スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

棋王戦&ありがとう

2019-02-02 19:21:58 | 将棋
 北國新聞会館で指された第44期棋王戦五番勝負第一局。対戦成績は渡辺明棋王が9勝,広瀬章人竜王が10勝。
 振駒で広瀬竜王が先手となり相掛り。後手の渡辺棋王が先に飛車先を交換して浮き飛車。後から交換した先手が高飛車。その後,先手が手損の代償に一歩を掠め取る展開に。中盤までいい勝負だったように僕には思えました。
                                      
 先手が歩を打って桂馬の交換を催促した場面。後手は☖4六歩☗5六銀としてから☖7七桂成☗同角と進め☖6四桂と攻めていきました。
 先手は☗4四桂と反撃。後手は☖4三銀直と受けに回りました。
 先手は☗5五銀☖同銀☗同角と銀を交換。後手はここも☖6三金と受けました。
 そこで先手は☗3二桂成と金を取りました。これには☖同銀の一手。
                                      
 ここで先手は☗4四歩と突きましたが,後の展開からみるとこの手は甘く,☖5四歩から角を取った後手が攻め合って勝てる局面に。したがって先手としては第2図では☗4三銀と打っていくほかなかったのでしょう。これは先手が勝ちとはいえないまでも,いい勝負だったような気がします。
 渡辺棋王が先勝。第二局は10日です。

 父は僕に対しても貴重な経験をさせてくれました。
 母は始まりの日に癌であることを強く匂わされ,その後の精密検査で完治の見込みがない癌であることを医師から告げられました。父の場合はそうではなく,僕たちは知っていましたが,父には知らされていませんでした。ただ,肝機能の著しい低下によって抗癌剤を使用した治療を施せなくなってしまったので,その段階で余命を父に知らせる必要が生じました。その告知を僕がしたのです。
 そのこと自体は面白いことではありませんでしたが,父に対して余命を告げるという経験は,だれにとってもできるというものではなく,貴重な経験であることは間違いありません。それが心理学でいうところの「父殺し」に該当するかどうか僕には分かりませんが,象徴的な意味でいえば文字通りの「父殺し」であるといえるのではないでしょうか。つまり父は最後に僕に対してそういう機会を与えてくれた上で,象徴的な意味でいえばそれから間もなくこの世を去ったのです。そのことの重みがいかほどのものであったかは,僕は今でもよく分かってはいないのですが,父に対して告知をした病室での出来事,とくに僕がすべてを話した後に父が言った「ありがとう」ということばは今でも胸に強く焼き付いています。僕にしても「ありがとう」と言われるようなことをしたことはほかにもありますから,そのことばをいわれた経験もあります。ただ,どの「ありがとう」が最も心に残っているかと問われれば,迷わずにこのときの父の「ありがとう」であると答えます。そしてそれはこれからも変わらないだろうと思います。
 もう一点いうと,父は母と同じ大腸癌で先に旅立ちました。父の最期は僕も看取っています。このときの経験がありましたから,僕は母の死のときもその状況を冷静に見守ることができたのだろうと思うのです。父の血圧が低下したということで病院から連絡が入り,病床の父の呼吸はその間隔が徐々に長くなり,会わせて一つひとつの呼吸が荒くなっていき,最後はそれが途絶えました。母もほぼ同じだったのですが,父が先に人の死に方を教えてくれたので,僕は対処の仕方を知っていたのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする