さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

センス抜群のみならず、心身共に力強く 坂井優太、快勝デビュー

2024-06-26 06:32:43 | 関東ボクシング



昨日のLeminoは早い決着が多く、メインは判定だったものの、それでも21時前に終わるというコンパクト興行となりました。
しかし、内容的には濃密で、大橋ジム新人カルテットの試合はそれぞれに違った見どころがあり、セミの想像を絶する決着など、毎度の通りLeminoフェニックスバトルの充実を存分に見られました。


しかし、内容的にこの日のメインだったのは、大橋蓮、田中将吾、田中空という、全日本優勝者三人のあとに登場した、サウスポー坂井優太の試合でした。

アマチュア時代の試合ぶりなどは「せやねん」などで短い映像しか見たことがありませんでしたので、勝手に防御技術やセンスに秀でた技巧派タイプで、プロ転向して攻撃面でどの程度の積み上げが出来るか、それがまずは今後数試合での課題であろう...なんて、わかった風に思っていたこちらを嘲笑うかのように、開始と同時に鋭く強いワンツーで先制。

続いて、頭を前に倒して、その重みを乗せた左クロスをダイレクト。
韓国3位というキム・ジヨンが打ち返すが、コンビで返して、離れたら左アッパーも。
さらに打ってくるところ、小さいスウェイ、左カウンター。これは事前に想像していた感じに近いが、直後にワンツーで叩きに行く。
「技」がひとつ決まっても息を抜かない。プロアマ問わず、本当の一流の仕業。


試合始まってすぐ、矢継ぎ早に、色んな良さが次々と目に入ってきて、見ていて思わず心が沸き立つ。これは凄いんちゃうか...。
と思う暇も無く、右ジャブ突いて、下にも散らし、キムが来たところに右フックのカウンター。ちゃんと「釣って」おいての一撃。
キム、まともに打たれてダウン。多分、何を打たれて倒れたか、視認出来ていなかったでしょう。

何とか立ったキムに、坂井は焦って詰めに行くのでなく、遠目からのボディブローを突き刺し、上へ返し、またボディへ左右を当てて行く。
最後はコーナーに詰めて、ヒットしませんでしたがインサイドへ右アッパー、これも見にくいのを狙っていく。ここでゴング。


距離の長短使い分け、上下の打ち分け、緩急織り交ぜ、カウンターで斬る。
「その後」についても、実に冷静。好機を得ても、常に最適な選択をし、無理も無駄も無い。

いやもう、お見事、としか言えない。
高校年代最高のボクサーと言われ、世界ユースに高校6冠の実績ありとはいえ、プロデビュー戦の初回にコレですか。
ちょっと盛り沢山過ぎやないですか。
そんなことまで思わされる、初回三分間でした。


2回に入ると、日本人相手に簡単に参ったとは言わない韓国人ボクサーの常で、キムは抵抗...もかなわず、早々にロープに釘付け。
坂井のコンビネーション、早くて強く、厳しい。
実況が危惧するコメントをする中、レフェリーは止めないでいたが、韓国コーナーから程なくタオル。TKOとなりました。

やはりかつては東洋のボクシング最強国だった韓国、コーナーにボクシングを知っている人がきちんといた、ということなのでしょう。
極めて妥当な判断だったと思います。


試合後、自分の出来に不足を言うインタビューに至っては、どこまで本気なんやろう、と呆れるほどでした。
思い描く理想が高い、ということなんでしょうが...確かにLeminoの売り出し方を見ても、並み居るホープのさらに一段上の期待を受けているのは明らかで、それに相応しい逸材と見て、間違いないでしょう。

井上尚弥の存在が大きいが故に、その後継たる者は誰か、と色々な段階の選手の名前が上がるわけですが、ことルーキーのカテゴリーからは、この坂井優太が真っ先に、その名前を挙げられることでしょう。
正直、試合前までは、そういう感じには見ていませんでしたが、井上尚弥に通じる良さを、すでにいくつか持っている、という印象が残りました。

それは打てると見た際の踏み込みの鋭さであり、同時に打ったあと足で外す防御が、ほぼ「習慣」のレベルで身についていることであったり。
なおかつ、好機においても自信故か落ち着いていて、無駄に逸らず、さりとて見過ぎず、次の手が傍目にも適切なものが多い、というところであったり。

もちろん右と左の違いはあり、線の細さも、現時点では当然ながら感じます。
また、打った後に動く方向が、相手のパンチの伸びる方向と合っているときが数回、目に付きました。
違ったタイプと当たったときに、というようなことは、試合を重ねて行かないと、何とも言えないのも確かです。

しかし、今回の短い試合で見えたものは、ほぼ全て前向きに捉えて良いものばかりでした。
正直、センスは良いものを見られるだろうと思ってはいましたが、これほど強さ、確かさが感じられるとは思っていませんでした。
それは言えば「心身」共に、という表現をしても良い、と思うレベルでした。


早くも次の試合が8月27日...中嶋一輝vs和氣慎吾のアンダーに入ると決まっているそうです。
井上尚弥の後継というのは、まだちょっと早いにしても、Leminoフェニックスバトルの重要キャストとして、早々に名を上げてくるのは間違いなさそうです。
試合の機会もどんどんありそうですし、これからが本当に楽しみですね。


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3 コメント

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Unknown (R45ファン)
2024-06-26 13:34:17
この試合解説した方が、現役時代にウィラポンやロチャを倒した左で釣ってからの返しの右。
色々なボクサーに継承される技ですが、いくらアマ7冠とはいえデビュー戦の子がこれをばっちり決める様には驚きましたね。もちろんパワー、スピードもありますが、この子は組み立てや相手を洞察する事にも長けている様子が伺え、今後もますます楽しみです。
しかし狙った訳ではないでしょうが、外国人ボクサー相手の試合は皆序盤決着。国内ボクサーどうしは判定。
なかなか面白いものです。
メインはちょっと残念でしたが、この坂井くんだけでも今回当たりです
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Unknown (モノクマ)
2024-06-27 12:04:34
アマ実績が裏付ける技術もさる事ながら、このサイズとは思えないスピードを持ち、それを攻防に行えるのが驚きでした。同階級に関わらず井上があのパワーを生み出せるように、坂井も身体の使い方に天性のものがあるのでしょうね

これで体が出来上がってきたら、パワーもさらに付くでしょうし、今の階級に固執して成長を阻害する事なく、将来的にはフェザー級からライト級あたりが主戦場になると個人的には嬉しいです
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2024-06-27 17:15:56
>R45ファンさん

多少組み立ては違いましたが、実質「来させて」の右、お迎えでしたね。当てるだけならともかく、倒すんだからもう決め技の域で、高卒ルーキーの仕業とは思えないですね。仰る通り相手をよく見ていたし、身体の細さを除けば、ジュニア年代で50戦強のキャリア以上に練れています。それこそ大橋秀行のデビュー戦以上です。
デビュー戦の相手選びというのは色々ありますが、基本、楽すぎるのは意味が無いけど、さりとてプロで8戦とか10戦とかやっている相手を当てるのはやり過ぎかな、と思います。中垣龍汰朗(実はイメージとして坂井に被るかな、と思っていました)のプロ入り後の苦闘には、その辺が一因かなと思いもします。弱いのを当てて倒す味を覚えた方が良い場合もあり、ではないかと。その上で元々の巧さを落ち着いて出せるようになれれば、という。もちろんいつまでもそれでは駄目ですけど。


>モノクマさん

目が良いとか手が速いとかは当然ながら、足が速い、打った後まず動く、止まるときはセーフティーな位置に立てている、というところが良いですね。足がある、というか。そりゃみんな足はありますが(笑)ボクサー、ファイター問わず、足が動いていない、そういう心がけがない選手には、自ずから限界が出てきますね。仰る通りまだ線は細いので、Sバンタムかフェザーで、と思います。海外のホープだったら当然そうなるんですけどね。シャクール・スティーブンソンなんて、プロ転向の時点でもうそうなってましたし。
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