マルチと言うと何を想像されるでしょうか?
「大リーグのイチローがマルチヒットを打った」と複数安打をした場合にも使います。
「マルチ商法にひっかかったらしい」と詐欺まがいのセールスで失敗した、なんて事でも使います。
ある時は歌手、ある時はバラエティ、ある時は俳優、なんて人も「マルチタレント」と言われますね。
ワインの世界でも、このマルチって言葉は色々と使います。
例えば複数のヴィンテージをブレンドする場合「マルチヴィンテージ」といいます。
シャンパンやポルトでは当たり前ですし、昔(私の若い頃)のローヌ地方のワインでは珍しくなかったですね。
シェリーもそうでしょうし、コニャックなどもそうです。
複数の葡萄品種をブレンドすることは「マルチヴァラエタル」といいます。
ボルドーや南ローヌは有名ですし、オーストラリアではラベルに複数の品種を明記することが多い国です。
産地のブレンドの場合は「マルチリージョナル」
これは多くの産地の多くの生産者のベーシックラインが当てはまります。
自分の地所の内、畑名を名乗るワインの基準に満たないものの複数の畑のものを混ぜたりしますし、シャンパーニュの多くも色々な農家の色々なタイプの畑のものをブレンド。ボルドーもそうです。
オーストアリアはココでも目立ちます。標高の高い所の葡萄と、低い所の葡萄。
砂利地の葡萄と粘土質の土地の葡萄。
昔からワイン通と言われる人の間では「特定の畑の特定のヴィンテージの特定の葡萄品種だけで造ったワイン」=「単一」と呼ばれるワインを珍重する傾向がありますが、果たして「マルチ」はいけないのでしょうか?
いえいえ、そんなことはありません。
ホームラン王がいてもチームワークが悪くては優勝できませんし、イチローが200本安打を打ち続けてもマリナーズは優勝していません。
読売巨人軍が年棒が高い選手を集めた時は結局良い成果を上げていないのです。
例えばシャンパンのクリュッグはマルチヴィンテージでマルチヴァラエタルで当然マルチリージョナル。ジャックセロスは葡萄こそシャルドネを標榜しますがマルチヴィンテージでマルチリージョナルが基本でした(最近、違うタイプを売り始めてますが)
ポルトはマルチリジョナルが上位で単独畑は下位に位置します。
シャトーヌフ.デュパプは13種もの葡萄のブレンドが可能でボーカステルという造り手はまさに13種を巧みにブレンドして素晴らしいワインを造っています。
どうぞ皆様、「単一」という言葉に踊らされず「マルチ」にも目を向けてくださいね。
大方に於いてマルチの方がお安めで、しかも早めに良い飲み頃になります。
だって欠点を補い合ってこそのマルチです。
尖った性質の「単一」は時間もかかるし、「希少価値」で高くなるのです。
「マルチ」
ワインの世界ではいい言葉、と思います。