さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

「測定」に何ラウンド要するか? 井上尚弥、スティーブン・フルトンに挑む(その2)

2023-07-16 06:47:31 | 井上尚弥



(その1)から続きます。



対する井上尚弥は、これがスーパーバンタム級初戦であり、その体格は、パンチ力は、スピードは、耐久力はと言い出すと、基本的には未知数です。
もしもフルトンの構築する距離を詰められず、遠目の位置からジャブを突かれ、ワンツーで突き放され、カウンターを取られ、ボディも叩かれ、アッパーで狩られ、となれば、おそらく井上に勝機はないでしょう。

しかし、そんな展開に井上が押し込まれたまま、一試合を終えるなど、あり得ないとも思います。
問題はどの程度まで、攻略の歩を進められるか、その程度による、というところでしょう。


過去に、井上は階級を上げた試合で、オマール・ナルバエスやジェイミー・マクドネル相手に、ファーストパンチから圧倒してのアーリーKOをやってのけています。
それを見ているだけに、今回もそうなるのでは、という期待もします。
とはいえ、さすがに今回ばかりは難しいだろうと思います。そうじゃないかもしれませんが、ひとまずそういうことにして(笑)。


まずはスピードがあり、リーチがあるフルトンのジャブを外し、切り込めるかどうかです。
井上にとりフルトンは、おそらく過去最高に、遠くから正確に、速いジャブを打てる相手でしょう。

しかし、強打のクラッシャー、デストロイヤーである反面、打たせないことへの集中の高さがあり、外して打ち込む距離や位置取り、タイミングの測定、攻撃ルートの選定に関して、傍目には信じられないほど早くそれを済ませる、井上の情報処理能力の高さには、これまで何度も驚かされてきたものです。
今回、井上がその「測定」に、過去になく手間取る部分があるかもしれませんが、それでも結局は、井上がどこかで攻撃の端緒を掴むことだろう、と思います。


フルトンのジャブを外して、上へのカウンターは難しいので、右のボディストレートを打ち込めたらベストですが。
単に威圧、または嫌がらせ効果、というに留まらず、それこそ初手からダメージを与え、相手の戦力を削ぐ威力が、井上のボディ攻撃にはあります。
ベタな予想ですが、当然小柄な方の井上が、ボディから攻め込む可能性は高いでしょう。フルトンのカウンターは多彩なので、難易度は高いかもしれませんが。
しかし、フルトンの目の良さ、勘の良さを考えると、上へのパンチは、特に序盤は狙うだけ無駄、損、という感じもします。

そして、単に速いだけでなく、懐を深く使うのも巧いフルトンですが、上記の通り、反面、防御に徹しきれない情緒の持ち主であることが、井上に幸いするのではないか、と思います。
もし距離を崩せず、遠目の位置関係で長い時間を闘うことになれば、井上にとり難しい展開でしょうが、一旦切り込めたら、フルトンのそういう特徴故に、案外、井上にとって良い回りになる可能性が高いのでは、と。
もちろん122ポンド級で現状、トップの選手と目されるフルトンの体格、耐久力(大柄な上、クリンチも巧い)を考えると、その分苦しむこともあるにせよ。




ということで、毎度の通りとりとめも無く書いてきましたが、一応、当たりもしない予想というか、想像を。


最悪のケースは、井上にとってのスーパーバンタム初戦で、全ての要素でフルトンが上回る、というものですが、万が一、でしかないでしょう。
さりとて井上が序盤から圧倒して、ということも...あったら良いですが(笑)まあこれもなかなか、という。

現実はその間に収まるのだとして、要は井上がフルトンのジャブ、速いワンツーの射程をいかに外すか、そして攻撃の端緒をいかに掴むか、という、そのタイミングの問題だと思います。
そのタイミングが、7回よりも後だった場合...フルトンのジャブのヒット、アッパー系の迎撃、クリンチによる攻撃の遮断などによって、ポイントリードを許し、さらに一度なりとも好打を許していたりしたら。
井上が、残りの回全部取っても追いつかない、という展開であったら。

もしこのような展開を作って、中盤以降まで試合を持って行けるなら、スティーブン・フルトンの技量力量は、やはり世界一流のものであったと証され、勝機もあることでしょう。
こうなる可能性はあると思います。大いに、とは思いませんが、ゼロではないと。


しかし、そのために必要な集中、闘志、体力、そして井上の強打に耐える耐久力を、フルトンが全て完璧に取り揃えていなければ、かなわない話でもあります。
もし、大橋秀行会長が10年近く前から言っていたように「井上のベストはスーパーバンタム級」なのだとしたら。
122ポンドに上げて、減量から解放され、スピードとパワーが乗った井上尚弥の猛攻に晒される、その頻度を出来るだけ下げ、その始まりを出来るだけ「後ろの方」へと持ち越すことにのみ、フルトンの勝機は限定される、と思います。


ということで、判定、中盤以降のKO、いずれにせよ、私は井上尚弥の勝利に一票です。
フルトンの勝つ可能性は、あっても判定のみ、でしょうか。
もつれた試合に持ち込んで、井上を心身共に疲弊させたり、逆に油断が生まれたり、という場合に、終盤のKOがあるかもしれませんが、井上の側に、重大なコンディション不良でもなければ、という気がしますね。




とまあ、賢しらにあれこれと書いといてナニですが、細かい話はおいといて、本当に楽しみな一戦です。
両者共に、世界的に注目を集めるビッグマッチですし、最高に「ネジ巻いた」状態でリングに上がって来ることでしょう。

ことにフルトンにとっては、ボクサー人生最大の大舞台です。
過去の試合ぶりからどうのこうの、という話を飛び越えた、過去最高のスティーブン・フルトンの姿を、我々は見ることになるのかもしれません。
そしてそれが、バンタム級の減量から解放され、また転級初戦で、バンタム級の時と違い、何の遠回りもなく、階級最高の評を受けるチャンピオンに挑める試合に、心身共に高揚しているであろう、井上尚弥と相まみえるのです。


これほどのビッグマッチに挑む日本人ボクサーと同時代に生き、それをライブで、リアルタイムで見られる。夢のような話です。
勝ち負けどうという以前に、やはり井上尚弥の存在に、ファンの一人として、今から感謝したい気持ちです。
そして、その相手として不足無し、王者スティーブン・フルトンにも、心から敬意を表したい。それもまた、偽らざる気持ちですね。



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2 コメント

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Unknown (NB)
2023-07-24 02:03:02
スーパーバンタム版井上尚弥が未知数ながらも、さうぽん試合前考察特別版、楽しませて頂きました(笑)ありがとうございました。この試合の私見を言葉、文章にするのはたいそう困難な事です(笑)

私がとても注目するところはアメリカの黒人との戦い。何て呼ぶのでしょう…アフリカ系アメリカ人でしょうか、わからない(笑)日本人とはなかなか絡めませんでしたし、ボクシングがまた別のものの感覚でいます。
そしてまた身体能力と異常なほどメンタルが強く、冷静沈着。何なんでしょう…黒人社会の生き様ですよね…。
アメリカ黒人全部がとは言いませんが、フルトンはその特異な能力を持ち合わせた強いチャンピオンだと思ってます。
その強いアメリカ黒人に井上モンスターが挑戦、最高です感謝。そうとう難しい戦いになると覚悟してますが、技術とメンタルの壮絶な戦いだと思います。

井上は自分自身を最強、無敵、とは考えていないと言ってましたね感動しました。まだまだ強い選手を倒さないとそう思えない、自分自身納得しない…素晴らしいしボクシング好きには、たまらない。夢膨らむばかりです。
今回モンスター井上尚弥の大好物の『強敵』。どんな準備してるんだろう…完璧でしょう、間違いなく強くとうとう完成形の井上尚弥が見れると期待してます。
今回、絶対、絶対勝たないとダメだと思います!アメリカ黒人を乗り越えなければ…
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2023-07-24 16:32:54
>NBさん

過分なお言葉、恐縮です。なかなかうまくまとまりませんが、いつものことですので。
言い方は色々ありますが、アフロ・アメリカン、という表現で問題無いと思います。案外というか、少ないみたいですね。世界タイトルマッチで、日本人と対戦した事例は。勝ったのって、辰吉と、村田諒太だけでしょうか。他にいたかなあ...。
何しろ世界のボクシング、その主流を成す、といっていいでしょうね。フルトンも技巧派として、大いに評価される存在だと思います。フィラデルフィアの徳山昌守やなあ、と思ったりもします。
しかし井上尚弥もまた、パッキャオやドネアに続く、アジア圏の水準から抜きん出た実力の持ち主です。また、脅威的な能力を持つにもかかわらず、自信と謙虚さを併せ持つ、他から見ればある意味特殊なメンタルの持ち主でもあります。負傷や不調、減量苦などで苦しい試合もありましたが、それも乗り越えてきています。心技体とも厚みがある、信頼性の高い怪物とでもいいますか。
明日の試合でどのような光景が目に入ってくるか、今から楽しみでなりません。相手にとって不足無し、と思っていますが、一見しただけではそうとは言えないような結果になる可能性も大いにあるだろう、という気もしますね。
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