ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

助走か、飲んだくれのオヤジか

2016年03月09日 | 文学

   年度末が近付いて、誰が異動するのしないのと、職場はそんな噂が飛び交っています。
 どうせほどなく分かるし、どんな嫌な部署に異動になっても、また、どんな嫌なやつが自分の部署に着任しても、ただ淡々と仕事をこなすしかないのに。
 時間の無駄です。 

  こんなことを繰り返してとうとう24年も過ぎてしまいました。
 就職してしばらくは、プロの小説家を目指してせっせと小説を書いていましたっけ。

 しかし専業作家で生きていけるのはそれこそ何万分の一という確率でしょう。
 これはどうにもならんと、いつの頃からか、終業後は飲んだくれるだけのやさぐれオヤジに堕してしまいました。

 それは精神の堕落には違いないのでしょうが、堕ちるということ、変に心地よくもあります。

 世間的にみれば、安定した公的機関に勤めて、子供は出来ませんでしたが結婚もして、マンションも買ってと、順風満帆に見えるでしょうね。
 でも精神的には、未だにモラトリアム気分を引きずって、自分が何者でもないように感じています。
 それはおそらく一生続くでしょう。

 筒井康隆の小説に、「大いなる助走」というのがありました。
 直木賞(作中では直本賞でしたか)受賞を逃した若手作家が、選考委員の大先生たちを殺害してまわるというエキセントリックな小説です。
 「文学賞殺人事件」というタイトルで映画化もされています。

 その中で、決してプロになれないまま、同人誌などで書き続けている人々の営為を、「大いなる助走」という言葉で揶揄したもので、小説は面白かったのですが、助走を続けていた私には、酷なタイトルでした。

 でも今は、助走すらほとんどせず、酒に溺れる毎日です。
 ただし、心は楽になりました。
 諦めるということほど、人を楽にさせる行為は無いようです。
 これから老人になれば、あらゆることを諦めていくのでしょうね。

 でもきっと、それこそが普通の人の人生なのだろうと思います。

大いなる助走 (文春文庫 (181‐3))
筒井 康隆
文藝春秋




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佐藤浩市,中島はるみ,蟹江敬三,泉じゅん
パイオニアLDC

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