ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん112…銀座  『レストランあずま』の、豚肉のジュージュー焼きなど

2008年01月13日 | ◆町で見つけたオモシロごはん


 

 今年の冬休みは、仕事納めから大晦日までがあっという間、年が明けてからが何だか長かった気がする。お正月に続いて土日があったためだけれど、おかげで仕事始めの日もいまひとつ、お休み気分が抜け切らない。
 昼飯を食べてからエンジンをかけて今年の仕事をスタートしよう、と気合を入れたところで、携帯にメールが入ってきた。家族が自分の仕事場がある銀座界隈に買い物でやってくるそうで、まだ学校が冬休み中の子供たちも一緒とのこと。
 せっかくだから昼ごはんをごちそうしよう、と再び家族と過ごす冬休みモードに逆戻り。8丁目の博品館にやってくるので、そのあたりでいい店がないか、考えをめぐらせてみる。家族で気兼ねなく入れて、予算内で収まって、でも銀座らしい雰囲気のある店で、などいい店選びにやっきになるのは、銀座のグルメ本を作った担当としてのプライドか、はたまた父親の職場近くということで権威誇示のためか?

 子連れでも楽しめる飲食店として、浮かぶのは洋食屋だろう。いろいろと候補はあるのだけれど、銀座の洋食屋といえば店の紹介記事に「老舗」「こだわり」と称するところが多く、オムライスやハンバーグ、スパゲティといったお子様御用達メニューも、店によっては結構いい値段がする。
 博品館に近い洋食屋といえば、以前手がけた某著名料理評論家が著者のグルメ本で紹介した、オムライスが自慢のカフェが新橋の駅前にある。割と高価な店を主に紹介しているこの本の中では、手ごろな値段だが、それでもオムライスが1400円ほど。この分だと、冬休み明けで財布の中身がさびしい身としては、少々ヘビーな家族サービスとなってしまう。
 あれこれ迷っているうちに博品館に到着し、皆と合流してとりあえず和光方面へと向かう。おいしい洋食屋ねえ、と考えていて、ハタと思いついた。そうだ、「おいしい洋食屋」があったじゃないか! 

 で、やってきたのが銀座通りから交詢社通りへと折れ、さらに細い西五番街へ入ったところ。路地裏にある小ぢんまりした洋食屋である。店頭のガラスケースには、オムライス、ハンバーグ、シチューにステーキといった定番洋食のサンプルが並び、店の上には赤い日除けに白い文字で『レストランあずま』の店名。それに添えて文字通り、「おいしい洋食の店」とも書かれている。
 扉を軽く押して店内へ入ったとたん、扉がするりと閉まっていく。吊るした砂袋の重みで扉が閉まる、いまどき珍しいローテク自動ドアだ。さすがは銀座で40年の歴史をもつ老舗洋食屋、と半ば感心、半ば驚きつつ、レトロムードの店内に数客並んだテーブル席へ。昔の人に合わせてあるのか少々狭めなのを、空いているのをいいことに、店のお姉さんが2つつなげて使わせてくれた。子供連れ、しかも買い物帰りで大荷物なのでありがたい。

 


赤い日よけが印象的な店頭。老舗らしく内装はシック

 

 時間はすでに16時近く、自分はかなり遅めの昼ご飯、ほかの皆は早めの夕食といった時間で、一同かなり空腹の様子。さっそくメニューを開くと、牛ヒレ和風ステーキ、自家製ハンバーグ、ドライカレーなど、目移りするほど種類が豊富だ。この店、銀座のど真ん中という恵まれた立地ながら、ランチメニューはかなりリーズナブルなことでも知られ、ほとんどのメニューが1000円前後というからうれしい。
 安心して、皆に食べたいものを好きにどうぞ、と選んでもらうと、家内と娘は人気メニューのオムライス。食欲旺盛な息子は何にするのか見ていると、なんと一番高いジャンボハンバーグにいってしまった。自分のお目当ての豚肉ジュージュー焼きは、たっぷりのキャベツにたっぷりの豚肉を鉄板で炒めただけ、というシンプルな料理で、メニューにある「老舗の味・名物。おいしさがジュージュー音を立ててやってきます」のコピーが実に食欲をそそる。この料理、店の名物ながらもランチの底値メニューで、高めのジャンボハンバーグを予算的に多少カバーできそうだ(笑)。

 先に運ばれてきたオムライスは、付けあわせを選べる仕組みで、それぞれカニクリームコロッケとエビフライをトッピングされてきた。卵はふわふわ、トロトロに仕上がっていて、中はオレンジのチキンライスなのが、正統派のオムライスといった感じ。卵好きの娘は、これまた好物のカニクリームコロッケも頂きながら、ご満悦の様子である。
 ジャンボハンバーグは、手のひらを思いっきり広げたぐらいのハンバーグの上に目玉焼きものっており、さらにスパゲティナポリタンも添えられている見るからにボリュームメニュー。ハンバーグは300グラム以上というから、普通のの2つぶん近い大きさである。先に目玉焼きを平らげ、ハンバーグに挑みかかっている横から、ひと切れ試食してみると、大きさの割にはつなぎが少なく、しっかり挽肉でできていて本格的。渋めの味のデミソースがちょっと大人向け、銀座の味といったところか。

 そして自分の席にはまず紙ナプキンが届けられ、続いて「ジュワーッ」という音とともに鉄板に大盛りの肉が運ばれてきた。「鉄板が熱いです、あと熱い肉汁がとびますので気をつけてください」と店の人の指示に従い、先ほどの紙ナプキンを敷いた上に鉄板を置いてもらい、鉄板の上が沈静化するまでナプキンを少々たくし上げて待つ。ソースを上からかけてみたら、さらにジャーッと賑やかに。
 トッピングの生卵を混ぜ合わせてから、キャベツと豚肉をまとめてガバッとひと箸とり、まずはひと口。豚肉はこま切れで脂が多めで、熱々のため肉汁と脂がジュッと染みてくる。皿のライスといっしょにキャベツ、豚肉とジャンジャン進めると、底抜けの空腹にはうれしい食べ応えである。焼きキャベツといっしょに頂くので結構さっぱり、おろしポン酢風のソースもあっさり感をより演出している。どこまでいってもひたすら、豚肉にキャベツだが、飯がガンガン進む一品である。

 どのメニューも皆食べきれるかちょっと心配なぐらいの量だったけれど、オムライスのふたりも野菜サラダも含めてほぼ完食。巨大ハンバーグも結構な勢いで小さくなっており、本当にみんな空腹だったようだ。例のローテク自動ドアを再びくぐって店を出ると、あたりはもうすっかり真っ暗になっている。
 街路樹のネオンがきらびやかな並木通りを抜けて、皆を有楽町駅まで送り届けたら、自分は仕事場へと引き返す。やや延長となった冬休みの家族サービスを、これにて終了。老舗のたっぷり名物洋食のおかげで結局、自身も早めの夕食もかねて満腹となったようだ。このあたりで遅まきながら、ようやく仕事始めの日の仕事モードに切り替え、といこうか。(2008年1月7日食記)