ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ホテルイルクレド岐阜@岐阜

2017年09月18日 | 宿&銭湯・立ち寄り湯
岐阜での泊まりはイルクレド岐阜。駅の真ん前、ダブルのゆったりベッドながら、なんと楽天からで3700円。自腹で泊まるには実に嬉しい。

近隣の喫茶でのモーニング、サラダも卵トーストも手作りで、さすが名古屋文化圏のクォリティだ。

ローカル魚でとれたてごはん…岐阜・川原町 『川原町泉屋』の、天然鮎の渋うるかと鮎ラーメン

2017年09月18日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
長良川鵜飼ミュージアムから再び長良川畔に出ると、岸に人影がちらほら見える。鵜飼船の出漁準備が始まっているようで、篝火用の材を載せたり、鵜と結ぶ手縄を調整したりと、船上での動きが慌ただしい。堤防のすぐ向こう、「鵜飼の里」にある鵜匠宅からの往来も頻繁となり、職住近接は羨ましいが日々の操業のための作業は大変そうだ。対岸を遠望すると、鵜飼観覧船の屋形船もスタンバイを始めており、こちらも乗船に向けて準備をしなければならない。長良橋を再び渡り、たもとの観覧船受付に足を向けると、今日の出航は19時半からとまだ2時間ほどある。

そこで界隈の川原町を散策して、観覧船が出るまでの時間をつぶすことに。あたりは織田信長の頃から市が設けられ、古くは岐阜の商業と長良川を用いた流通の拠点だった地区だ。通りに沿って格子と土蔵の商家が建ち並ぶたたずまいは、同じ岐阜の飛騨高山・上三之町を彷彿とさせる。軒には地場の工芸品である、岐阜提灯が下がっており、描かれた絵柄が鵜飼なのはさすが。そして通りの奥寄りまでたどり着いたところで、町屋から漂ってくる鮎の香りに、思わず足が止まった。ちょうど日没で一杯始める頃合いでもあり、観覧船の出漁までここ「川原町泉屋」にて、鵜より先に鮎に舌鼓といこう。

品書きを開くと、塩焼きや天ぷらなど料理によっては「天然物」との添え書きがされ、記載がないものと比べて値段がかなり違う。能書きによれば、天然鮎は長良川をはじめ和良川、飛騨川水系の川にて、友釣りで釣られたものを厳選して仕入れている、とあった。味の良さはもちろん、甘い果物香がすると評価の高い岐阜県産の鮎だけに、高いけれど思い切って味わっておこう。まずは天然落ち鮎の内臓を塩漬けして熟成させた「うるか」をアテに、岐阜の地酒「達磨政宗」熟成三年古酒を合わす。うるかは大きめの盃ほどの器で出され、箸先でつまんで舌にのせた途端、ジンジンとくる苦味が強烈だ。

天然鮎のうるかは部位ごとに3種あり、味わったのははらわただけを漬けた「渋うるか」。お姉さんによると、卵の「真子うるか」、精巣の「白子うるか」に比べ、苦味が強いそうである。たしかに、内臓らしいこなれた香りが舌の奥に響き、鼻に抜けた後もまとわるのだが、クセも臭みもなく膨らみがあり、実に素直な後味がする。合わせた「古酒」が大正解で、数年寝かせたブランデーのような豊かな甘みが、うるかを正面で受けとめてバッチリ対峙する。箸先に軽く当てて舐め、舌先で転がしのばし、古酒をグッ。天然物の雑味ない苦味と、古酒の強いボディが、口中で譲らずループとなりせめぎ合う。

なので主菜はもちろん天然鮎の塩焼き、といきたいが、品書きには多彩な鮎料理が連なるのも気になる。定番の鮎雑炊になれずしのほか、何と鮎カレーに鮎ピザなんてのも。素材そのままでも素晴らしい天然鮎に、あえて手を加えた料理を揃えているところに、かえって自信がうかがえる。そこで選んだのは「炭火焼・天然鮎らーめん」。澄んだスープに中細麺、具には天日干しした開きの炭火焼きとほぐし身だけがのった、シンプルさが実に食欲をそそる。まずは鮎からいくと身はしっとり、中骨は香ばしく、皮はバリッと、滋味と野趣と芳醇さが折り重なって押し寄せる。部位ごとに個性があるのが新発見で、まさに鮎の味覚の三重奏といった奥行き。塩焼きの丸かじりでは分からない各々のインパクトに、つまむごとに舌が震えてしまう。

そしてさらにすごいのがスープで、ひとすすりすると鮎の旨さすべてが溶け込んだ純度の高さに、刮目せずにはいられない。開きとほぐし身から出る厚みのあるダシに加え、天然鮎の魚醤、さらに香味油に鮎脂も加えており風味を演出。鮎ゆえんの食材と調味料を総動員することで、見事な統一感が作られているのだ。麺との相性もバツグンで、スープのうまさがしっかりからんでくる、太さと長さのバランスが心地よい。麺をズズッとたぐっては、レンゲでスープをグッといき、ハアッ、と感嘆のため息。食べ進めるのが至福であり、減るのが名残惜しくもある、魅惑の一杯である。

天然鮎の跳ねる長良川の豊かさを表したかのような、丼の中身を心底堪能。店を後に川原町をぶらぶらと引き返すものの、高価な天然鮎料理を楽しんだおかげで、懐がちょっと心もとない。なので観光船はまあいいか、と、乗り場ではなく長良川のほとりへ。篝火を焚いた船が上流から操業しながら下る様子から、6艘が川幅いっぱいに広がるフィナーレの「総がらみ」までを、河岸に腰掛けて観覧した。鵜たちが嘴に鮎をくわえるのを見るたびに、自分もさきほどの味の余韻が舌によみがえるよう。鵜匠と鵜の兄弟のような関係までは行けずとも、天然鮎の味の良さは鵜と分かり合えたような? 岐阜のローカル魚紀行である。

川原町泉屋の鮎ラーメン@岐阜

2017年09月18日 | 旅で出会った食メモ
とあるラーメン発見漫画で、鮎の煮干しを使った究極のラーメン「淡口ラーメン」が取り上げられていた。岐阜某所のこのラーメンこそ、「清流房」のラーメンに違いない。

久々に、物を食べて痺れんばかりに感激した。京都「旬菜あだち」のしめ鯖サンド以来の、わが最大級の食表現「言葉にならない旨さ」を使わせてもらう。只々感涙、五体投地、万物礼賛。

ローカル魚でとれたてごはん…岐阜 『長良川うかいミュージアム』の、跳あゆ

2017年09月18日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
長良橋の上から川上方面を望むと、屹立した金華山の山頂に、織田信長公の居城である岐阜城が仰ぎ見られた。直下を流れる長良川は、いわば城下の川。それゆえか、信長は長良川で行われる鵜飼を保護し、鮎を進物や宴席で振舞ったのはもちろん、夜漁の鑑賞を武将や高官との接待に用いたとの記録もある。今では岐阜の観光には欠かせない鵜飼観覧船を、戦国期にすでに外交向けのアイテムに取り入れていたとは、先見性のある信長らしい施策といえよう。このように、1300年の歴史がある長良川の鵜飼は伝統漁業であるとともに、将軍家や皇室ら権力者に注目されていた歴史がある。

長良橋を渡り対岸の沿いの土手を行くと、沿道には長良川温泉の旅館街が広がっている。どのホテルも、長良川に面して客室の窓が設けられ、老舗旅館には上層階に望楼のような部屋も。河岸の温泉宿の部屋は、まさに鵜飼見物の特等席だろう。またこのあたりは「鵜飼の里」とも称されているように、河岸に木造の鵜飼船が繋留されているほか、付近には鵜を操る「鵜匠」の家も点在。彼らは「鳥屋籠」という円筒の竹カゴで鵜を飼っているのだが、飼う、というよりも生活を共にする「兄弟のような存在」とまで言う鵜匠もいるそうだ。

せっかくなので、ここで兄弟揃っての出漁風景を眺めたかったが、まだ漁の時間には早いようで、鵜飼船のまわりには人も鳥も気配がない。そんな中で突然、バタバタとした羽音と「グーグー!」との鳴き声が、付近から響いてきた。「長良川うかいミュージアム」の展示コーナーが、発信元のようである。足を向けると、檻の中でアヒルよりふたまわりほど大柄の水鳥が、プールでバチャバチャ気持ちよさそうに水浴びしていた。鵜飼に用いる種はウミウで、人になつくので扱いやすいそうである。説明には成鳥は黒褐色とあったが、しっとり深緑の羽がとても美しい。岩の上で羽を大きく広げる姿は堂々としており、伝統漁法の担い手らしい風格がある。

そんな鵜クンに誘われたのもあり、ミュージアムでしばし勉強の時間といきたい。展示室に設けられたシアターでは、模型船の背景に操業の映像を流し、鵜飼が体感できる仕組みだ。船上には、篝火を焚き付けながら鵜を5〜6羽操る鵜匠を中心に、鵜匠に合わせ舵をとる総責任者の「艫乗り」、補佐で鵜匠の弟子の「中乗り」による、三人のフォーメーションが組まれている。映像はまず、夕方の出漁後に上流へ上り、「回し場」という河原で待機。ここで篝火を焚き手縄を鵜につなぐなど、漁の準備を整えるのだ。特に手縄の先端の「首結」は、魚が喉元で止まるようにするなど、鵜との繊細なやりとりの生命線だ。

ぎふ長良川鵜飼には、現在6名の鵜匠が従事しており、くじびきで出発順を決めたらいざ、出漁だ。前半は「狩り下り」といって、順に漁を進めながら長良橋のあたりまで下る。その後に川をやや上り、6艘が川幅いっぱいに並んで操業する「総がらみ」で、クライマックスを迎える。ところでこの漁法、食べた鮎を戻させるとは鵜がかわいそう、と思う人もいるのでは。実は鵜は、飲んだ獲物をのどにいったん貯められる特性があり、危険時には吐き出して体を軽くして逃げる習性がある。鵜飼はそれを利用した漁で、決して鵜匠が「兄弟」に無理を強いてはいないのだ。

さらに、鵜飼で漁獲した鮎が古くから珍重されるのも、この生態に所以がある。鵜は鮎を嘴で一撃で気絶させ、向きを変えて頭から飲み込む。これだとうろこが喉にひっかからないため、身が傷むことがない。さらに喉で圧をかけて素早く絶命させるので、脂が悪くならず鮮度も保たれる。まさに鵜による活け締めで、品質の面でも理にかなった魚法だろう。なので鵜飼でとれた鮎は、頭の直下についた嘴の跡が、識別用のブランドマークなのだとか。加えてぎふ長良川鵜飼の鵜匠は「宮内庁式部職」に任命されており、現在も年に8回「御料鵜飼」で皇室へ届ける鮎を捕獲している。長良川鵜飼の鮎は、宮内庁御用達レベルのクオリティといえる。

展示エリアを出たところは売店で、甘露煮など鮎の加工品に混じり「登り鮎」「焼き鮎」「鮎めぐり」など、鮎をモチーフにした市街の銘菓も多数並ぶ。その中から「跳(おどり)あゆ」を一尾? 買い、長良川沿いに出ておやつにいただいた。袋から出すとかわいい顔つきで、急流におどる長良川の精悍な鮎に比べると、ちと穏やかな面構えのようにも見える。カステラ生地の中は求肥と餡が半々で、白い求肥が肝のような甘さか。川のせせらぎを聞きつつ、鵜に倣って頭からいくと、兄弟にはならずとも操業時の鵜の気持ちが、ちょっとは分かり合えたような。