漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

より大きな希望

2005年05月24日 | 読書録
美しい小説:10

 「より大きな希望」
 イルゼ・アイヒンガー著

 ナチスを描いた映画や小説、ルポタージュには、忘れ難いものが多い。
 収容所での生活を描いたルポタージュ「夜と霧」、隠れ家での記録「アンネの日記」、レジスタンスの記録「白バラは散らず」などは有名だ。
 映画では史実を元にした「シンドラーのリスト」などのほかに、退廃的な映像美で魅せた「愛の嵐」や「地獄に堕ちた勇者ども」などがある。
 小説では、余りに悲痛な「ソフィーの選択」などが忘れ難い。こうした極限で起きた出来事を題材にしたものからは、いろいろと学ぶことがある。

 ここで取り上げる「より大きな希望」は、イルゼ・アイヒンガー女史による作品である。
 妖精文庫の第三期に収められているこの作品は、「合いの子」という存在に光を当てて、「どちらでもない中途半端な存在」の魂の彷徨を描いている。主人公が「浮いてしまっている」存在であるように、物語も、どこからどこまでが現実なのか、明確ではないような描き方をされている。一時期、日本でアゴタ・クリストフの「悪童日記」という小説が話題になったが、この「より大きな希望」はその遥か源流であり、さらに美しく悲痛な作品だ。

湘南平のフィールドアスレチック

2005年05月24日 | 消え行くもの
 大磯の浜を見下ろす湘南平の山頂には、フィールドアスレチックがある。
 随分と年季の入ったアスレチックコースで、行くたびに少しづつ使えなくなっている。
 いずれ改築されるのか。それとも、ある日消えて行くのか。
 子供たちにとって、危険なリスクを持った(とされる)遊具は、次第に姿を消してゆきつつある。前回の回転ジャングルジムがそうだった。今回のフィールドアスレチックも、当然そうだ。

 僕が子供の頃、フィールドアスレチックがちょっとしたブームだった時期があった。
 僕はフィールドアスレチックが大好きで、コースに一日中いても飽きなかった。
 山の中にあった、巨大なアスレチックコースを、今でも時々思い出す。
 あれは、どこにあったのか。
 調べる気になればわかるのかもしれないが、いっそ謎のままでもいい。