さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

いみじくも見えた「スルタン」との差 カネロ、凱旋試合でライダーに大差勝利

2023-05-07 15:15:18 | 海外ボクシング


ということで今日はDAZNのライブ配信、簡単に感想です。


カネロ・アルバレスは久し振りの地元凱旋試合、大きなスタジアムに大観衆を集めての試合で、ジョン・ライダーに大差の判定勝ちでした。


一見してえらく狭いリングで、右と左の違いはあれど背格好はほぼ同じ、という両者が、右と左のボディブロー応酬からスタート。
距離としては近くならざるを得ない状況で、初回はライダーが下から食らいつく、という感じも少し見えた。

しかし2回からはカネロが逆に圧して、ライダーにロープを背負わせ始める。
左ボディに右フック、時に右ストレートリード。ライダーが手を出しても厳しくリターン。

ライダーは前に出られず、逆に止められ、時に下がらされる。これでは彼に勝ち目は無い。
こういう展開を早々に作れるカネロの攻撃、のみならず防御の技量にも感心するしかない。

早々に鼻血?で出血を見たライダー、左アッパーも使って入ろうとするがかなわず圧され、5回はカネロの狙い澄ましたワンツーを食ってダウン。
左と右の間合いを、余裕を持って調整し、外からのフックを見せておいての、インサイドへの一発でした。


カネロ、完全に展開を支配した上で倒している。しかし残り時間、1分半近くあったが詰めには行かない。
金持ち喧嘩せず、ではないが、この辺が嫌なところ。今時ではあるんでしょうが。


とはいえ、勝ち負けに影響するでなし、次に倒しに行くだろうと思っていたら、そうでもない。
そのうち、試合は終盤に入り、ライダーの粘り、闘志が反撃という形で目に見えてくる。

8回ラスト、カネロの右でライダーがスリップダウン。足はかかっていたが、パンチも当たっていた?ダメージ皆無というわけでもなさそう。
しかしライダー、果敢に左のヒットで反撃。10回などはライダーのポイントになったか。
カネロは思い直して、倒したそう?に攻めるが、相手の心身が生き返ってしまった後で、改めてそれをなぎ倒すほどの力は、この階級のカネロにはない。
フルラウンド終わって、判定となりました。


このカードが決まったあと、思ったのはフリオ・セサール・チャベスがグレグ・ホーゲンと闘った一戦と、ロケーションが似ているな、ということでした。
あれはメキシコの闘牛場か何かだったと思うんですが、13万人でしたっけ?何しろ地元の大観衆が詰めかけ、その前でメキシコ人に挑発的なコメントを連発していたアメリカ白人のホーゲンを倒す、という試合でした。

言っては悪いが、当時まだマイナータイトルと言わざるを得ない顔ぶれで争奪されていたIBFライト級タイトルを賭けてビニー・パジエンザと一勝一敗、クラスを上げてロジャー・メイウェザーに敗れていたホーゲンは、チャベスの相手としては格落ちで、最初から勝敗は見えていました。
でも、ある意味、そういう選手だからこそ大きなスタジアムを使っての試合で、対戦相手に選ばれたわけです。


今回のジョン・ライダーは、WBAタイトルを獲っていてもおかしくない試合をした「実績」はありますが、カネロを相手に勝ち目がある相手かというと、やはり違いました。
そしてそれは、今日の試合に出ていたと思います。ライダーの健闘は称えられるべきだとしても。



昨日、偶然、こんな記事を見つけました
スペイン語圏の記者による、「クリアカンのスルタン」(こんな尊称があったとは、今回初めて知りました)チャベスとカネロの比較論ですが、結論としてはカネロがチャベスを超えるか否かは今後次第で、現時点ではチャベスが上、とのことです。
そうなのだろうと思います。まあ、今後どうあれ、ドーピング云々の話を含め、私個人の好悪ははっきりしていますが(笑)。


この記事を読んで、翌日の試合...つまり今日の、似通った状況での「凱旋試合」を比べると、やはりその結論は正しいな、と思った次第です。
序盤から優勢、思うままに試合を運んで、5回にダウンを奪って、でも厳しく詰めに出ない。
それは何か故障でもあったからかもしれません。しかし、その後の闘いぶりを見るに、あそこで敢えて「見」に回らねばならないほどの重篤なものだったとも思えませんでした。

体格的に小さい選手が多いメキシコ人でありながら、チャベスよりもさらに重いクラスで、欧米の強豪相手に闘い、ほとんどを勝つという、リング上で示す実力のみならず、その言動も含めて、メキシコや米国ヒスパニックの人気は絶大なものがあるカネロですが、こういう試合ぶりが、本当にかの国において、全面的に支持されるものかどうか、傍目には多少不思議に思いもします。
まあそれは、私のような古いファンがかつて抱いていた、ボクシング王国メキシコへの過大な憧れ、その名残にしか過ぎないのかもしれませんが。


コメント (2)
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