当たり前のような話だけど,そんなメタ解析がカナダから報告された.研究の目的は成人における脳梗塞後の嚥下障害の頻度と,それに伴う肺炎の発生頻度を知ることである.対象となった論文はMedlineなどのデータベースに1966年から2005年5月までに登録された論文で,キーワードは"cerebrovascular disorders","deglutition disorders(嚥下障害)","humans"の3つを掛け合わせた.ヒットした277論文中peer reviewされてないものやデータが不十分なもの,方法に問題があるものを除外し,残った24論文(当然prospective study)を用いてメタ解析を行っている.
まず脳梗塞後の嚥下障害の頻度については,これも言われてみれば当然のことだが,嚥下障害のscreeningの方法によって変わってくる.方法を大きく3つに分類すると,① cursory screening technique,すなわち水飲み試験などの簡便な方法を用いると37-45%,② clinical testing,すなわち喉頭咳嗽反射などより詳しい方法を用いると51%-55%,③ 嚥下造影videofluoroscopy(VF)や内視鏡を用いて評価すると64%-78%という結果だった.上記データは脳梗塞の病変部位やscreening testを行う時期を考慮に入れていないが,病変部位別にみると嚥下障害はhemispheric strokeでは頻度は少なく,脳幹梗塞では高い.さて一番知りたい嚥下障害を認める症例が肺炎を起こす相対リスクは3.17(95% CI, 2.07-4.87)で,VF・内視鏡にて誤嚥を確認した症例での相対リスクは11.56(95% CI, 3.36-39.77)という結果であった.やはり脳梗塞後の嚥下障害の頻度は高く,嚥下障害や誤嚥を認めれば肺炎のリスクが高いという結果である.
この論文を最初に見たとき,「何で今更,こんな研究を・・・」と思ったのだが,よく読んでみるといろいろ考えさせられる.例えば嚥下障害の有無で,どれだけ肺炎というイベント発生率に変化が生じるのか考えたこともなかった(案外,こういった当たり前のことのエビデンスがきちんと不十分だったりする).また嚥下障害の簡便なscreening testとして水飲み試験が一般的であることが分かったが,それにしても用いる水の量は10ccという論文から150ccまでと様々であった.ちなみに本邦の脳卒中ガイドラインで何を推奨しているかというと「タルタル酸吸入を用いた喉頭咳嗽反射による嚥下障害スクリーニングテスト」がグレードBとして最初に記載されていた(でもそんなtestやったことがない).ベッドサイドでの嚥下機能のスクリーニングをどのような手順で行うのか各病棟で再確認してみても良いのかもしれない.
Stroke 36; 2756-2763, 2005
追伸;最近,アクセス数がかなり増えてきて,匿名で好き勝手なことを書いていることがだんだん無責任かなと感じるようになってきた(そうかと言って実名を出す気も起こらない).ある日,突然,やめてしまうかもしれないけど,その際はご容赦のほどを.どうぞ私の書き込みも批判的に読んでください.
まず脳梗塞後の嚥下障害の頻度については,これも言われてみれば当然のことだが,嚥下障害のscreeningの方法によって変わってくる.方法を大きく3つに分類すると,① cursory screening technique,すなわち水飲み試験などの簡便な方法を用いると37-45%,② clinical testing,すなわち喉頭咳嗽反射などより詳しい方法を用いると51%-55%,③ 嚥下造影videofluoroscopy(VF)や内視鏡を用いて評価すると64%-78%という結果だった.上記データは脳梗塞の病変部位やscreening testを行う時期を考慮に入れていないが,病変部位別にみると嚥下障害はhemispheric strokeでは頻度は少なく,脳幹梗塞では高い.さて一番知りたい嚥下障害を認める症例が肺炎を起こす相対リスクは3.17(95% CI, 2.07-4.87)で,VF・内視鏡にて誤嚥を確認した症例での相対リスクは11.56(95% CI, 3.36-39.77)という結果であった.やはり脳梗塞後の嚥下障害の頻度は高く,嚥下障害や誤嚥を認めれば肺炎のリスクが高いという結果である.
この論文を最初に見たとき,「何で今更,こんな研究を・・・」と思ったのだが,よく読んでみるといろいろ考えさせられる.例えば嚥下障害の有無で,どれだけ肺炎というイベント発生率に変化が生じるのか考えたこともなかった(案外,こういった当たり前のことのエビデンスがきちんと不十分だったりする).また嚥下障害の簡便なscreening testとして水飲み試験が一般的であることが分かったが,それにしても用いる水の量は10ccという論文から150ccまでと様々であった.ちなみに本邦の脳卒中ガイドラインで何を推奨しているかというと「タルタル酸吸入を用いた喉頭咳嗽反射による嚥下障害スクリーニングテスト」がグレードBとして最初に記載されていた(でもそんなtestやったことがない).ベッドサイドでの嚥下機能のスクリーニングをどのような手順で行うのか各病棟で再確認してみても良いのかもしれない.
Stroke 36; 2756-2763, 2005
追伸;最近,アクセス数がかなり増えてきて,匿名で好き勝手なことを書いていることがだんだん無責任かなと感じるようになってきた(そうかと言って実名を出す気も起こらない).ある日,突然,やめてしまうかもしれないけど,その際はご容赦のほどを.どうぞ私の書き込みも批判的に読んでください.
嚥下の評価に関してはうちでは10mlの水を飲ませて、評価しています。神経内科病棟ではNurseのほうに浸透していて、そろそろ食事を開始しようというときに評価してもらいそれによりゼリー食を開始しています。
考えてしまいます。また脳卒中ガイドラインではアイスマッサージなどの嚥下リハビリへの評価が低いですが、これはそのようなevidenceがないからなのでしょうか。
ちなみに14年目なのに勉強しない神経内科医です。話はさらにそれますが「二人日和」というALSに冒された夫婦の映画、見てみませんか。
「evidenceとして認めるほど実践・解析されていない」
と言うことだろうと思うのですがいかがでしょう?
稀な疾患・今後使われることになるだろう治療法など、いずれもevidenceとして蓄積されるまでに
相当の時間がかかるでしょうから。
駆け出しの神経内科医さん;応援ありがとうございます.もう少し続けてみます.
Tarashiさん・say*3さん;ご指摘の通り,嚥下リハビリへの評価が低いのはevidenceが不十分であること,その原因としてevidenceが確立するほど実践・解析されていないということなのだと思います.嚥下障害の診断・リハビリについては非常に重要なテーマなので病棟がチームとなって取り組まねばなりませんね.
あと「二人日和」という映画はこれから公開のようですね.映画を見るのは大好きですし,ぜひ見てみたいと思います.