるか未定とのメールが来て、なんだかなぁと思っていたら、ある日、たまたま寄った近所の書店で平積みになっているのを発見し、即購入した次第です。その書店にはその時、各8冊くらい積んであったんですが、僕が1冊づつ確保して、そのあとほかの本を見ている小一時間の間に全てなくなっていたという、とんでもなく売れてる本です。


相変わらずの「春樹ワールド」であります。ただ、「海辺のカフカ」とか「アフター・ダーク」よりも難解さが軽減されてる感じで、かなり読みやすかったですねぇ。ハルキフリークにはそれが多分物足りなかったんじゃないでしょうか。


近未来小説というものはよく見かけますが、「近過去小説」という設定、さすがです。時代設定は1984年なんですが、その時の流行とか、社会現象なんかはほとんど触れてないというのも、著者らしい周到さです。


しかし、どうなんでしょうかねぇ…僕はこの作品が最高傑作とはどうしても思えないんです。カルト宗教とか、ヤマギシのようなコミューンとか、ちょっとモチーフが世俗にまみれている印象で、「カフカ」とか「世界の終わり」みたいなとてもこの世の話とは思えないような小説になってないというところが不満なんです。


しかし、最高ではないにしても読了後は、しばし茫然としてしまいました。ほかの小説家とは比べるべくもないというか、本作家は他の作家とフィールドが全く違うんですね。同等に比較できないんです。


細部のことを言いますと、主人公である、二人の男女、天吾と青豆。これがまたなかなか魅力的なキャラクターなんです。特に青豆!このきっぱりとした生き方の潔さはどうでしょう。読んでて気持ちよかったです。天吾は天吾で、一見ゆるーい感じなんですが、それでいて芯はしっかりしている。父親を療養所に訪ねるシーンは圧巻でした。


いつもの村上作品と同じように、この長編もかなりの余韻を残して終わります。続編が絶対出るとか出ないとか、巷ではかなり喧しい論議がなされているようですが、僕としては、これで終わりでいいのでは?という意見に与するものです。しかし、「ねじまき鳥クロニクル」の例もあるように、最初2巻で終わるはずが、も一つってこともあるんで、まぁなんとも言えないですがね。

BOOK3が出たらどうするかって?そりゃぁもちろん買って読みますよ(笑)

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