さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

大イベントの「格」に及ばず 岩田翔吉、ゴンサレスに判定負け

2022-11-05 06:51:09 | 関東ボクシング



試合順でいえばセミファイナルだった試合、WBOライトフライ級タイトルマッチは、ジョナサン・ゴンサレスが岩田翔吉に判定勝ちを収めました。


序盤は岩田が右リードで出る。ゴンサレスの弱点と目されるボディにもヒットあり。






2回、ゴンサレス足使い、ワンツー。岩田コーナーに追い攻めるが、ミスブローの際にバッティング。しばし休憩。
3回にも岩田が出た際、ゴンサレスがバッティングを訴える。少し試合の流れが冷めた感。
しかし岩田出て、右フックの相打ちを繰り返し、右ボディにも深く打ち込む。ゴンサレスのヒットもしっかりあるが、押しているのは岩田の方。






4回、岩田攻めるもゴンサレスがまた頭当たったとアピール。
これは自分が空振りして当たって痛がっているように見え、岩田構わず打ってしまえ、と思ったところ。
続いてゴンサレス、岩田の右ボディをローブローだとアピールするがレフェリー認めず。岩田さらに右ボディのヒット。


序盤、悪くないスタートだと見えていました。このまま攻めて行ければ充分勝てそうな感じ。
ところがこの4回、ラスト30くらいからか、先ほどまでヒットを喫し、打ち返しもさほど、何かといえばみっともないアピールばかり、と見えたゴンサレスが、急に腰入れて左右のボディを打ち返して来る。

ん?と思ったが、この切り換えが奏功し始める。
5回、6回と徐々にゴンサレスが攻め込む。ガード上げて前進、左ダイレクトが速く、ボディブローも入る。
岩田は相手を追って捉える闘いから、相手の方から来る展開の変化に対応出来ていない。
打ち勝てず、パンチをもらいつつ、前に出られず下がらされ、また打たれている。






タイトルホルダーとしては攻撃力に不足あり、パンチもないという評を受けるゴンサレス相手に、いざ真っ向から渡り合うとなったらこんな感じでしかない、のか。
岩田に対して、正直かなりがっかりした時間帯でした。

ただし、追いかけて捉えようとする岩田に対し、取り返しのつかない劣勢になる前の時点で、闘い方を切り換えて前に出ると決めた、ゴンサレスの決断、切り換えのタイミングの早さにも感心させられました。
右のパンチで攻められ、ボディを叩かれて止められたあとで打っていっても遅い。その前に反転攻勢に出る。
完全に痛めつけられる前だからこそ、パンチの精度も高く、防御のセンサーも機能させつつ前に出られている。
勇敢で冷静、適切な判断でした。この辺はさすがというか、キャリアの差まざまざ、という感じがしました。






岩田8回から奮起、ボディ叩いて前に出る。しかしゴンサレス、また足使う流れに戻し、かわそうとする。
9回岩田さらにギアを上げ、ボディ攻撃でゴンサレスを追い回すが、ゴンサレスしのいで終盤に左フック一発。
続いて右フックも。いずれもクリーンヒット。ゴンサレスが「弱打者」だから助かった、と思うくらい「マトモ」でした。


残り3回、ゴンサレスにとっては「注文通り」の9分だったか。
足使って単発のヒット、外してやり過ごし、岩田のヒットは散発的に終わる。
終盤はゴンサレスにとり、これがやりたかったんだろうなあ、という展開に収まったまま、試合が終わりました。






判定は3-0。思ったより開いてた、というべきか。
会場で見ているともう少し競っているかも、と見えはしました。
序盤4つ、全部岩田に与え、9回も岩田に振り、それ以外ふたつが岩田に行くような採点をするジャッジがいないとも限らない...と思ったりもしました。
結局、それは「杞憂」に終わりましたが。



正直、勝者と敗者どうこう以前に、この日行われた他の3試合と比べると、試合としてのグレードが一段落ちるものだったなあ、と思いました。
ジョナサン・ゴンサレスは試合展開をスパッと変えられる巧さがあり、それには感心させられましたが、序盤のアピールは仕方ないにしても見苦しいのがあったし、何よりKOの可能性がまったく見えないパワーの欠如は、率直に言って魅力に欠けました。
戦績を見るとKOの数もそれなりにありますが、それはほぼ全て、キャリア序盤、前半に集中していて、相手のレベルが上がってからは、ほとんど倒せていない。
それもむべなるかな、と改めて見えた闘いぶりでした。


そして、その相手に二度、展開の切り替えをされて、終盤はほぼ、為す術なく失点を重ねてしまった岩田翔吉もまた、経験不足を露呈したと言えるでしょう。
小柄ながら懐深く、足も速いゴンサレスを右ボディで捉えにかかりましたが、パンチに欠ける相手を追って捉える、という構図だったはずが、逆に打ってくるという切り替えをされたら、打ち勝てなかった。
攻撃の精度も防御の「率」も劣った中盤を経て、終盤はまた足を使われ、カウンターを取られ...もちろん、圧倒されたわけではないにせよ、勝敗は明らかだった、と言わざるを得ませんでした。

少なくとも、この日のようなビッグイベントに出る選手としては、若干グレードが不足していた。
先のPXB同様、プロモーターが組んだカードと「会長」が組んだカードが混在する、という意味で通じる今回の大イベントでしたが、彼は明らかに「会長」の組んだカードに出た選手だった。
その差が試合自体、そして彼の闘いぶりにそのまま見えた。そういう評価が残った試合だった、と思います。


試合後、本人は判定に不満だったようですが、今時のボクサーにしては考えが古いのか、或いは本人としては余程手応えがあったものか。
ただ、もしこの試合の判定について,、省みることが何も無いと本当に思っているのだとしたら、それは如何なものかと思います。
この日見た試合のなかで、最も「残念」だった試合でしたが、試合後のこの報道は、それを上乗せするようなものに感じられました。



※写真提供は「ミラーレス機とタブレットと」管理人さんです。
いつもありがとうございます。



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6 コメント

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Unknown (アラフォーファン)
2022-11-05 08:14:45
うーむ、岩田くんは国内では一応指名試合クリア、堀川さんとの統一戦もクリアし、過程はまあ踏んでる、充実度も…と思ったら期待外れでした。
持っている能力だけならゴンザレスよりむしろ上。ただゴンザレスが前に出た、、だけなのに何止まってるんだ、と叫びたくなりました。
相手が前に出たからってあれなら勝てるはず、それができないあたり戦略面はまだ不備ありましたね。
さてゴンザレス。この試合も生き残りましたね。ただでもそれだけ。京口くんやケンシロウさんからは明らかに格落ち。4団体だから王者でいられる。それも何とか王者でいるだけ。
ケンシロウさんにはこんなの蹴散らして欲しいです
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Unknown (Neo)
2022-11-05 08:47:09
岩田はパンチ力に頼ったスタイルで、間合いに入ったら先に手を出せと解説の山中さんに言われていましたが、先を取ることを理解できていないように見えました.パンチの精度もあまり高くなく、相手が打ち合いを選択するとフィジカルは強そうに見えましたが前に出れなくなりましたね.
総じて経験不足に見えました.中終盤で解説陣の言う様に流れを変えることができた様に見えました.これから頑張ってほしいですね.ただ顔つきやエピソードから、あまり人の話を聞かないタイプなのかも知れませんね.
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Unknown (月庵)
2022-11-05 11:15:32
引き出しに乏しいファイターが陥りがちな典型的負けパターンに見えました。序盤は相手が慣れていないからヒットも重ねられるが、慣れてきて相手が戦い方変えたらそれに対応できず、ずるずると失点を重ねていく。ましてゴンサレスは田中恒成相手にも着実にポイントを加算していた技巧派ですからね。その印象が未だ強く残っていたから中盤以降は「まあそうなるよな」以外に思うところはなかったです。ESPNではジャメル・ヘリングが解説席に座っていたそうですが彼いわく「岩田はジャブが足りなさすぎる。単調に追い回すだけでパンチが届くわけがない。ジャブはどこに消えたのか?」と。しがらみが一切ないからこそ言える極めて率直で妥当な解説だな、とその発言を見て思いました。

メインの記事でも書きましたが、同階級王座戦が並列して行われたが故に、レベル・グレードの違いが明瞭に示されたのは否めないですね。岩田からしてみれば『発言権』を得るどころか世界という頂の果てしなき高みに手を伸ばす事すらかなわず、ゴンサレスからしてみればあの恐ろしい強さを持つ王者に『挑戦』しなければならない。階級違いますが下手したら田中より一発のパワーあるかも知れませんからね。その上押し引きの駆け引きも巧みでジャブですら強烈なパワーを秘めている。井上に『挑戦』するバトラーと同じくらい不利な立ち位置にいるのは確かですね。
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Unknown (モノクマ)
2022-11-05 14:12:27
個人的に岩田には、相当期待していただけに、この負け方はかなりショックでした
帝拳側も、岩田にはアマ実績や国内の試合から田中と同等程度の実力はあると踏んでいて、ベルトを取れる絶好の機会として組んだのかなと思ったのですが...
岩田のこの出来は初挑戦で精神的なものだったのか、それとも、この程度の選手なのか今後を見たいです

ゴンザレスは愚直な相手にポイントの取るのは相当うまいのでしょうね。田中やソトにもポイント勝負では上手をいってましたし、階級を落としたことで相手とのパワーの差も小さくなってより難敵になったのでしょう。とはいえ完全に弱点を露呈してますし、今回の試合でゴンザレスの強さより岩田の残念さの方に目が行った時点で格落ちなのは否めませんね
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Unknown (海の猫)
2022-11-05 16:07:08
試合内容についてではなく、また負けてから言うのもなんですが、岩田は「見方」が難しい選手と思ってました。
国内レベルでは間違いなくいい選手ですし、この階級期待のホープではあります。ただ「名門帝拳一押しのスター候補」と言われると?、単純に「もってるもの」が足りない、そこまでの選手に見えない、というのがありました。本田会長が本気で岩田に期待しているのかと考えると、おそらく違うのではないかと。
今回の「早い」挑戦も、本気でスターにしたい選手にするものではない、と思います。仮に勝てても、次はメインの勝者という流れですから、こっちは文字通り勝ち目がない。どのような「思惑」「事情」によるものかは分かりませんが。
ただ、試合を見て思ったのは、岩田にも十分勝機はあったのに、セコンドはどのような指示を出していたのかなと。後半は、この選手相手に想定された展開で、その際の対応を陣営はどう準備していたのかと。少なくともトレーナーは本気で岩田を勝たせようとしていたと思いますが、帝拳は戦略面ではあまり優秀ではないなといつも思います。
ゴンサレスについては、日本のジムがこの手の選手を「大したことない」と切り捨てていたら、日本人ボクサーは世界戦で五分の試合を落とし続ける、と思います。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2022-11-06 14:11:27
>アラフォーファンさん

同感です。もうちょっとやれるかなと思っていました。ただ試合後のコメントから、あれで勝っていると思って闘っていた、というなら、ある意味納得というか。そうだったのか、と思います。戦略という言い方をすれば、根本から間違っていたんですね。
中盤、ゴンサレスが出てきたところで、待ってましたと打っていき、打つ勝つかと期待したら、攻防ともに下回り、スローダウンしました。技量力量の問題かと思ったのですが、それだけではなかったのかもしれません。
ゴンサレス、まあ今時の常識からすれば...いや、昔でもちょっと不足ありすぎですね。まあ、タイトル持ってますから日本における「次」はあるのかもしれませんが。


>Neoさん

上記のとおり、もちろん不足もありますが、それがポイント計算というか、優劣の読み違いによる影響もあったのだとしたら、ますます苦い話ですね。良い薬にしてもらいたいものです。
ただ、中盤に打ち負けたのは、一旦引いても大丈夫、と思っていたのみならず、やはり精度の問題にも見えました。半々、なのか、或いはどちらかに重きがあるか。いずれにせよ、ちょっと期待外れではありました。
世界戦敗退といっても色々ありますが、この内容から残った世評からすると、だいぶ厳しいところからの巻き返しとなります。性格のことはわかりませんが、陣営ともども、苦い黒星をどう省みたか、それはこれからの闘いぶりで証されるのでしょう。


>月庵さん

上記したような要素を加えて考えても、総じて経験不足で、選択肢に乏しいところが出ていましたね。ジャブに関しては、右をジャブの意識で打てていなかったことが問題でしょうか。右といってもさわる程度でいい、という打ち方や、ストレートとして打ち込むもの、さらにその中間「ジャブ以上、ストレート未満」の右など、いろいろと使い分けが出来れば、サウスポーからすればそれだけでも相当、面倒な話のはずなんですが。
メインとセミ、同じ階級でその先に統一戦の話が出来ているものを並べるのは、試合内容の良い物が揃えば、なにもかも目出度し、となる話で、単純に今回、それを期待もしていたんですが、そうならなかったらこうなるのか...と、現実を見せられた思いです。ひとつ勉強になったというか。
ゴンサレスの次戦への立ち位置は、肩書きは対抗王者ですが、実際は田中恒成戦とあまり変わっていないですね。技巧はあるが、怖さのない上位挑戦者、というところで。


>モノクマさん

帝拳の見積もりは、若干意見が違いまして、勢いのあるうちに勝負させた方が良い、じっくり育てる「余裕」を見られる素材ではない、という部分があったかも、と思います。直近の数試合は確かに良かったですし、ゴンサレス相手なら接戦でも攻略は可能かな、と思いもしたんですが。
ゴンサレスは階級を下げて、体格の不利、その度合いが減ったことは確かでしょうね。例えば田中恒成相手に、今回のような中盤の攻めをしたら、逆に捉えられてあっという間、だったでしょうし。まあ実際の試合でもそれに近い負け方でしたが。


>海の猫さん

私は岩田の実力をもう少し高く見ていた方ですが、本田会長の(ただでさえ厳しい)査定は、仰る通りのものがあるかもしれません。今回の挑戦についても、上のコメントのとおりです。じっくり育てる路線を取ったところで限界がある、或いは「ボロ」が出かねない、という、きつい表現ですが、そういうところもあったでしょうね。今回勝っていたら、すぐに統一戦には進まなかったかもしれません。指名試合がどう、とかやって、時を稼いでいたんじゃないかな、と。
セコンドの指示含め、試合後の本人談のとおりだったのだとしたら、試合後、本田会長激怒、の一幕があったかもしれませんね。サパタ、中島第一戦の時代じゃあるまいし、どんな採点基準だと思っていたんだ、という。セコンドは軌道修正しようとした、と信じたいですが。でもそうしていても、実力的に無理だったのかもしれませんね。
ゴンサレスについては、そう言われればそうですね。見るべきところはある選手、ですね。
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