さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

転級初戦で王者クラスを退ける 中谷潤人、ロドリゲスに判定勝ち

2022-11-04 19:59:21 | 関東ボクシング



WBOフライ級王座を返上した、WBOスーパーフライ級1位中谷潤人と、3位フランシスコ・ロドリゲスの一戦は、中谷潤人が判定勝ち、でした。


小柄なロドリゲスが、長身サウスポーの中谷にどう対するのか、右リードから来るか、それとも...と思っていたら、サウスポーにスイッチしての右フックを当てて、攻めて出る。
意外というか、意表を突かれた感じ。そんな手があったか...と。
果たしてこれを、中谷がどう受け取っていたかは不明ですが、ロドリゲス、序盤から懐に入って左右フック、ボディにも連打。
2回は中谷にロープを背負わせて攻めるなど、やりたかったことをやれている、という意味では、好スタート。







中谷は逆に、思うに任せぬ、という風に見えました。
昨年の王者、井岡一翔への挑戦試合では、見方ひとつで勝っていたんではないかという試合で判定を落としましたが、そこを見て言えば、この日にチャンピオンとして中谷の挑戦を受けていても不思議ではなかったロドリゲスと、転級早々に闘う。
そう考えれば苦戦も無理からぬものだった。見終えて、そんな風に思う試合になるのかも、と思った立ち上がりでした。


しかし中谷、やはり非凡というか。
2回途中から、サウスポー同士なら、と離れて右フック、左ストレートを伸ばし、カウンターも狙って、ロドリゲスを食い止め、早々に立て直し。






4回、左右ストレート連打、ダックしたら低い軌道のストレートにアッパーと、棲み分けも整い始める。
その攻めがあった上で、時にロドリゲスが懐を取りに来ても、元々苦手でも何でもない接近戦で、腕を畳んでショートを返す。

5回、それでも果敢に来るロドリゲスを、右アッパーが再三捉える。続いて左アッパーも連発。ロドリゲス、鼻血か。顔が赤い。
後半は中谷が着実にリードしていく。7回、ロドリゲスはローブローで減点。
8回、中谷右アッパー、右フックと、前の手のパンチだけでも多彩。ロドリゲスを打ち据える。






しかしロドリゲス、堪えてボディ連打などで反撃。9、10回と、中谷と打ち合いを繰り広げる。
10回、中谷のワンツーでロドリゲス、足元が乱れ、後退するがまた手を返す。
中谷もさすがにフォームが乱れ、ストップに持ち込む、とはいかず。判定となりました。



メインのように、大会場が沸き返る、という試合ではありませんでしたが、普通に見て全然悪くない、転級初戦としては考え得る中で最大の試練とも言える試合で、クリアに差を付けて打ち勝った中谷潤人、やはりさすが、という印象でした。
序盤、2回途中まで、相手の出方に戸惑いもあったか、或いは若干、軽視していた部分もあった?せいか、悪い攻められ方をしましたが、終わって見ればパンチの精度や、心身の確かさをこの階級でも見せた、と言って良いでしょう。






ひとつ言えば、序盤は特に、そしてその後も、長身のわりに接近戦でも腕に覚えあり、という本人の自信が、場面によっては悪く出ているかなあ、と見えました。今後の課題かもしれません。
少々のファイター相手なら、長身の中谷相手に、当然それが良いと思って懐を取りに来る相手を「お迎え」して、ショートで打ち合ってそこでも勝つ、という試合運びも通るでしょうが、この日のロドリゲスや、他の上位陣の中で、世界上位の「専門職」たるファイタータイプ相手には、あくまで「次善の策」として打ち合いを選ぶ、ということにした方が良いように思います。



ということで、まずまず見終えて好印象の試合でした。
WBOによる1位ランク、そしてこの勝利により、WBO王座への指名挑戦権も獲得した(はず)の中谷潤人、来年は二階級制覇に乗り出すことになりましょう。

とはいえ、WBO王者井岡一翔は、大晦日にWBA王者フランコと統一戦があるはずで、これに勝てなかったら、日本人同士の新旧対決は実現しません。
ここがクリアされれば、これまでWBOの指名試合を何度もこなしてきた井岡だけに、今回も同様の運びとなる...と思って良いのでしょうね。
同じTBS系列で収まった?田中恒成と違い、放映権や興行権がどうとかいう話になる可能性は残るのでしょうが。


その辺を全部飛ばして、ファンの勝手を言えば、日本ボクシング界のビッグファイトを実現する舞台である、AmazonPrime配信興行においての試合実現を期待したいものです。
そして、そこに田中恒成の参戦などもあれば、さらに盛り上がるところでしょう。

色々と誼や柵もあることでしょうが、そういう垣根を取っ払って、怖れることなく、大きな舞台で強者同士が闘うことが、今回のような「勝利」に繋がった。
今回の「好例」を、今後もかなう限り再現してもらえたらなあ、と思います。




※写真提供は「ミラーレス機とタブレットと」管理人さんです。
いつもありがとうございます。



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5 コメント

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Unknown (モノクマ)
2022-11-04 22:41:47
中谷は、自分であえて接近戦を選んでいるのか、世界ランカーからするとジャブやボディに怖さがなく意外と懐に入りやすい選手なのかで、自分の中の評価が結構揺れています
仰る通り、前者なら引き出しが広くて良いことですが、後者だと中谷は接近戦でも強いとはいえ相手によっては攻略されてしまう選手なのかなと思ってしまいます
後、転級初戦でまだ階級に適応できていないといった見方もありますが、逆に体格からするとSフライでも減量苦でまだ本領を発揮できていない可能性もあるのかなあ。サイズの有利な階級だけの選手だとは思っていないので、頑張って欲しいです

ロドリゲスについては、この選手はSフライ級でどの程度の選手なのか、どう評価するべきか個人的にイマイチ分かってないです笑
ライトフライ、フライ級では実力のある選手には負けているものの当時は若かった。年齢とともに体が大きくなり、Sフライ級を主戦場としてからは連勝続きではあるものの、上位との試合は井岡のみで、その接戦のみでどこまで評価して良いのか
スイッチしながら距離を詰め、タフさを持って接近戦をするスタイルが、下の階級の時より強化され王者クラスであると中谷や井岡の今後に期待が持てるので嬉しいのですが
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Unknown (Neo)
2022-11-04 22:57:56
階級あげての初戦としてはリスキーな相手を選んだなーと思いましたが、スレスレの戦術とフィジカルで潰されかけたものの持ち前の非凡さで勝ち切りましたですね。
階級の差、つまり崩しや攻めが体格差により通用しなくなることと思っているのですが、思ったより早く表出した(無論相手が極めて特殊なスタイルかつシンプルに強いのですが)様に思います。
フィジカルの強化で対応できるのか、スタイルにマイナーチェンジが必要なのか、これからの中谷を見てみたいですね。
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Unknown (アラフォーファン)
2022-11-05 08:23:03
少なくとも転級初戦としては充分な相手、結果と言えますが、中谷くんへの期待値ゆえ結構厳しい意見ありますよね。私は色々試した部分あると思いますし、リスキーな相手にきちんと勝ったのは評価されていいと思います。
あの多彩多様さは上の階級でも武器ですし、サイズはもちろん破格。ただ接近戦は後の手段ですね。長い距離で相手痛めつける中谷くん見たいです。
さて、この試合で一位の資格は示しました。井岡さんはどうするか。見ものですが田中くんも中谷くんもWBOにこだわらず、ロマゴンやマルチネスを蹴散らしてくれるのもいいなと
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Unknown (月庵)
2022-11-05 09:50:04
結果としていろいろな意味で絶妙なマッチメイクでしたね。帝拳傘下ではあるが『門下』ではないという立ち位置だから、負けは考えにくいが簡単には勝てない骨っぽい相手と目される選手をぶつけられ、結果としてやや思うに任せぬ試合を強いられる。本当の意味でのテストマッチで、興行を盛り上げる試合だったとは言いがたくも意義ある試合だったとは言えると思います。まあ井岡と今回のロドリゲスは戦い方が全く違うので参考になるかどうかは微妙ですが。

中谷の『脅威度』については、これは前からわかっていた事ではありますが、中谷は一撃で相手の意識を刈り取る強烈なパンチを持っている訳ではないのですよね。相手の動きを止めてダメージを与え得る強打ではあっても。リーチの利を活かすのが基本で、近づいてきた相手はアッパーで『止める』のに留める。それが現状もっとも理想的な戦い方だと思いますが、本人は割と接近戦にも普通に付き合いますね。今回それで課題を見せた事からどう修正するかが見ものでしょう。まあ次は99%統一王者相手への挑戦になるだろうから、『今』の彼についてあれこれ議論が出るのも仕方ないのでしょうが……。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2022-11-06 13:41:34
>モノクマさん

今回も、これまでも「あえて」の方に近いのだろうと思っています。レパード玉熊と似た構図というか、相手からしたら懐に入りたい対象で、でも入ってみたらそこでも巧いし強いと。騙し、ですよね。
ただ転級初戦、相手の得意分野、ということで、今回は思うに任せぬところがあったのでしょう。闘い方のオプションとして、持っていて良いというか、得がたいものですが、だからと言ってジャブやストレート、足などによる距離の構築をおろそかにしてはいかん、という戒めにしてほしい試合でしたね。
ロドリゲスは、今回むしろ井岡戦より良かったかな、と思っています。世界戦じゃない試合でどんな仕上がりかな、と思っていたら、かなり良く見えました。115ポンドで世界王者クラス、と言い切れる選手ではないですが、井岡戦の内容もあり、上位陣、とは括れるでしょうね。色々考えると、中谷は今回、まずまずのスタートを切ったのではないか、と思う側です。


>Neoさん

けっこう強引に入ってきましたしね。中谷が安易に入れてしまった部分も感じましたが。すぐ立て直しましたが、やはり立ち上がりに作られた構図というのは、完全にひっくり返りはしませんでした。大きな力量差があれば違うんでしょうが、そういう相手ではなかったですね。
階級の差については、今後もっと大柄な相手が出てくることもありましょうね。ロドリゲスは馬力があるので、良い経験になる相手ではあったでしょうが。スタイル、というか微調整は必要でしょうね。一発強打者ではないのは元々なので、打つ数については今のままで良いでしょうが、打ち合う頻度の調整は、まず今回残った課題かと思います。


>アラフォーファンさん

会場でもそんな雰囲気は感じました。NEXTモンスター、という表現があったとおり、井上尚弥的な「ばーん」と倒す場面を期待する感じになってましたね。そんな選手でもないし、そんな相手でもないのに。
距離に関しては仰る通りです。基本、遠い位置関係を作って行く、それが優先事項ですね。
井岡戦に関してはWBOがあれこれ決めたと報じられてます。普通なら受けるんでしょう。普通じゃなかったらどうなるんや、と言われると困りますが。田中恒成はどうですかね。5位の選手との試合、楽なものでもないでしょうし、こちらはこちらで高いハードルをクリアしようとしているんですから...そりゃロマゴン戦とか、あったら素晴らしいですけどね。はてさて。


>月庵さん

相手選びに関しては、ランクが高いのと、でも中谷なら負けることはあるまい、という「自信」があってのことかと思います。実際勝ち負けどうという試合ではまったくなく、そういう風に闘えること自体、中谷は流石だと言えるでしょうね。井岡との類似性でいえば、ほぼゼロですが(笑)。同感です。
今回はストレートとアッパーの、距離の棲み分け設定に相手を縛り付ける作業を、序盤から失敗してしまっているので、立て直しは出来ても「その先」に進むほどには打ち込めなかったですね。世界レベルの試合では仕方ないことでしょうね。
接近戦はシンプルに自信があるのでしょうね。ロスのジムで、そういうスパーを散々重ねているらしいですし。
井岡に挑むとなれば、ロドリゲスとは真逆のアプローチで入ろうとする技巧派との対戦ですから、いろいろ考えねばならないでしょうね。今回の試合内容から、厳しい意見が出るのも仕方ない、のかもしれません。
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