ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん…表参道 『シカダ』の、環地中海料理

2019年01月18日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
南青山に仕事場が移って以来、毎日通勤途中にステキな店の前をいくつも通過する。どこも敷居が高そうでなかなか「青山デビュー」に至れなかったが、先日その一つで親しい方々との会が催され、これ幸いと訪問した。表参道駅そばの「シカダ」は環地中海料理が看板で、表参道のリゾート空間を標榜。コロニアル様式の建物はシックで落ち着いた内装と、市街にありながら欧風の異国テイストが新鮮である。

自家製クラフトビールで乾杯したら、南欧に西アジア、北アフリカと、地域を越えた多国籍料理のスタートだ。生ハムはスペインの定番ハモン・セラーノにイタリアのプロシュート、さらにパルマ産の最高級種の「幻の生ハム」クラテッロ・ディ・ジベッロの、ヨーロッパを代表する三種が用意されている。口に入れると瞬時にとろける魅惑さで、これをオリーブオイルの効いたパンにのせ、ひよこ豆のディップ 「ハムス 」をトッピングすれば、中東レバノン風のオードブルにも変身。南欧の食肉加工とアラブの豆食文化、地中海がとりもつ「出合いもの」といったところか。

ムサカはギリシアやエジプトの家庭料理で、ジャガイモのマッシュとペシャメルソースにひき肉を重ねた、ラザニア風の料理である。表面を包むようなナスは艶のある皮がパリッ、中がしっとりで、これにまとわるスパイシービーフのミートソースが、重層な食べごたえを作り出す。サラダはケール・コールラビ・クルミにハニーソースが爽やかで、舌がすっきりとリセット。カニがたっぷり詰まったモロッコ風スパイシークラブケーキと続くと、メインの自家製ポルケッタの登場だ。チャーシューのような見た目にローストトマトとルッコラが添えられ、鮮やかな色合いが食欲をそそる。

ポルケッタはイタリア・ローマやベネチア地方の名物で、骨を抜いた豚肉を塩漬けにして、詰め物をした上でハーブやスパイスで味付け、焼き上げた料理だ。チャーシューのようなシンプルな見た目だが、手が込んでいるだけに味わいが実に複雑。ローズマリーの青い香りに誘われてざっくりとかぶりつけば、ジューシーな肉汁がほとばしり、コショウとニンニクの香ばしさがグイグイとあおってくる。ポルケッタはイタリアではお祝い料理でもあり、なんと一頭を丸焼きにして作ることもあるのだとか。

締めご飯がわりのファルファッレは、イタリアのパスタの一種で、蝶のような見栄えがなんとも華々しい。大ぶりのシイタケのようなポルタベラ、アワビ茸がシャッキリ芳しく、マッシュルームクリームソースも相まって、キノコ好きにはたまらない。デザートにクレームブリュレをいただいたら、地中海を囲む味覚を満喫した宴も締めくくりとなった。各国の食材や食文化が垣間見え、舌にも頭にも楽しいひと時。これで知った店にもなれたことで、次は手軽にランチにて、皿の上の世界旅行を楽しみに来ようか。