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ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

九相詩絵巻

2010年12月06日 | 美術

 九相詩絵巻という絵をご存知でしょうか。
 絶世の美女の生前の絵から、死んだ直後の絵、それからだんだんと腐敗してついには土に還るまでを描いた九枚の絵です。
 もともと仏教の修行僧が、女色は空しく、また肉体ははかないことを実感し、煩悩を捨てて修行に励むために描かれた絵巻だと言われています。
 下に九枚の絵を示します。
 これを見れば、どんな美女でも結局は朽ち果て、土に還って行くことを思い知らされ、肉体にとらわれることは空しいと知るでしょう。
  

                         1.生前相

                                       
                                 2、新死相

               
                                 

                3、肪脹相

               
                                  
                4、血塗相

              
                                    5、肪乱相

               
                                   6、青瘀相

                
                                   7、噉食相

                 
                                        8、骨連相 

                  
                                         9、古墳相

                   
 
 まことにグロテスクな絵で、正視に堪えないものではあります。
 現代の日本では亡くなるときれいな体のまま焼いてしまいますから気付きませんが、戦国時代の合戦後とか、あるいは旧日本軍が米英と死闘を繰り広げた南方の島々などでは、こういう状態の遺体が無数に転がっていたわけです。
 そしてそれは、今現在も各地で行われている地域紛争や内乱、戦争などで見られる光景に違いありません。

 それを気持ち悪いと思うことは人間自然の情ですが、これが人間すべての最終的な姿なのだという冷厳な事実は、変えようもありません。
 現代日本で死体に日常的に接するのは法医学者と葬儀屋くらいのものでしょう。
 それならせめて、私たちはかつての修行僧のごとく、上の絵を見て、人間というものの本質そして生き死にについて観想してみたい、と思うのです。
  

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村上隆

2010年11月26日 | 美術

  ニューヨークの感謝祭のパレードに、村上隆作の巨大風船が華を添えた、というニュースに触れました。
 少し前、ベルサイユ宮殿で個展を開き、フランスで大ブーイングが起きましたが、客の入りは上々だったようです。  
  インパクトがありますからねぇ。 
  等身大の巨乳美少女フィギアだったり、浮世絵をモチーフにした絵画だったり。
 今日本でもっとも注目されている美術家でしょうね。 
  なんでも東京藝術大学日本画科出身者では初めて博士号をとった理論家でもあるようです。
 ご本人はマティスのような天才にはなれないけど、ウォーホールピカソくらいにはなってる、というような強気の発言をしています。 

  その自信家ぶりがまた素敵です。 

  謙虚な芸術家なんて、黒い白馬みたいな言語矛盾にさえ感じます。 

 いわゆるヲタクの人たちからはかなり嫌われているらしいですねぇ。 
  まず、ヲタクの物だった美少女フィギアをパクって、しかもそれが高値で売買されている上に、現代美術家のほうがヲタクより偉そうだから、とあるサイトで解説されていました。

 大体新しいことを始める人はどんな世界でも非難されるものですから、関心をもってもらえればそれだけでありがたいことでしょう。 

 おそらくこの作家の作品は、写楽の大首絵のように、悪趣味ながら強いインパクトを持った芸術として、後世に残るのではないでしょうか。 




「かいかい」です。 


    
「Miss ko2」
です。
 
 
                                                                    

目を見開けど実景は見えず。 ただ、己、心、凝視するばかり也」です。

 

芸術起業論
村上 隆
幻冬舎
Takashi Murakami:Prints
村上 隆
有限会社カイカイキキ



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銀閣

2010年10月10日 | 美術

 昨夜NHKで銀閣(慈照寺)の特集番組を放送していました。
 最新の調査で、銀閣の二層は銀色に近い白い成分が貼られていたらしいことが判明したそうです。

 子どもの頃、金閣の向こうを張って、銀箔を塗る予定だったが、予算不足で塗れなかった、と習いましたが、それは誤りであったようです。
 修学旅行で銀閣を訪れた時は、がっかりしましたね。
 きらびやかな金閣に比べて、まるで山中の小さなみすぼらしいお堂のようでした。なんで国宝なんだろうと、疑問に思ったことを思い出します。

 番組では、月が現れてから天空高くのぼり、沈むまでを、様々な角度から一晩じっくり見られるように工夫が凝らされいたことが、CGを使って平易に説明されていました。
 銀閣の向かいに渡り廊下でつながったお堂があり、ほろ酔い加減の足利義政が、月の運行に従って月を追うように二層から一層に降り、さらに別棟に渡って月と白く映える銀閣のコラボレーションを楽しんだのではないか、という想像は、とても楽しいものです。
 
 一方、足利義政は応仁の乱にも目をそむけ、餓死者が大量にでても頓着せずに月や花に浮かれていた、無能の将軍というイメージが強くあります。

 くやしくぞ 過ぎしうき世を 今日ぞ思ふ 心くまなき月をながめて

 足利義政の和歌です。
 くやしくぞ、とはよく言ったものですね。和歌としては反則とも言うべき歌いだしをあえて採ったことが、将軍としての情けない思いを強く感じさせますね。

 西洋に目を向けると、バヴァリアの狂王、ルートヴィッヒを思い出します。
 政治から逃避し、人工の湖に張りぼてのような人工の月を浮かべ、美少年たちを侍らせて悪趣味ともいえる芸術に酔った王様です。
 同性愛者だったため、跡取りを残さず、変死しました。
 多分重臣による暗殺だったのではないかと思います。
 この王様を描いたヴィスコンティ監督の「ルートヴィッヒ」は、彼の人生を重厚に描いた一大叙事詩です。
 美青年だった王様が、どんどん肥えていくのが、美食家の王族らしく、リアルでした。
 「狂王ルートヴィッヒ」も感動的な評伝でした。

 足利義政にしろ、ルートヴィッヒにしろ、権力を持つ者が厭世的な芸術趣味に走ると、民衆には辛いですね。
 しかし私は、有能な権力者よりも、無能ではあるが異能でもある芸術趣味の権力者にシンパシーを感じてしまいます。

足利義政と銀閣寺 (中公文庫)
Donald Keene,角地 幸男
中央公論新社


ルートヴィヒ 復元完全版 デジタル・ニューマスター [DVD]
ヘルムート・バーガー,ロミー・シュナイダー,トレヴァー・ハワード,シルバーナ・マンガーノ,ヘルムート・グリーム
紀伊國屋書店
狂王ルートヴィヒ―夢の王国の黄昏 (中公文庫BIBLIO)
Jean Des Cars,三保 元
中央公論新社

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上村松園の美人画

2010年10月08日 | 美術

  現在、東京国立近代美術館で、上村松園展が開催中です。
 これを是非見に行きたいと思っていましたが、人気の高い画家だけに土日に行ったら人の頭を見に行くようなものだと危惧し、今日休暇をとって、朝一番に出かけました。
 しかし、作戦は失敗。
 年配のご婦人を中心に、券売所は二重三重の列がとぐろをまいていました。
 なんとか入館しましたが、まさに見えるのは白髪頭や禿げ頭ばかり。
 平日でこんなに混んでいる美術展は初めてです。
 それでもじりじりと前に行き、いくつかの見たかった絵は見ることができました。
 その他の絵は、残念ながら素通りせざるをえませんでした。
 上村松園の絵はほとんどが美人画ですが、男が描くとどこか艶っぽく、性的な香りがするのに対して、女性が描くと、清らかな美しさが強調されます。
 若い美人、母と子、恋に狂った女、舞い踊る女、蚊帳をつる女、どれもどこか清らかです。
 女性に人気が高いのも故なしとしません。
 

 その後、行く予定ではなかったのですが、消化不良気味だったので、工芸館にも立ち寄りました。
 茶事をめぐって展です。
 こちらは近世から現代の茶道具などが並んでいて、渋い展覧会でした。
 本館とは正反対でがらがら。
 ゆっくり見られました。


 その後北の丸公園を抜けて靖国神社側に出て、神保町の古書店街などを冷やかして帰宅の途につきました。
 けっこう陽射しが強く、暑かったですね。
 それにしても、上村松園の人気には驚きました。

上村松園 (新潮日本美術文庫)
日本アートセンター
新潮社

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退廃

2010年09月06日 | 美術

 土曜日に芸大美術館に行き、シャガールの絵に感銘を受けたことは、すでにブログに書きました。
 今では何の違和感もない写実から遠く離れたシャガール等の絵画ですが、一時期、ドイツで退廃芸術として迫害されていたことがあります。
 ナチは優れた北方民族の芸術は、健康的で分かりやすくあらねばならないと考え、抽象的な芸術を病的退廃として退けたのです。 

 皮肉なのは退廃芸術論を最初に唱えたのが、ユダヤ人の医者だったことです。
 ブダペスト生まれの内科医、マックス・ノルダウは、近代芸術が規格を外れていったのは、急速な近代化による環境の変化のため、多くの芸術家が脳、もしくは眼、あるいは精神の病気に罹ったためだと説きました。そのために精神病患者に絵を描かせ、近代絵画との類似を指摘する念の入れようです。
 この説は19世紀末、日本を含む多くの国々でかなり受け入れられたようです。
 印象派からダダイズム、シュールレアリスムに至る一連の近代芸術が、多くの伝統的芸術愛好家から蛇蝎のように嫌われていたのでしょうね。
 
 ナチはこの説を援用し、いわゆる近代芸術家は、スラブ人やモンゴロイド等の劣等人種か、そうでなければ精神病だと断じ、ナチが認めない書物を大々的に火にくべる焚書運動を起こしました。
 ただ、一点物である絵画については、外貨獲得のため、外国に売ったとのことです。
 面白いのは、近代芸術の質の低さを国民に知らしめるため、と銘打ってドイツ全土を巡回した「退廃芸術展」が、300万人の入場者を呼び、現在に至るもこれを超える展覧会は開かれていないそうです。
 多くはナチの宣伝に乗って汚らわしいものを観た、と思ったのでしょうが、その芸術性の高さに気付いてうっとりと観た客も少なくなかったのではないでしょうか。ドイツ人の審美眼が特別偏っているはずもありませんから。

 敗戦後、ナチに重用された御用芸術家たちは、単なる古典の模倣しかできない者が多く、地位を失っていきました。
 一方ナチに迫害された芸術家は、あるいは殺され、あるいは亡命し、ドイツは軍事力で敗れたのみならず、文化・芸術でも自滅したのです。

 アメリカの保守派裁判官が、星条旗を焼いた青年に対し、苦虫をかみつぶしたような顔で無罪を言い渡し、「星条旗を燃やすことは間違いだ。ただし、米国人が星条旗を燃やす自由を持っていることは命をかけて守る」、と言ったというのは、餓鬼大将にしか見えない米国が、じつは大和魂にも負けない強い根性を持っていることを明らかにしてくれます。

 戦中の大日本帝国は思想犯には苛烈でしたが、芸術分野に対しては、ドイツほどの迫害は行いませんでしたね。
 
 今、わが国で行われるのは、政府による弾圧ではなくて、マスコミやインターネットによる非難、いじめでしょうか。
 米国のマイケル・ジャクソン、英国のダイアナ元皇太子妃の死。日本では皇太子妃の適応障害。
 どれも高度に発達した情報社会と、それに追いつかない人間の下品な野次馬根性が原因のように思えてなりません。

ナチの絵画略奪作戦
Hector Feliciano,宇京 頼三
平凡社

 

ヒトラーと退廃芸術―「退廃芸術展」と「大ドイツ芸術展」
関 楠生
河出書房新社



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シャガール

2010年09月05日 | 美術

  
  昨日は東京芸術大学美術館に足を運びました。
 「シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」展です。
 シャガールは色彩の魔術師と呼ばれる天才画家ですが、その色彩感覚の鋭敏さは、驚嘆すべきものです。他のロシア・アヴァンギャルドの画家の作品も数多く展示されていましたが、遠目から見ても、シャガールの作品はそこだけスポットライトが当たったかのように、輝いて見えます。
 この時期の絵は、ピカソにしてもダリにしても、どこか不思議な構図を持っています。シャガールもご多分にもれません。
 しかしなぜか、シャガールの作品は明るく、楽天的な印象を与えます。
 こればっかりは持って生まれた資質としか言いようがないものです。
 このところ日本美術の展覧会にばかり足を運んでいましたので、久しぶりに見る現代西洋アートは、私に鮮烈な印象を与えました。

 じつをいうと、30歳を過ぎるまで、私は日本美術よりも現代西洋アートを好んでいたのです。

シャガール (ニュー・ベーシック・アート・シリーズ) (ニュー・ベーシック・アート・シリーズ)
インゴ・F・ヴァルター/ライナー・メッツガー
タッシェン
シャガール―色彩の詩人 (「知の再発見」双書)
高階 秀爾,Daniel Marchesseau,田辺 希久子,村上 尚子
創元社

 
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江戸絵画

2010年08月29日 | 美術



 広尾の山種美術館へ行ってきました。
 
 この美術館は近現代の日本画を専門としていますが、江戸絵画も多く所蔵しているとのことで、今回は「江戸絵画への視線」と銘打った展覧会です。
 江戸絵画といっても浮世絵はなく、狩野派や琳派、文人画などが所せましと並んでいました。
 わけても酒井抱一の絵は上品なうえに私を引き込む力があり、気に入りました。
 もし一点もらえるとしたら、「月梅図」でしょう。


左から:
酒井抱一「飛雪白鷺図」「菊小禽図」「秋草図」「月梅図

 暑いなかけっこうな人出で、江戸絵画の人気の高さがうかがえました。

もっと知りたい酒井抱一―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
玉蟲 敏子
東京美術
酒井抱一 (新潮日本美術文庫)
玉蟲 敏子
新潮社




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日本美術のヴィーナス

2010年08月14日 | 美術



 日比谷の出光美術館に出かけました。
 日比谷公園の地下駐車場に車を停めましたが、ガラガラでした。お盆なんですねぇ。
 
 展覧会は、「日本美術のヴィーナス」です。
 江戸から終戦直後までの、浮世絵を始めとする美人画を一堂に並べたものです。
 最初の絵が普賢菩薩だったのには驚きました。
 中性的に表現されてはいるものの、男じゃないですか。

 しかしその後は、遊女やら少女やらの美人画ばかりで、飽きさせません。
 
 私がとくに気に入ったのが、葛飾北斎の月下歩行美人図です。



 図録の写真を撮ったのですが、フラッシュで焼けてしまいました。
 
 はかなげな美人が物思わしげに月の下をゆるゆると歩く姿は、なんとも幻想的で、私はしばし、この絵の前に立ち尽くしました。

 この図録を枕の下に入れたら、満月の晩、現れて、私と夜の散歩を共にしてくれないでしょうか。
 あるいは夢に現れて、月夜の逢瀬を演じてはくれないでしょうか。

 画狂老人の筆の冴えは、はるか時を越え、私に恋心を抱かせたのです。
 


現代の茶

2010年08月07日 | 美術



 虎ノ門の智美術館に行ってきました。
 展覧会は、「現代の茶」です。
 現代の陶工の手による名品の数々が展示されていました。
 茶道具を美術館で観るのは歯がゆいですね。
 どうしても、手にとって観たくなります。

 茶道具は洗練された機能美が魅力だと思いますが、今回の作品は、奇をてらった、前衛的な道具が多かったように思います。
 これで一服いただきたいものだ、というような道具は残念ながらありませんでした。
 帰りは暑い中、赤坂のあたりをぶらつきました。
 今日は立秋ですが、そんな気配はありません。
 セミの声が、騒々しく、暑さを倍増させたのです。

http://www.musee-tomo.or.jp/→智美術館のHPです。


能の雅 狂言の妙

2010年07月24日 | 美術

 
 
 今日は猛暑をおして六本木、サントリー美術館に出かけました。
 「能の雅 狂言の妙」展です。

 おそらくこれほど大規模な能・狂言に関する展覧会は、史上初ではないでしょうか。
 衣装、面、小道具、大道具、それに絵巻まで、展示物は多岐に渡っており、私はしばし陶酔しました。
 国立能楽堂が集めたコレクションということで、私はそう広くもない美術館を二時間近くもさまよったのでした。

 能楽は演劇や舞踊としてだけではなく、それに関わるあらゆるものが美的なのです。
 
 その洗練された美は、私のわずかな知識からすると、世界に例を見ないものです。
 
 このような幻想的な総合芸術を生みだした我がくにの祖先たちの優れた感性には、驚嘆せざるをえません。
 その芸術性は、古典でありながら前衛的で、先進的です。

 三島由紀夫は「近代能楽集」を著しましたね。
 能は今なお、進化し続けているのです。

近代能楽集 (新潮文庫)
三島 由紀夫
新潮社




MASKS 仮の面

2010年07月19日 | 美術



 猛暑のなか、千葉市美術館に行ってきました。
 「MASKS 仮の面」展です。NHKの日曜美術館で紹介されたせいか、盛況でした。
 日本、アフリカの仮面を中心に、アジアやオセアニアの仮面がこれでもか、というほど展示されていました。
 多くは、呪術的な意味合いの濃い、厄除けや、あるいは精霊を模ったものです。日本でいえば、天狗や鬼の面がこれにあたります。
 そしてそれらは、不気味でありながら、どこかユーモラスです。
 人々の暮らしがそうであるように。

 呪術的な面に比べて、能面は、それが般若であっても爺であっても、また醜女であっても、はるかに洗練され、美的です。
 とくに今回 の展示のように並べてあると、一目瞭然です。
 人々の祈りが凝縮した呪術的な面も魅力がありますが、私はどうしても、スタイリッシュな能面に魅かれます。

仮面―そのパワーとメッセージ
佐原 真,勝又 洋子
里文出版


能面入門
金春 信高
平凡社




有田焼

2010年07月10日 | 美術

 わざわざ新宿まで足をのばし、有田焼市に行ってきました。
 青木龍山・清高親子の作品などを見て、目の保養になりました。青木龍 山の天目の茶碗で、とても気に入ったものがあったのですが、26万5千円という値段をみて、諦めました。
 その代り、美術館と違って手に取れるのをよいことに、さんざん指紋をつけてやりました。
 茶碗の他にも、小皿やぐい飲み、湯のみなど、心惹かれるものばかりでした。
 お金持ちになりたいものです。

 帰り、近辺をふらふらしていたら、2丁目のゲイバーが並ぶ一角に出てしまいました。ゲイバーは一見そういう店だとわかりませんが、ゲイ用のアダルトショップが何軒も営業していて、目をひきました。昼間からむさくるしい男たちがたむろしていましたので。

 世間から差別されがちな少数者だからこそ、こうやって一つところに集まるのだな、と思いました。
 私も精神障害者の自助グループに参加したり、リワークに通ったりしましたから、自分と近い境遇の人を求めてしまう気持ちはよくわかります。

 世間の偏見に負けず、堂々と生きてほしいものです。


おもてなし

2010年03月07日 | 美術

 昨日は雨のなか、六本木は東京ミッドタウン内にあるサントリー美術館に足を運びました。
 展覧会は、「おもてなしの美ー宴のしつらいー」です。
 様々な意匠をこらした酒器や茶器、お重などと、宴の様子を描いた絵巻物などが展示され、飽きさせません。なかには「放屁合戦」と題する鎌倉期の漫画などもあり、ユーモアも感じさせました。
 私が一番気に入ったのは、漆に金箔で彩色がほどこされたお重です。じつに美しい、職人技でした。毎日リワークで日替わり350円の仕出し弁当を食っていますが、たまには姉やに美しいお重を持ってこさせたいものです。


根津美術館

2010年01月24日 | 美術

 昨日、南青山の、新装なった根津美術館に行って来ました。
 もともと初代東武鉄道社長の根津嘉一郎の個人コレクションだった骨董品を並べた美術館だけあって、なんとも脈絡のないものでした。東洋の古美術、という共通点はありますが、絵画から考古遺物まで、様々です。
 むしろ、美術館そのものの建築と南青山とは思えない広大な庭が、印象的です。
 それにしても、青山というのは妙な町ですね。自由が丘なんかもそうですが、洋服や鞄などを商う、小さな店ばかりが軒を連ね、人間が生きるに必要なスーパーや食料品店などがまるで見当たらないのです。この地に住む人々はどこで普段の買い物をし、いかに生活をおくっているのか、不思議に思います。
 東京の都心に近く、また、泥臭い繁華街、渋谷もすぐ近くです。
 私が想像するに、東京生まれよりも、立身出世を夢見て上京した田舎者がこの町を発展させたように思います。
 なぜなら、この町には含羞というものがまるで感じられません。これ見よがしな、しゃらかしぶりです。
 散歩するには面白いですが、住まうには少々気取りすぎです。
 私は、高校・大学と、青山近くの学校に通いましたが、当時も、今も、好きになれません。なんだか人間臭さが感じられないのです。

 今日は、何年ぶりかでビーフステーキを食いました。胃が弱いのか、牛肉はもたれるので好まないのですが、今日の肉は良い肉だったのか、簡単に消化できました。たまに食うと、なかなか旨いものですね。


春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)

2009年11月10日 | 美術

 一昨日、NHKの「日曜美術館」で、「春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)」が紹介されていました。
 700年前の作で、驚くほど色鮮やかです。春日大社に保存され、後に皇室に献じられた、とのことで、保存状態が素晴らしいのです。
 公家から庶民にいたるまで、当時の生活がリアルに描かれています。
 また、ストーリー仕立てになっており、かつてはこの絵巻を見るためには予め神事をおこなわなければならなかったとか。たいそう大げさですね。
 来週から東京国立博物館の「皇室の至宝」展で見られるとか。
 でも混むでしょうねえ。