さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

選手を他人みたいに言う 松本圭佑、フルマーク勝利も批判受ける

2024-06-27 07:54:25 | 関東ボクシング



火曜日のLeminoフェニックスバトル、残り試合の感想も簡単に。


メインの日本フェザー級タイトルマッチ、松本圭佑vs藤田裕史は、3-0判定で松本防衛。
藤田の左フックで一度よろめいた場面はあったが、ヒットや攻勢でポイントはほぼ完全に抑えている。
しかし山場の無い試合で、セミまでの盛り上がりが嘘のような、興行の締め括りになってしまいました。

解説の長谷川穂積も言うとおり、攻防ともにずれたタイミングを持つ藤田は、同時に相手のパンチを射程を狂わせ、芯を外し、ダメージを最小限に抑えることにかけては、上位クラスのボクサー以上の巧さを持っていて、松本にしたら、何を打っていっても手応えがなく、良いリズムに乗れない、難しい試合だったことでしょう。
しかし同時に、勝ち負け云々を言うほどの脅威を持つ相手でもない。よく言われる「メリット」がない勝ち星をひとつ、手にしただけの試合でした。

まあそれは、こういう相手と組んだ時点で、陣営もある程度わかっていたんだろうし...と思っていたら、翌日の報道では、大橋会長や父の松本好二トレーナーが、松本圭佑を手厳しく批判した、というものが複数出ていました。

もしこれが本心からのものだったとしたら、何と浅はかなんだろうと思うのみです。
上記したような相手に、鮮やかに勝てと言われることほど、ボクサーにとって辛く難しいこともない。
それは長くボクシングのプロとして、この世界で生きてきた自分たちが一番よくわかっているはずではないのか、と。

ひょっとしたら、スポンサー向けのポーズでこういう「場面」を作って見せただけなのかも知れませんが。
どっちにしても、すぐに世界戦を組む可能性もあったのに、なんて言うならなおさら、勝ち負けには触らないが良い試合をするのは難しい、というような相手と、試合を組むべきではなかった。
責任の所在は何処にあるか、少なくとも選手だけにあるのではない。選手を他人のように批判して済む問題では無い。それははっきりしていると思います。



セミのユン・ドクノvs帝尊康輝、初回逆転KOはびっくりしました。

大阪時代からけっこう見ている選手ですが、秀でた体格、素質を持っている反面、コンディションが安定しないし、安易に打たれる欠点もあり。
特に右構えの選手が、下から掬うような軌道の右を打つと、けっこうまともにもらう印象があり、初回のダウンはまさにその通りでした。
あーこらあかん、と早々に見てるこちらが諦めてしまっていたら、一発でひっくり返りましたが。
KO率の高さからして、自信満々に詰めに出たユンに油断があった、と言うのも気の毒な、滅多に無い逆転の一発でした。
本人がこの「滅多に無い」という部分を、どう捉えているのかが気になりますが。

何しろ場内大いに盛り上がり、メインへと繋がるわけですが...まあ、ボクシングというものは、色々な試合があるものですね。




坂井優太以外の、全日本王者三人のデビュー戦、内容はやはり、相手によって違ったなあ、というところでした。

フェザー級大橋蓮は、サウスポーから繰り出す強打炸裂で初回KO。
タイ人の倒れ方は、首から力が抜けたままロープにバウンドするという、スペクタクルではなくて心配が先に来るもの。
スピード、パンチ力は抜群に見えましたが、今後色々見てみないと、というのも事実。次戦は8月24日静岡、だそうです。

フライ級の田中将吾は、10戦8勝2敗3KO、東日本新人王の高熊龍之介に初回早々、ジャブでダウンさせられる試練あり。
小柄ながらパンチが伸び、スリーパンチをベースに攻める。ボディ打ちも良く出るし、悪い局面もジャブ突いて立て直せるあたり、さすが全日本優勝だけのことはある。
しかし2~4回は抑えたが、5、6回は高熊の左フックを好打され、右クロスがかすめる場面もあり、ポイントは競っていたように。
ジャッジ三者の内ふたりが、初回のダウン以外全部田中、という採点をしていたようですが、如何なものかと。まあ、見方ひとつなのでしょうが。

しかしこの日の新人カルテットの中、一番手強い相手と闘って勝ったのも事実。
本人は消沈気味でしたが、大橋会長は「MVP」という表現で称えていたそうです。
この辺は大橋会長の上手いとこ、という言い方が出来るかもしれませんが。


田中空は、ウェルターにしては小さいが、強いパンチを連打出来るところを見せて、韓国人を初回TKO。
一見して中嶋玲を思い出しましたが、パンチの繋ぎがより滑らかで、動きも柔軟。
こちらは今後、マッチメイクが大変そうで、そこは心配ですが、魅力あるパンチャーです。
ちなみに昨日紹介した記事は誤記があって、6回戦でした。そりゃそうですよね。



坂井含めた新人の相手選びについては、実況が言っていた話を真に受けるなら、出来るだけきちんとした相手と組もうとして、その結果がこうだった、ということなのでしょう。
実際、高熊龍之介の「健闘」は、見応えあるもので、色々見どころだらけのこの日の興行でも、一際光るものでしたし。
しかし、他は組める中で最大限の相手だった、ということなんでしょう。
韓国人ふたりは別に、実力差はともかく、変な選手ではなかったですから。
問題はタイ人で、あれはちょっと...どうこう言うまでもなく、リングに上がった姿を一見して「これは...」となってしまいましたね。


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3 コメント

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Unknown (R45ファン)
2024-06-27 12:35:40
まあお父上も写真判定王者と揶揄されてましたからね。
手数を出せと言っているのに…とはいえ前半終わって負けてるのに攻めにこない相手だし、難しいですよね。
じゃあこういう相手に手を出す練習は?なかなか当てさせない相手にどういう攻め口を作るか、そのための練習はさせて来たのか?そして試合中にこのパンチから攻めて行こう、とか助言は適切だったのか?
叱責したり、試合中に張り手する前にトレーナーとしてできる事は色々ありましたよね。
親子だからこうして叱責した方が次やり返してくる、と分かっててのやり取りならともかく、側から伝え聞く分にはあまり良い方法じゃないですね。

ただ、松本くんが評価を下げたのは事実ですよね。
本人もKO意識し過ぎたか、最初前田くんとした時に比べて右がやや大きかったですし、その後上手く行かないと考え過ぎるのか、もっと行けただろうと思ったのは確か。
その意味では途中で帰ったお客さんはもう来ない、という会長の指摘は正しいですね。
時に大胆さも見せて欲しいです。
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Unknown (海の猫)
2024-06-27 13:49:43
藤田は多分初めて見たのですが、何とも独特な味のある選手ですね。こちらでの紹介がああこういうことかと。確かに「柳に風」の選手がアグレッシブになった感じで。松本のフルマークでしたが、自分はいくつか藤田に振ってもいいと思いました。松本がほとんど手を出さず、これといって有効な攻撃も出来ていない R があったので。

試合後の父親と大橋会長からの厳しい声には、おっしゃる通りそもそもマッチメイクの問題で。「世界」への査定になるようなカードではなく、日本タイトルの防衛を続けていく中で、こういう難敵相手との経験も大事、という試合かと思います。世界挑戦を見据えているなら、世界ランキングが上がるような試合を組むべきで、よく分からんハードルを設けてこれで白紙も何もと。そもそもこれをクリアしたところで、早期に世界挑戦させるとかそんな力あります?フェザーの王者呼べます?と。この先にあるのが清水、平岡コースだとしたら、むしろ今回「不合格」でよかったという気すらします。

この日のデビュー勢、坂井が頭一つ抜けてましたが、それぞれ個性がばらばらで見ていて楽しかったですね。全員次を見たくなりました。そして皆若いのがよいですね。プロ転向はやはり二十歳前後が望ましいと思います。
しかしこうした有望選手を見ても、今後の彼らのキャリアを思うと、素直に心躍らず。どのジムも同じですが、「ちょうどいい」「やるべき」試合が組めなかったり組まなかったり。既存のシステムの中でどこも頑張っているとは思うのですが、何だかなぁと思うことが多すぎて。楽しくボクシングを見続けるのは難しいものがありますね。
返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2024-06-27 17:16:27
>R45ファンさん

父親の場合はそもそも倒す力自体が無かった(きついですが)ですから、言うのもどうかと思いましたが。渡辺司(再戦)くらいですかね。あの試合は関西では放送が無く(TV朝日じゃなかった)見たのはだいぶ経ってからですが、こんな試合もあったのか、と驚いたくらいで。
本当に、あの相手に手数とか行けとか、そんな簡単な、単純な話かと。そんなことしたら余計に悪く回るかもしれない、なんて傍目の素人でもわかります。そうなったらまた違うことを他人みたいに言うんですかね。本当に子供じみています。
松本は勝つための手は打っていたし、実際勝ち負けは動かしようがない試合でした。何かを求められるのは松本の方ではなかったでしょう。
しかし前田稔輝戦のような心身の張りが感じられなかったのは事実ですね。それはこういう相手を選んだ陣営の責任でもありますが。
正直、試合が決まった時点で、こういう感じになるかもしれない、という予感はありました。勝ち負けとは違う意味で「凶」を引いたんではないか、そういう可能性を陣営はどこまで考えているんだろう...という。で、蓋を開けたら選手を叱ったというので、馬鹿だなぁ、と思った次第です。選手と一緒に反省の弁を述べた、というならわかる話なんですけどね。


>海の猫さん

相手に「凶報」をもたらす選手、という言い方が出来るかもしれませんね。前田稔輝戦でもそういうイメージでした。良い試合をする責任は負えないが、相手にとって難しい場面を作れる選手、というか。移籍後、攻撃にシフトした面があって、でも例えばタイ人と組まれても倒せない、という感じでしたから、松本を攻略するとは思えませんでしたが。
ポイントはひとつかふたつ、あったかなと思います。でも後楽園の審判は、そんなのどうでもいいという感じでしたね。こう付けても、誰も何も言ってこないだろう、と思えば、あの人達はそうします。ちなみに最近、ビートの記事や何かを含め、審判員を取り上げて好感度アップさせる取り組みがあるようですが、本当に気分が悪くなります。昔から一定の割合で、必ず行われてきたものですが。
仰る通り、世界へ繋げるような話にはなり得ない相手選びでした。それを陣営が棚に上げて選手を記者の眼前で批判するなど、もってのほかだと思います。プロモートとマネージメントを一緒くたにした体制の元でこういうことをやる。悪しき旧弊以外の何物でもないですね。これがトップランクに頼み込んでベガスに遠征し、週末興行のラインナップでセミかセミセミに入れてもらい、準ランカークラスと組んで、そこで不甲斐ない試合をした、というならわからなくもないですがね。
新人4人は全員、まず力があることがわかりましたね。年齢的にも良い時かもしれません。
今後に関しては、試合の機会自体は確保出来そうですが、相手選びの難しさはついて回るでしょうね。それこそトップランク傘下の若手のようにはいきませんね。国内、地方の選手をピックアップするか、韓国かタイか、少し自信がついてきたらフィリピンか、なんでしょう。首都圏のホープ同士というのはなかなか無いでしょうね。田中将吾なら、数戦したのち、高熊と再戦するとかいう発想があるならまだしも、それもおそらく無いでしょう。また今回の試合で名を上げた高熊が引き続き、ホールのリングで試合を組まれる、ということもまた、同様に。我々ファンは選手の残した内容と結果が、その後の展開に納得行く形で反映されることを望みますが、なかなかそうならないことの方が多いですね。
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