何年か前の事です。
同業のある若者が来て「樋口さん、お勧めってどう勧めればいいのでしょう?」「というか、店で出している商品は全部お勧め、のはずですよね?」と聞いてきました。
私は「お勧めはどんな時でもある」と答えました。
例えばそむりえ亭の従業員が「コレはお勧めです」とお客様に言います。
すると私は叱ります。
「お勧めってどういうこと?」と・・・・・・・
お勧めって言葉は単独では存在しません。
「今の季節しか楽しめない旬の〇〇ですから・・」
「硬い物がお苦手なら、△◇はムース状ですのでお勧めですよ」
「このお肉なら、スパイシーな?〇のワインがいいですね!!」
「今、ご注文いただいている他にもう一品と言うのなら食材や調理法がかぶらないコレなど如何でしょう?」
って、理由があるのです。
何の理由もなしのお勧めは「在庫処理」と思われても仕方ないのです。
季節、お客様の状況(時間の余裕や健康状態)、その時点で既に召し上がられている料理やワイン、人数、年齢、お客様のイベント(誕生日や記念日)の有無、等々・・・・・
お勧めを言えない、と言うのは職務放棄に近いのです。
フレンチやイタリアンの場合、表記が難しいことがあります。
じゃあ、日本料理や中華は簡単か?というとそうでもありません。
従業員はえてして「こんなの誰でもわかるだろう」と思いがちですが、判らないのが普通です。
なにかチョイスのヒントを投げかけるのはサービスマンの義務なんですよね。
それを考えるのが私の楽しみの一つです。