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いよいよ読もう
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「百年の孤独」でも「大佐に手紙は来ない」でも「コレラの時代の愛」でもなかったのはひとえにこれが文庫本で手に入り易かったというのと、彼の作品の中では中編でとっつきやすそうだったからという極めて安易な理由だった。
初めての作者の作品というと、その世界に自然に踏み込めるかどうか心配になるのだけれど、それは全くの杞憂に終わった。気付けばどっぷり浸りこんで・・・その作品世界の虜になっていた。どこか不安で、腰を落ち着けられず、どこか霧の向こうに広がる不安定な世界を見ているようで、それでいて呆気に取られてしまうぽかんとしたその明るさは一体何なのだろう。ユーモアというのが一番近いのかもしれないが、でもそうしたたった一つの言葉でくくれるほど単純ではない気がする。
読み終えて満足のうちに訳者の後書きを読んでいたら、この事件の後日譚が「コレラの時代の愛」へとなったことを知り、この導かれる偶然にわくわくした。