漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

夏休み

2005年05月12日 | 漫画のはなし
印象的だった漫画の話:4

松本零士の漫画が好きでたまらなかった、小学校の高学年の頃。
氏の漫画ならなんでも読みたいと思っていたから、自然と青年向けの作品にも手が伸びた。
「マンガ奇想天外」を手にしたのも、だから自然な流れだった。

「マンガ奇想天外」は、ショッキングな雑誌だった。
僕がそれまで読んでいたマンガとは全く違う、過剰なほど個性的な作品が並んでいた。高野文子と出会ったのも、吾妻ひでおと再会したのも、鈴木翁二を意識したのも、すべてこの雑誌だった。どう理解してよいのか分らないマンガ群を前にして、いろいろと想像を働かせていたのが、懐かしい。

坂口尚氏の漫画を初めて読んだのも、この雑誌だった。
作品は、「祭の夜」だったと思う。
だが、実際に印象に残ったのは、次に読んだ「星降る夜」だった。特に、見開きのページが印象に残っている。なんて綺麗な草と星を描くのだろうと思った。
だが、坂口氏の作品の中で一番印象に残っている作品をひとつだけ挙げろと言われれば、僕は間違いなく、

「夏休み」
坂口尚著

を挙げる。
この短編が、坂口尚の最良の作品とは、言えないかもしれない。
だが、「マンガ奇想天外」の6号に掲載されたこの短編の、その美しい光と影が、僕にはずっと忘れられない。

故・坂口尚氏の公認ファンサイトを、ブックマークにリンクさせて頂きます。