美しい小説:10
「より大きな希望」
イルゼ・アイヒンガー著
ナチスを描いた映画や小説、ルポタージュには、忘れ難いものが多い。
収容所での生活を描いたルポタージュ「夜と霧」、隠れ家での記録「アンネの日記」、レジスタンスの記録「白バラは散らず」などは有名だ。
映画では史実を元にした「シンドラーのリスト」などのほかに、退廃的な映像美で魅せた「愛の嵐」や「地獄に堕ちた勇者ども」などがある。
小説では、余りに悲痛な「ソフィーの選択」などが忘れ難い。こうした極限で起きた出来事を題材にしたものからは、いろいろと学ぶことがある。
ここで取り上げる「より大きな希望」は、イルゼ・アイヒンガー女史による作品である。
妖精文庫の第三期に収められているこの作品は、「合いの子」という存在に光を当てて、「どちらでもない中途半端な存在」の魂の彷徨を描いている。主人公が「浮いてしまっている」存在であるように、物語も、どこからどこまでが現実なのか、明確ではないような描き方をされている。一時期、日本でアゴタ・クリストフの「悪童日記」という小説が話題になったが、この「より大きな希望」はその遥か源流であり、さらに美しく悲痛な作品だ。
「より大きな希望」
イルゼ・アイヒンガー著
ナチスを描いた映画や小説、ルポタージュには、忘れ難いものが多い。
収容所での生活を描いたルポタージュ「夜と霧」、隠れ家での記録「アンネの日記」、レジスタンスの記録「白バラは散らず」などは有名だ。
映画では史実を元にした「シンドラーのリスト」などのほかに、退廃的な映像美で魅せた「愛の嵐」や「地獄に堕ちた勇者ども」などがある。
小説では、余りに悲痛な「ソフィーの選択」などが忘れ難い。こうした極限で起きた出来事を題材にしたものからは、いろいろと学ぶことがある。
ここで取り上げる「より大きな希望」は、イルゼ・アイヒンガー女史による作品である。
妖精文庫の第三期に収められているこの作品は、「合いの子」という存在に光を当てて、「どちらでもない中途半端な存在」の魂の彷徨を描いている。主人公が「浮いてしまっている」存在であるように、物語も、どこからどこまでが現実なのか、明確ではないような描き方をされている。一時期、日本でアゴタ・クリストフの「悪童日記」という小説が話題になったが、この「より大きな希望」はその遥か源流であり、さらに美しく悲痛な作品だ。