こちらは私が最も尊敬する画家。
17世紀スペインの宮廷画家ディエゴ・ベラスケスが、ローマを来訪した際に描いたローマ法王インノケンティウス10世の肖像です。
さて、モデルとなったご本人。
お気に召したのか召さなかったのか、こんな言葉を残しています。
「真実を穿ち過ぎている」
この絵に関しては中野京子氏が著書「怖い絵」の中で実に的確な表現をしています。
(以下引用)
豪華な金縁の椅子に深く腰かけた教皇は、高位聖職者であることを示す赤い帽子と赤い上着を身につけ、斜めに油断なくこちらを見据える。
人好きしないその顔。険しい眉。老齢を感じさせない肌の艶。男性的で重い鼻。かたく結んだ唇。まだ白くなっていない髭。
(中略)
眼には力がある。垂れた瞼を押し上げる右の三白眼。はっしと対象をとらえる左の黒眼。ふたつながら狡猾な光を放ち、「人間など、はなから信用などするものか」と語っている。
常に計算し、値踏みし、疑い、裁く眼だ。そして決して赦すことのない眼。
ベラスケスの肖像のすごいところは、顔をそっくりにという次元を超えて、その人の内面を丸裸にして描いていることでしょうか。
一見して知的遅れのある道化で、当時の宮廷には多かった人たちですが、ベラスケスはローマ法王も道化も同等な対象として、その内面を描いているのに驚かされます。
と、ここまでが先日の講演で申し上げたことですが、今回は趣向を変えてこの顔。
こちらは五輪エンブレムの審査委員会の代表・永井一正氏のインタビュー写真です。
うーん。
日本のグラフィックデザインを代表する世界的名士に、私ごときが言うのも何ですが、なんかベラスケスのインノケンティウス10世を思い出させますなあ。
ただ、永井氏は眼光は鋭くないし、疑り深い顔もしていません。
水木しげる先生が描く妖怪ぬらりひょんのように、なにか人を煙にまくような表情。
昔、この人・・・こんな顔をしてたっけかな?
もっと颯爽としてたような気がしたと思って検索しましたが、やっぱりありました。
やはりこの顔とは別人。 たまたまひどい顔を撮られただけかもしれないけど。
それにしても五輪エンブレム。最初のデザインはベルギーのものと別物で、修正したあと、ほかのデザインと似てしまったってどういうことよ?
永井氏は掛け値なく超一流のデザイナーです。
そんなこともわからないハズはなく、晩節を穢す弁解とともに、正直に顔に出てしまったということでしょうか。
てやんでえ、ナメたことしやがると承知しねえぞ!
五輪エンブレムをデザインした佐野氏に関しては、ネットで散々言い沙汰されてますので、ここでは語りませんが、あの人の顔も同様ですな。
私の師匠だったジーイー企画センターの伊藤友雄会長が20年前に言っていた言葉を思い出しました。
「いつの間にか、グラフィックデザインの世界も、政治家と同じような世界になっちゃったねえ」
大手広告会社などが絡んでないと、大きな仕事が取れないというのも何だと思いますねえ。先ほど「私ごときが」と申し上げましたが、スミマセン。
ほんとうに良い仕事を正直にしてるという意味では、そんなこと露ほどにも思って(以下略&笑)♪