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Casa de lápiz:鉛筆庵

鉛筆庵に住む鍵盤奏者が日々の生活の徒然・音楽などを綴ります。

木洩れ日の家で

2011-12-04 22:46:59 | 映画 か行
               
2007年/ポーランド/104分
原題:Pora umierać
監督・脚本:ドロタ・ケンジェジャフスカ
撮影:アルトゥル・ラインハルト
音楽:ヴウォデク・パヴリク
出演:ダヌタ・シャフラルスカ、クシシュトフ・グロビシュ、パトルィツィヤ・シェフチク、カミル・ビタウ、ロベルト・トマシェフスキ、ヴィトルト・カチャノフスキ、マウゴジャタ・ロジニャトフスカ、アグニェシュカ・ポトシャドリク

岩波ホールで上映された時は連日多くの観客でにぎわったというポーランド映画『木洩れ日の家で』が新所沢のLet'sシネパークで1週間限定で上映された。
主人公のAnielaを演じたダヌタ・シャフラルスカは現在95歳、この映画を撮影中は91歳だったという。しかし、その身のこなし言動全てがとてもその年齢とは思えない!!ああ、こんな風に年をとれたら素敵だなっ、と思わせる。
飼い犬のフィラと二人(一人と一匹)で思い出の詰まる大きな家に住んでいるのだが、その関係はまさに「二人」なのだ。カメラで映し出されるフィラの表情の豊かなこと!!
91歳だからと言って決して浮世離れせず、生きていればぶつかる様々なことに毅然として立ち向かい、事の始末を見事なまでにつけて・・・そしてある日ぱたっと逝ってしまう。う~む!!一緒に観た友人は犬を飼っているのでフィラを残して逝くのはフィラが可哀想だと残念がったが・・。
そして全編モノクロームで映し出される世界の美しさ、雄弁さを堪能した
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グッド・ハーブ

2011-08-13 00:04:26 | 映画 か行
                 
2010年/メキシコ/120分
原題:Las buenas hierbas
監督・脚本・製作: マリア・ノバロ
出演:オフェリア・メディーナ、ウルスラ・プルネダ、アナ・オフェリア・ムルギア、コスモ・ゴンサレス・ムニョス
ストーリー:幼い息子を育てながらラジオ局で働くシングルマザーのダリア(ウルスラ・プルネダ)と、メキシコ先住民が治療に用いた薬草を研究する民族植物学者の母ララ(オフェリア・メディーナ)。ララとダリアは互いを干渉しないように暮らしてきたが、ララはある日認知症と診断されてしまう。~シネマトゥデイより

観たかったこの作品、扱っている題材は重いのだが、とにかくその映像の美しさ、流れる音楽に心奪われ慰められる。
対象に寄り添って、息を詰めてじっと眺めているような映像。統一感のある豊かな色彩と、そこに絡んで聞こえる音。それは水の音であったり、空気の音、風の音であったり音楽であったり・・・。
中心となるのはララとダリアの母と娘であり彼女らを結ぶ一つがハーブなのだが、その関係以外に描かれるもう一組の母と娘、母と息子、父と娘、父と息子という関係が物語を一層深めている。
繊細でいて力強く、優しく哀しい。そして苦い・・・。
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奇跡

2011-06-28 20:21:39 | 映画 か行
                
2011年/日本/127分
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:前田航基、前田旺志郎、林凌雅、永吉星之介、内田伽羅、橋本環奈、磯邊蓮登、オダギリジョー、夏川結衣、阿部寛、長澤まさみ、原田芳雄、大塚寧々、樹木希林、橋爪功
ストーリー:小学生の兄弟、航一と龍之介は、両親の離婚で、鹿児島と福岡で暮していた。新しい環境にすぐに溶け込んだ弟・龍之介と違い、鹿児島に移り住んだ兄・航一は、現実を受け入れられず、憤る気持ちを持て余していた。ある日、航一は、新しく開通する九州新幹線、「つばめ」と「さくら」の一番列車がすれ違う瞬間を見ると奇跡が起こるという噂を聞く。もう一度、家族で暮したい航一は、弟と友達を誘い“奇跡”を起こす計画を立てる。~goo映画より

是枝監督の作品は「歩いても歩いても」しか観ていないのだが、しみじみとした印象が深く残っている。その監督の作品が近場で公開されたのでとことこ観に行ってきた。
演じる役者が大人も子どもも素晴らしく、子どもが主役のこの作品、特にその子どもたちが自然でのびやかに輝いていて、観終わって清々しい風がふっと吹き抜ける。大人も子どもも、みんな同じくその背中にしょっているものがあり、それをずっと背負って生きていかねばならないということ。子どもには子どもの、大人には大人の、抱えているものは違うけれど、でも等しく重い荷物をその肩に抱え、それぞれが各々の知恵と力と勇気を(う~ん、これはまるでスーパージェッターの歌詞だ)駆使して歩いていく姿が素敵だ!!ともすれば記憶の彼方のそのまた彼方に置き忘れてしまっている自身の子ども時代を思い出してみたりして、ね、ははは。

ところで、かねてからJR九州を走る列車はそのデザインが素晴らしいと聞いていたのでその映像もたくさん見られるのではと期待していたが、思っていたほど列車の映像はなかった。しかし、そこで映されていた列車内の風景は洗練されたデザインの空間が広がっていて、思わず「へぇ~」と溜息をついて眺め入ってしまった。
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神々と男たち

2011-04-08 00:57:38 | 映画 か行
                  
2010年/フランス/120分
原題:DES HOMMES ET DES DIEUX
監督:グザヴィエ・ボーヴォワ
脚本:エチエンヌ・コマール
出演:ランベール・ウィルソン、マイケル・ロンズデール、オリヴィエ・ラブルダン、フィリップ・ロダンバッシュ、ジャック・エルラン、ロイック・ピション、グザヴィエ・マリー、ジャン=マリー・フラン、オリヴィエ・ペリエ、サブリナ・ウアザニ、ファリド・ラービ、アデル・バンシェリフ
あらすじ:1990年代、アルジェリア山間部の小さな村にある修道院。イスラム教徒の村人たちにとってそこは診療所であり、修道士たちは共に働き援助の手を差し伸べてくれる頼れる存在だった。しかし、信頼と友愛を尊び、厳格な戒律を守って慎ましく暮らす修道士たちにも、アルジェリア内戦の余波で頻発するテロの脅威が迫る。非暴力を唱える修道院長クリスチャンは軍の保護を辞退するが、ある晩、過激派が修道院に乱入する。~goo映画より

ほんとは地震前に観るつもりだったのが延び延びになり、ついでに記事にするのも延び延びに・・・。
重い内容の作品だが、脚本、俳優、映像そして音楽、どれをとっても素晴らしい!!散りばめられた賛歌の美しさに胸が詰まり、最後の晩餐で「白鳥の湖」が流れる音楽センスに驚嘆。イスラムとカトリックが平和に暮らしていたこの村がテロリストによって変貌させられる不条理。植民地と旧宗主国間の不条理。不条理によってゆがめられる日常。現在の日本の状況をつい考えてしまっている自分がいる。そして、ラストに向かってゲッセマネの園を連想させるシーンから、捕えられゴルゴタの丘に向かって歩いていき・・・まさに受難劇を見ているような・・・。深くて苦い思いを抱えて劇場を後にした。

全然、作品とは関係ないけれど7日のNHKニュースで紹介されていたパリでのチャリティー・イベントの映像でフランス語訳された宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を朗読していたのは、どこかで見た気が?と思ったら、この作品のクリスティアンを演じていた ランベール・ウィルソン!
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借りぐらしのアリエッティ

2010-07-29 00:06:52 | 映画 か行
               
2010年/日本/94分
監督:米林宏昌
企画・脚本:宮崎駿
原作:メアリー・ノートン
キャスト(声の出演):志田未来、神木隆之介、三浦友和、大竹しのぶ、竹下景子、樹木希林

久しぶりにスタジオジブリの作品を劇場で観た。「もののけ姫」と「千と千尋・・・」はTVとDVDで観たけれど、それ以降は全然観てない。
予告編を見た時から、これは劇場でと思っていたのだが、実際に観てみると、アニメーションの美しさ、その描写の丁寧さにうっとり~。庭のしたたる緑、風のそよぎ、雨のしずく、家の中の徹底してディテールにこだわった描き方etc.etc.そして何といっても、この話の面白さ!日々の生活の中でつい忘れていた子どもの頃の自分のある部分に出会ったような、そうそれはどこか懐かしくどこか切なさを滲ませて語りかけられていた気がする。
ただ、声優はあまりその顔を思い出させない方が私はいいなぁ。
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カティンの森

2010-05-10 23:40:38 | 映画 か行
               
2007年/ポーランド/122分
原題:Katyń
監督・脚本:アンジェイ・ワイダ
原作:アンジェイ・ムラルチク
音楽:クシシュトフ・ペンデレツキ
出演:マヤ・オスタシャースカ、アルトゥール・ジミエウスキー、マヤ・コモロフスカ、ヴワディスワフ・コヴァルスキ、アンジェイ・ヒラ、ダヌタ・ステンカ、ヤン・エングレル、
アグニェシュカ・グリンスカ、マグダレナ・チェレツカ、パヴェウ・マワシンスキ、アグニェシュカ・カヴョルスカ、アントニ・パヴリツキ、クリスティナ・ザフファトヴィチ、

ドイツのヒトラーとソ連のスターリンの密約によって、ポーランドは1939年9月1日ドイツに、9月17日ソ連に侵略された。そしてソ連の捕虜になった約15,000人のポーランド将校が、1940年を境に行方不明になった。当初は謎とされていたが、1943年春、ドイツがソ連に侵攻した際に、カティンでポーランド将校の数千人の遺体を発見し、「カティンの森」事件が明らかになった。ドイツはソ連の仕業としたが、ソ連は否定し、ドイツによる犯罪とした。戦後、ソ連の衛星国となったポーランドでは、カティンについて語ることは厳しく禁じられていた。
映画は、実際に遺された日記や手紙をもとに、「カティンの森」事件の真実を、ソ連軍に捕らえられた将校たちの姿と、彼らの帰還を待つ家族たちの姿をとおして描く。(公式サイトより)

4月7日にポーランド旅行から帰国した友人と10日にgoogle-earthでポーランドの都市とその地図上の位置とを確かめながら、ここがワルシャワ、ここがクラクフ、そしてここがカティンの森事件の起きたカティンの森のあるところ、など興味深い話を聞いた。そしてアンジェイ・ワイダ監督の『カティンの森』をどこかで観たいものだね、と話していた。と折よく、池袋・新文芸坐で公開されたので先日観に行った。

カティンの森事件については、高校の世界史の授業で触れられたけれど、その時はただ第二次世界大戦中に起きた事件ということしか学習しなかったような気がする。捕えられたポーランド人捕虜がソ連の内務人民委員部(NKVD)によって銃殺された事件、とはその当時は知らなかった。冷戦終結後、ゴルバチョフが初めて公式にソ連の仕業と認めたんだと友人が教えてくれたが、それは1990年のことだった。
自身の父親もカティンの森事件の犠牲者の一人であったというワイダ監督の手になるこの作品は戦争の残酷、悲惨、不条理etc.etcを目の前に恐ろしいまでに率直に暴き、曝け出させる。拭うことのできない悲しみ、戦争によって狂わされるその後の人生。そして何より戦争後のポーランドを再生させ担っていくはずであった知識層にあった人々がここで虐殺されたことで大戦後のソ連支配に組み込まれ(まさにそれこそがスターリンの狙いであったのかと思わされるのだが)そしてカティンについて語ることさえ禁じられてしまうような国家体制にさせられてしまったポーランドの悲劇に慄然とする。
様々なシーンが記憶に残ったが、特に深く刻まれたのは捕虜収容所でのクリスマスの日に大将が一緒に囚われているポーランド人捕虜に呼びかけるシーン「・・・生き延びてくれ。君たちなしで自由な祖国はあり得ない・・・」という彼の言葉とその後に続く荘厳な歌詞の歌が全員の歌う男声大合唱になるところ。忘れられないシーンだった。
友人にあの歌は国歌なの?と聞いたら、あれはポーランドで古くから(18世紀)歌われているクリスマス・キャロルの中でも最も愛されている神の生誕を祝うキャロル『Bóg się rodzi』(英語: God is born)だと教えてくれた。

ではYoutubeにあった『Bóg się rodzi』をどうぞ。

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(500)日のサマー

2010-04-14 23:51:13 | 映画 か行
               
原題:(500) DAYS OF SUMMER
2009年/アメリカ/96分
監督:マーク・ウェブ
出演:ズーイー・デシャネル、 ジョセフ・ゴードン=レヴィット、クラーク・グレッグ、ミンカ・ケリー、ジェフリー・エアンド、マシュー・グレイ・ガブラー、クロエ・グレース・モレッツ

物語:建築家を志しながらもカード会社でライターの職に甘んじているトムは、運命の恋を夢見るロマンチスト。いつか素敵な恋人に出会えるはずと信じていた。そんなトムの前に新入社員サマーが表れる。彼女を一目見た瞬間に恋に落ちたトム。サマーもトムに好意を抱き、2人はデートを重ねるが、彼らの間には大きな壁が立ちはだかっていた。トムと違って、サマーは真実の愛なんてものを、これっぽちも信じていなかったのだ。(goo映画より)

500日経って迎えるトムとサマーの行く末はわかってはいても、ほろ苦くでも甘く切なく・・・。二人が共に過ごした500日の軌跡があっちへ行ったかと思うと、思い切り遡って提示されたりと、その一見何の脈絡もなく時空間を移動することが実はトムの心の「揺れ」そのもののように思われ、いつの間にかすっかりトムの気分になってしまっているのだ。トムの側からしか描かれていないという特異さにも関わらず。
「これこそが運命の恋」と信じるトムの一途さと、「友達ね」とあっさり割り切っているサマーとの鮮やかな対比、そして食い違い。日にちが行ったり来たりするたびに現れる一枚のスケッチの中に描かれる樹の姿が象徴的だった。そう、樹は葉を出し生い茂り、やがて枯れ、でもまた季節が巡ってきた時には新たに芽吹くのだ~!!
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こまどり姉妹がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!

2010-01-23 00:30:57 | 映画 か行
               
2009年/日本/71分
監督:片岡英子 
出演:長内栄子、長内敏子

こまどり姉妹、子どもの頃TVに出演していた双子のこまどり姉妹がお揃いの振り袖を着、手には三味線を持って歌っていたのを覚えている。殆ど同じ頃にやはり双子のデュエットであったザ・ピーナツも活躍していて、私はポップな曲を歌っていたピ-ナッツの方が断然好きな子どもだった。彼女たちは早々に引退して人々の前から姿を消してしまったのだが、こまどり姉妹は71歳の現在も現役で歌い続けているということをこの映画の公開で知った。
バウスでの公開は最初はモーニングショーだけだったのが、いつの間にかナイトショーも行われていた。観客は年齢層が高いんじゃないかという予想をあっさり裏切って、老若男女、しかも若い女性が多かったのにも吃驚。レディース・デーだったからかもしれないけれど、それにしても多かった。
映画は彼女たちの生い立ちから現在にいたるまでの軌跡を彼女たち自身が語る言葉によって丹念に描いていく。そこに重ねられる昭和の映像。昭和13年生まれだという彼女たちはまさに時代とともにあり、時代に翻弄され、激動の昭和史を一つの具現化された形として目の前に見せてくれているようだ。北海道で生まれたこまどり姉妹は炭鉱夫だった父親と一家で樺太に渡りそこで終戦を迎え日本に引き揚げてくる。彼女たちが歌うようになったわけ、門付けから始まり、やがて東京に出てくるのだがそこで住んでいた山谷での暮らし、流しのこと、三味線を弾くようになったいきさつなど、淡々としかもユーモアたっぷりに語られるのだ。それはもう、胸のすくような天晴れとした姿なのだ。死ぬまで生きなきゃね!とはらりと自然に言ってのけられるその言葉の裏に、どれだけのものが込められているのだろう!!
生きることと歌うことに真剣に向き合い精進し続けている彼女たちから受けた、すがすがしさと朗らかさを忘れないぞ!と、彼女たちの歌声と三味線の音とともに、前向きな気持ちになって劇場を後にした。
      
バウスシアターに設置されていた2枚の看板・・・特に右のはインパクト大!!
観光地で記念撮影用としてよく見かける顔の部分を切り抜いたこの手の看板に、まさか映画館の入口で出会おうとは。くくくっおもぴろい!
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かいじゅうたちのいるところ

2010-01-20 00:06:53 | 映画 か行
              
2009年/アメリカ/101分
原題:WHERE THE WILD THINGS ARE
監督・脚本:スパイク・ジョーンズ
原作:モーリス・センダック
出演:マックス・レコーズ、キャサリン・キーナー、マーク・ラファロ、ローレン・アンブローズ、クリス・クーパー、ジェームズ・ガンドルフィーニ、キャサリン・オハラ、フォレスト・ウィテカー

楽しみに公開を待っていた『かいじゅうたちのいるところ』公開初日の字幕版で観ました。
あの思い入れの強い絵本をスパイク・ジョーンズ監督がどう映画化するのか楽しみでもあり、裏切られたらいやだな、という思いとが交錯してかなりどきどきして観てました。
映画としてはとても温かみのある作品だと思いましたし、あの絵本をこう展開していくのかという面白さも味わえたと思います。「かいじゅうおどり」なんて絵本の通りでわくわくしましたし、マックスも可愛らしかったし着ぐるみ着て走り回るかいじゅうさんたちも愉快でした。映画としてはもう全然これでいいと思ったのです。

でも、でもね、思い入れが強かった分、絵本と映画は別物だということをはっきり意識してました。私にとってマックスはどこにでもいる子どもだったし、それこそ絵本をのぞいていた幼い息子でもあったわけで、だからこそ感情移入して読んだし聞いていたんだと思うんです。そしてこの本を大人が読んでも夢中になれるのは、マックスの中に普遍の子どもの姿を見るからじゃないかな、少なくとも私はそう。現実の世界と全く違う世界だからこそ、そこにたどり着く楽しみもあったわけで(また反対に現実世界に戻る喜びも同時にあって)長い航海の末に着いたところが人間の世界との二重構造になっていたというのが、どうにも逃げ場がないというか辛いものがあるというか・・。
絵本を知らずにこの作品だけを観たのなら、漂う雰囲気は温かかったですし、また全く違う観方をしていたと思います。
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ココ・アヴァン・シャネル

2009-10-28 00:39:55 | 映画 か行
                            
2009年/フランス/110分
原題:Coco avant Chanel
監督:アンヌ・フォンテーヌ
出演:オドレイ・トトゥ、ブノワ・ポールブールド、エマニュエル・デュボス、マリー・ジラン、アレッサンドロ・ニボラ

  田舎のナイトクラブからパリへ、そして世界へ・・・
コネクションも財産も教育もない孤児院育ちの少女が
     世界の[シャネル]になるまでの物語(チラシより)

ガブリエル・シャネルがココ・シャネルになるまでの半生を描いたこの作品は彼女の生い立ち、若き日の生活、恋そして愛についてをその当時のフランス社会を背景として描いている。その時代に生きていた当時の女性たちがいかに窮屈なコルセットに体とそれだけでなく心を押し込めて生きていたかを鮮やかにあぶり出し、そうした女性をコルセットから解放することで、新しい女性像を作り出していくことになったココ・シャネルはどのようにしてこの時代を生き、そして生きていこうとしていたのかがスクリーンで明かされる。
しなやかにしたたかに周りの目をまるで気にせず、というより自分自身の目を信じて生きていくことで、その当時の女性を解放した女性としてのココ・シャネルという生き方を描いて新鮮だった。
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グラン・トリノ

2009-05-06 23:24:03 | 映画 か行
              
2008年/アメリカ/117分
原題:GRAN TORINO
監督・製作:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ビー・バン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー、コリー・ハードリクト、ブライアン・ヘーリー

あらすじ:妻に先立たれ、息子たちとも疎遠な元軍人のウォルト(クリント・イーストウッド)は、自動車工の仕事を引退して以来単調な生活を送っていた。そんなある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、アジア系移民の少年タオ(ビー・ヴァン)と知り合う。やがて二人の間に芽生えた友情は、それぞれの人生を大きく変えていく。(シネマトゥデイ)

ミスティック・リバー以来、久々に観たクリント・イーストウッド監督の作品。ミスティック・リバーが作品の良し悪しではなく、内容が重過ぎてそれ以降の彼の監督作品は全然観てこなかった。しかし、グラン・トリノ直前のチェンジリングは見逃しても、これは是非とも観ておこうと予告編を観た時から決めていた。何てったって、クリント・イーストウッド主演作だ!!
その期待は裏切られることなく、しかもその先に待っていたラストは衝撃だった。頑固で人の言うことには耳を貸さず心を許さず、口を開けば差別的な言葉の洪水状態の老人コワルスキー。その言動に最初は戸惑うのだが、その言動の裏にある彼の心に抱える傷を知ることで、呆気にとられるほどの差別的言葉に滲む思いを知ることになる。
作品全体に流れる温かで大らかな愛とユーモアに笑いと涙を禁じ得ず、そしてともすれば悲観的、絶望の淵に沈みそうになる未来に対して希望の光を感じて胸がぎゅっとなるのだ。
どの登場人物も忘れがたい印象を残すのだが、やはり特にコワルスキー、隣家のモン族の少年タオとその姉のスーとのやり取り、そして犬のデイジーの忠実さが強く心に残る。

モン族については少数山岳民族で独特の刺繍シャンティ国際ボランティア会)を思い出すだけだったのだが、ベトナム戦争との関わりのことなどこの作品の中で初めて知ることができた。     
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画家と庭師とカンパーニュ

2009-04-23 23:46:44 | 映画 か行
              
2007年/フランス/105分
原題:Dialogue avec mon jardinier
監督:ジャン・ベッケル
出演:ダニエル・オートゥイユ、ジャン=ピエール・ダルッサン、ファニー・コットンソン、アレクシア・バルリエ、ヒアム・アッバス、エロディ・ナヴァール

都会での家族との生活に疲れ、生まれ故郷に戻ってきた画家のキャンバス(ダニエル・オートゥイユ)。荒れ果てた庭の手入れに来てくれたのは、かつての幼なじみであるジャルダン(ジャン=ピエール・ダルッサン)だった。2人は自分たちの人生を語り合いながら、仕事に生きがいを見いだし、幸せで穏やかな日々を過ごすが……。(シネマトゥデイ)

深い緑色をした水の上に浮かぶボートの上の中年男性二人の弾ける笑顔とその水辺を囲む緑の輝きが印象的なチラシにずっと惹かれていた。
小学校の時のいたずら仲間だったキャンバスとジャルダンは小学校卒業後、全く別々の道を歩んできた。パリで成功した画家キャンバス、ずっと故郷カンパーニュで国鉄に勤務し退職後は庭師として働くジャルダンが再び出会うのは思い出深いカンパーニュ。二人は出会い、そして語り合い、新たな友情を育んでいく。様々な緑が美しいカンパーニュの自然の中で深まる絆。殆どの場面、二人の会話だけで成り立つこの作品、彼らの語る過去の出来事も思い出も彼らの会話から映像となり動き出す。
緑のバイクに乗ってやってくるジャルダンに、カーブのところから吠えて一緒に走っていく小さな犬、荒れていたキャンバスの庭はジャルダンの手により次第によみがえりすくすくと野菜が育っていく、そしてきらめく水面にボートを浮かべて釣りをする二人の少年のような笑顔・・・。小さなエピソードの積み重ねが忘れられない余韻を残す。しみじみとした静けさと温かい情感に満ちた二人、二人とその周りの人々との絆をカンパーニュの緑の風の中に感じて胸が一杯になる。
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キャラメル

2009-03-06 00:28:33 | 映画 か行
             
            ~街の小さなエステサロン
            ここは、美しさよりも
            大切なものがみつかる場所~
2007年/レバノン・フランス/96分
原題:Caramel
監督:ナディーン・ラバキー
出演:ナディーン・ラバキー、ヤスミーン・アル=マスリー、ジョアンナ・ムカルゼル、ジゼル・アウワード、アーデル・カラム、シハーム・ハッダード、アジーザ・セマアーン

「レバノンから届いた」ということで観てみたかったこの『キャラメル』。以前観て深く印象に残った「愛しきベイルート/アラブの歌姫」とはまた違うレバノンの一断面を見ることができて興味深かった。
⇒*レバノン共和国
女性がその女性らしさに磨きをかける場所、または女性がより輝くために通う場所エステサロンに働く女性とそこに通う女性たちが織りなすそれぞれの物語。その物語は登場する人の数だけあって、確かに舞台はレバノンのベイルートだけど人の暮らしの根底は同じなのだということに気付かされる。切なさと温かさが交錯して物語は進む。そこに描かれる愛、恋、失われていく若さへの嘆き、踏み出そうとした一歩を諦める苦い思いなどそれぞれの登場人物が抱える荷物の重さに共感を覚えていた。
何ということのない日常の積み重ねのようでいて、実は昨日と違う今日がある、さっきと違う今がある、ということの素晴らしさ~翻って、当たり前だと思っていた日常を積み重ねることの素晴らしさ、大変さを改めて思う
ここで描かれたベイルートの街ではキリスト教徒とイスラム教徒が実に自然に共に暮らしていることに胸打たれた。

しかし、エステサロンでのキャラメルの使い方には吃驚!!レバノンでは脱毛に使うのね・・・痛そうだったなぁ
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宮廷画家ゴヤは見た

2008-11-14 23:27:54 | 映画 か行
             
2006年/アメリカ/114分
原題:GOYA'S GHOSTS
監督:ミロス・フォアマン
出演:ハビエル・バルデム、ナタリー・ポートマン、ステラン・スカルスガルド、ランディ・クエイド、ホセ・ルイス・ゴメス、ミシェル・ロンズデール 、マベル・リベラ

観終わってからかなりの時間が経って、主人公のイネスと神父ロレンソを見ていたゴヤと彼の絵が一番印象に残っていることに気付いた。
とにかくゴヤの絵が画面一杯に何枚も映し出されることに感激~特にエンド・クレジットはまるで美術館にいるような気分。またまるで工場のような銅版画を作る過程も興味深かった。もう、それが見られただけで満足だった。日本で見る「プラド美術館展」じゃなくてマドリッドで彼の絵を見たいもんだなぁ~!
ゴヤは作品の中で激動の時代を上手く立ち回って生き抜いた人物として描かれている。でも上手く立ち回ることによってしか描きたいものを描き続けることは出来なかったのだろうとその時代背景がしっかり伝わることで納得できる。そしてそうすることで画家としての生涯をまっとうさせたんだということがひしひしと伝わってきた。聴力を失い、眼鏡をかけながら刑場の様子を一心不乱に描く姿に彼の絵に賭ける凄まじい気迫を感じる。

18世紀末から19世紀初頭の動乱のスペインの歴史がわかりやすく描かれ、重厚なエピソードが俳優の熱演に彩られて絢爛と展開する。しかし、作品全体の印象が淡々としたものに感じらてしまったのは何故だろう。
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グーグーだって猫である

2008-10-07 00:12:59 | 映画 か行
         *公式サイト
2008年/日本/116分
監督・脚本:犬童一心
原作:大島弓子
出演:小泉今日子、上野樹里、加瀬亮、林直次郎、伊阪達也、大島美幸、村上知子、黒沢かずこ、マーティ・フリードマン

ストーリー:麻子は吉祥寺に住む天才漫画家。愛猫サバを亡くした悲しみで漫画が描けなくなってしまう。そんなある日、麻子はちっちゃな子猫と出会う。麻子のつけた名前はグーグー。一緒にご飯食べて、散歩して、寝るという、幸せな毎日。(チラシより)

チラシがあまりにも可愛かったので表裏両方の画像をアップしてしまった。だってこれだとグーグーの体の模様がよくわかるでしょ?
鑑賞前には原作である「グーグーだって猫である」がどんな風に映画化されているのかということに興味津々だった。この作品、何度読んだことやら・・・!!

これはねえ、原作そのものとはちょっと違うけれど、原作者である漫画家・大島弓子さんに焦点を当て丁寧に描いた、すばらしい作品だった
吉祥寺を舞台に漫画家・小島麻子とアシスタント、友人そして猫たちの日常がのびやかにスクリーンの上に展開する。原作者の大島弓子の大写しになる絵、描き加えられていくペン・・・うっ、感激~!!そして、彼女の作品の中ではお馴染みのセーラー服を着て立っている井の頭公園の象の「はなこさん」にも会えたしね。
しみじみとした情感に満ち、この地球上に生きとし生けるもの全てがいとおしくなる、そんな心持ちになっている・・・。

この作品を観た翌日に入った本屋でまったく「折りしもそのときチャイコフスキーが」みたいな感じで目に飛び込んできた「グーグーだって猫である」の第4巻、嬉しくなって即お買い上げ~!
               
帯にはばっちり(?!)この映画の宣伝が~♪(3巻までの記事⇒こちら
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