ジャガイモはしっかりつぶし、マヨネーズ多め、具はキュウリとハムだけでキャベツにニンジンなどはなし。自身が理想とするポテトサラダ像は、母親の味がベースになっているようだ。好物かつ、おふくろの味は、好みのハードルが高く設定されるのか、意外に市販品でピッタリくるものに出会わない。
そんな話を自宅でもしたのだろう、昨晩食卓にあがったのは、まさにドンピシャ。家内が私の話から再現したそうで、粘りがあるがさほど甘くないキタアカリに、多めのマヨネーズの酸味が効き、キュウリのスライスがシャッキリ、ハムの塩っ気が絶妙のアクセントになっている。
厳密にはあの味の完全再現ではなく、粒が残り目のジャガイモが少しホクホク、ハムはパストラミでペッパーがピリリとくる。このほうがビールに合うようで、今の自分にはよりうれしい味だ。
考えてみれば、おふくろの味は子供へ、妻の味は夫へ向けてと、目指す対象も基となる愛情の形も異なる。カレーやハンバーグの付け合わせから酒の肴へと、ちょっと味と形を変えた好物は、移り変わってゆく自身の「家庭の味」の象徴のようにも思えた。