心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

文楽と映画を楽しむ

2012-11-04 09:12:55 | Weblog
 11月に入って、愛犬ゴンタの小屋のまわりには、落葉したケヤキの葉っぱが目立ちます。そんな秋の日曜日、明るい快晴の空を眺めながら、きょうは舘野泉さんのCD「ひまわりの海」(セヴラック:ピアノ曲集)を聴いています。さあて、ブログの更新でもしますか。
 そうそう、先週の日曜日、家内が陶芸仲間のおじさんから花梨(かりん)の実を二個もらってきました。固くて食べれそうにない実ですが、嗅いでみると微かに芳しい香りが漂います。さっそくネットで調べてみると、花梨とは「バラ科の落葉高木で、果実は果糖、ビタミンC、リンゴ酸、クエン酸、タンニン、アミグダリンなどを含み、咳や痰など喉の炎症に効く」のだと。生食には適さず、砂糖漬けや果実酒に加工すると良い、とも。禁煙して12年、風邪でもないのに時々咳き込むことがあるので、砂糖漬けにしてもらうことにしました。

 きのうは全国的に祝日でした。「文化の日」です。我が家では、遅れ馳せながら36回目の結婚記念のお祝いを兼ねて、二人でお出かけでした。行先は、な、なんと国立文楽劇場でした。今夏、初めて「曾根崎心中」を見て気に入ったのでしょう。こっそりチケットを用意してくれていました。今回の演目は「仮名手本忠臣蔵」です。赤穂四十七士の仇討事件を題材に、当時の幕府の検閲を逃れるために太平記(室町時代)の世界に移して作られた義士劇でした。公演初日ということもあり、おおぜいの観客で賑わっていました。外国人の姿もあちらこちらに。英語解説のイヤホンをつけてのご鑑賞です。かく言う日本人の私たちも、舞台上に映し出される台詞を追いながらの鑑賞でした。

 私たちが入場したのは午後4時半に始まる「第二部」で、七段の「祇園一力茶屋の段」、八段の「道行旅路の嫁入」、九段の「雪転しの段」「山科閑居の段」、そして大詰めの「花水橋引揚の段」でした。文楽を見た後で食事でもして帰ろうと思っていたのですが、な、なんと終演時刻が午後9時とあります。実は「第一部」は午前10時半から始まっていたようでした。初めて知りました。夕食は25分間の休憩時間に劇場内で売っていたお弁当(柿の葉寿司)で済ませました。チケット代は各部一等席5,800円(ちなみに2等席は2,300円)。一二部通しだと9,800円という設定でした。和服姿の熱烈なファンの方々は、朝から晩まで一日中、文楽を楽しんでいらっしゃったのです。お隣の方は、わざわざ東京からお出かけのようでした。
 文楽素人の私たちです。前回来たときは後ろの席でしたから、人形使の方々に目が行ってしまいましたが、今回は正面中央8列目でしたから、人形の動作・表情が生き生きと伝わってきました。人形、義太夫、三味線によって繰り広げられる人形劇の世界。日本の「歌劇」なんでしょう。4時間あまりの間、退屈することはありませんでした。

 さて、実はこの日、もう一カ所立ち寄ったところがありました。欲張りにも映画館です。この夏、北海道は礼文島の香深港のターミナルで利尻島行きの定期連絡船を待っていたとき、吉永小百合主演の映画「北のカナリアたち」の大きなポスターが目にとまりました。11月3日全国ロードショーとありました。ロケ地は私たちが旅した稚内、利尻島、礼文島、豊富でした。ふだんあまり映画を見ない私ですが、珍しく「時間があったら見に行こうか」と話していました。
 それ以来忘れていましたが、な、なんと、2日金曜日の夜、夕刊を眺めていたら「北のカナリアたち」の全面広告に気づきました。さっそく家内に「文楽は何時から?」と尋ねると「午後4時半から」というので、「じゃあ、その前に映画を見に行こうか」とお誘いすると、映画大好きの家内は即刻オッケーでした。
 国立文楽劇場のある日本橋から徒歩で行ける範囲にあったのは、「なんばパークスシネマ」でした。昼の12時10分上映をめざしました。到着して驚いたのは、その賑わいです。レンタルやデジタルの時代、映画館はかつての賑わいはないだろうと思っていたのですが、その変貌ぶりには驚きました。ビルの8階に11のシアターがあって、60歳以上は千円のサービス料金のためか、老若男女、年齢層もさまざまでした。ビールとポップコーンを手にシアター内に入りました。
 映画の方は、北の海に象徴されるように、少し重たい内容でしたが、大画面と大音量のためか否応なしに映像空間のなかに身を置くことになります。.....「唄を忘れたカナリアは 後の山に捨てましょうか。いえいえ それはなりませんぬ....」。西條八十の「カナリヤ」を、島の子供たちが歌う最後のシーンには、心打たれるものがありました。

 映画と文楽のハシゴって大丈夫かなあという微かな不安。1日で二つのことを済ませようという欲張りなスケジュールでしたが、頭の切り替えが早いのが得意な夫婦です。全く問題はありませんでした。映画も初日、文楽も初日。楽しい結婚記念日となりました。
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