ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

マラソンついでの演劇鑑賞!堤泰之「トリスケリオンの靴音」

2018-04-11 15:03:39 | 劇評

 年に2回、お楽しみの、マラソンついでの芝居見物だ。今回は、堤泰之の作・演出作品を見た。赤坂のレッドシアター、小さなホテルの地下にある劇場。食べ物屋街の真ん中におっとあったぜ!って感じ。180席の小劇場だが、客席はゆったりしていて、下北沢とはちと違う。そう、お洒落だよ。スズナリとこっち迷ったんだが、あの窮屈な座席でじっと我慢!がなんか鬱陶しくて、赤坂に鞍替え。それに、堤泰之だもの、安心して見られる。

 上手いよなぁ!期待裏切らない。さすが堤泰之だね。きちっとつぼ押さえてるもの。とげとげしい対立に始まった二人の関係、間をつなぐ部外者の青年。登場人物たちのわだかまりは、じわりじわりと溶けて行き、最後は誤解もほどけて涙のスクラム。おっと、見ているこっちもお涙ほろり。気持ちよく騙してくれました。

 結局はみないい人なんだよなぁ。それが安心の秘訣。堤芝居の魔法の箱!

亡くなった著名な彫金家、その後を守る弟子、そこに彫金家の遺児を名乗るあばずれ娘が乗り込んできて、一触即発。その行き違いを掛け直していく手管が憎い。

 見捨てられたと思い込んでねじ曲がった心で亡父・著名彫金家、の家屋を訪れた娘が、父親の本心を知って立ち直る。師匠を慕い人生すべてをかけて尽くした弟子の彫金師。師匠の妻への秘めたる純愛を自ら認めることで再起を誓う。そして、幼くして別れた父との和解を勝ち取る若者。物語を巧みに紡いで、納得の結末へと導く構成力、見習うとすれば、ここだな。 

 泣きじゃくる娘。「おい。男たち。女が一人泣いてんだよ。肩抱くとかなんかあんだろ!」と啖呵を切る娘を二人の男がぎこちなく肩を組む上のシーン、良かったなぁ。見終わって、優しく人が好きになれる舞台だ。

 でもなぁ、圧倒されるところがないてのが、玉に瑕。冒険にも縁なし、観劇後には、美味しい夕食が待っている、そんな穏やかさ、そこが物足りなかった。やはり赤坂芝居だものな。

 でも、それは無いものねだりってもんなんだろう。時間を返せ!とか、入場料泥棒と不平たらたらにならなかっただけ大したものだ。ただなぁ、こういう芝居って予定調和って言うか、世間の常識にべったりもたれかかっいるところが、気に食わないんだよ。捨てた父を憎みつつも慕ってて、人知れず墓参りとか、母親の遺品を共に埋葬するとか。これ自然の情でしょ、って、有無を言わさず決め付けられるとねぇ。

 こういう、テレビ的お涙ほろりとは一線画して物語作りたいって思うんだが、これがとてつもなく難しいことなんだよな。

コメント
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