Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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神経内科医における燃え尽き症候群@米国神経学会(ボストン)

2017年04月29日 | 医学と医療
米国神経学会(AAN)年次総会に参加した.例年と雰囲気が異なる印象を持った.Live wellと名付けられた医師のQOL向上セミナーや,リーダーシップ講習が学会場のあちらこちらで行われていた(写真).以前は口演とポスターが学会の主役の印象であったが,教育講演が聴講無料となり,その割合も増えて,より重視されていた.学術重視から,QOLやキャリア形成重視の方向にシフトした印象を受けた.全員講義(プレナリー)もいろいろ刺激を受けたが,もっとも印象に残ったものは,AAN会長のTerrence Cascino先生の講演であった.講演の最後には,胸が一杯になってしまった.

Cascino先生は,まず,AAN会員は非常に多様性(diversity)に富むが,安全で質の高い医療を届けること,望ましい医師・患者関係を維持すること等,共有すべき価値観があることを述べた.しかしながら,米国の神経内科医は,一所懸命にやってきたにも関わらず,予期しない状況に置かれていると語った.燃え尽き症候群が非常に多いということだ.米国の神経内科医は,他の診療科医と比較し,ワーク・ライフバランスの満足感,そして燃え尽き症候群の頻度のいずれもが非常に悪いのだ(図:Shanafelt et al. Mayo Clin Proc 90; 1600-1613, 2015).

【AANによる燃え尽き症候群の調査論文】
AANは,2016年,米国人神経内科医4127名に対し,燃え尽き症候群の調査を行った.回答者の平均年齢は51歳,65.3%が男性であった.なんと約60%の回答者は少なくとも1つ以上の燃え尽き症候群の症状を認めていた.リスク上昇因子は,1週間における勤務時間,夜間のオンコール回数,外来患者数,事務仕事の量であった.逆にリスク低下因子は,医療スタッフによる効果的なサポート,仕事に対するオートノミー,仕事に意義を見出すこと,年齢が高いこと,てんかん診療医であった(Busis et al. Neurology 88;1-12, 2017).ちなみに中国からも報告があり,神経内科医のバーンアウト率は53%とやはり高値で,なんと58%が医師になったことを後悔していた(Zhou et al. Neurology 2017 Apr 5.)

【燃え尽き症候群とは何か?】
燃え尽き症候群の定義は(1)仕事に対する熱意の消失,(2)患者さんを人でなく,物として見るようになること,(3)自身のキャリアの満足感の喪失から成り立つものとされている.そしてこのいずれかに含まれる22項目の質問表を用いて評価が行われた.燃え尽き症候群は,うつや不安につながり,最悪の場合,薬物依存や自殺率の増加を招く.また診療にも影響を及ぼし,診療の質やケアの低下,患者さんに対する共感(empathy)の欠如をもたらすことが分かっている.

【なぜ神経内科医に,燃え尽き症候群が多いのか?】
2013年,AANは,米国の多くの州において,需要が供給を上回っていること,そして2025年までにその需要はさらに高くなると予測している.つまり個々の神経内科医の仕事量の増加が加速することを意味する.これは高齢化に従い,認知症,脳卒中,神経変性疾患などが増加することや,電子カルテや保険などの事務的な仕事が増加していることを考えれば容易に納得がいく.また別の論文には,神経内科を選ぶ人間の性格が燃え尽き症候群に影響しているのだろうと書かれていた.つまり,病歴や診察をじっくり行うことが好きで神経内科を選んだのに,それが行いにくくなっている状況に,大きなストレスを感じているというのだ.確かに自分も,電子カルテの打ち込みにストレスに感じている.患者さんの目を見て話しにくくなり,コミュニケーションがとりにくい.このため意識して打ち込みをやめて患者さんの目を見るが,その間のやり取りを忘れてしまったり,迫る次の予約枠の時間が気になってしまう.私が若い頃に,教授の外来診察で行われた「書き番(いわゆる筆記係)」でもいてくれると良いのだが,それが難しければ,せめてiPhoneのような音声入力ができないものかと思う.

【燃え尽き症候群にどう対応すべきか?】
個人レベル,病院レベル,国家レベルで行うべきことがあるとCascino会長は述べた.医師がしなくてもよい仕事を減らすこと,限られた時間で診療をしなければならないプレッシャーを除くよう診療システムを再構築すること,キャリアアップのためのメンタリング・カウンセリングを充実させること,達成感を認識する仕組みを作ること,それをサポートする仕組みを作ることなど,レジリエンス(自発的治癒力)の向上をはかることが有用だろうと考察されていた.おそらくその姿勢が現れたのが,今回の学会なのだろう.

【Cascino会長のことば】
最後にCascino会長は次のように述べた.「きっとこの状況を改善できる.その理由は,第1に賢明で創造的な神経内科医がいることだ,第2に皆が神経内科を愛していることだ,そして第3に患者さんが我々を必要としているためだ」「しかし何もしなければ失敗する.我々は立ち上がり,正々堂々と意見を述べ,自分自身のため,そして患者さんに質の高い医療を届けるために戦わねばならない
本当に心に響く講演であった.以下に講演の最後のフレーズをメモしておく.

“I know one thing. If we don't try, we will likely fail. So what do we need to do? We need to stand up and speak out, we need to fight for ourselves and fight for the patients and fight for the ability to deliver high-quality care. My last words as a president, we must stand up and speak out, whether we are the US or international neurologist, adult or child neurologist, academic or private practitioner, subspecialist or generalist, if we stick together, we can I firmly believe the kind of future we want for our patients and for our profession. I want you to know it's been the greatest honor of my professional life.”



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Phineas Gageの頭蓋骨と対面する@ハーバード大学

2017年04月26日 | 医学と医療
Phineas Gage(図A)の事件,いわゆる「アメリカの鉄梃事件 (the American Crowbar Case)」は,神経学や精神医学を学ぶ過程で,多くの人が耳にする有名な逸話である.1848年,ペリーの黒船来航の5年前,鉄道建築技術者の職長であったPhineas Gage(25歳)はアメリカ合衆国Vermont 州の小さな町で,岩盤を爆破する仕事をしていた.爆薬を仕掛けるために,岩に穴を掘り,火薬等入れて,鉄の突き棒で突き固める作業をしていた.このとき,突き棒が岩にぶつかって発火し,ダイナマイトは爆発した.彼は30メートル近く吹き飛ばされたが,その際,長さ109 cm,太さ 3 cm,重さ6 kgもの鉄棒が,彼の下顎から頭蓋底を貫通した.診察を行ったDr. Harlowは「頭頂部には…深い陥凹がある.長さ2インチ,幅は1インチから1インチ半で,直下に脳血管の拍動を触れる.顔面の左半側に部分麻痺」と記載している.しかし事故後,彼の意識はしっかりしており,支えられれば歩くこともできた.その後,一時,頭蓋内圧亢進のため昏睡状態になったが,Dr. Harlowの治療を受け,10 週間ほどで退院した.その後,7ヶ月ほど静養し,もとの仕事に復帰したが,以前のような役割を果たすことはできなかった.きまぐれで,非礼で,下品で頑固,優柔不断となり,将来の行動の計画も立てられなかったという.周囲から「彼はもはやGageではない」と評された.

鉄道建築の仕事に復帰できず,いくつかの仕事を行ったあと,最終的に馬車の御者と飼育係になった.その後,1860年2月,初めて痙攣を経験した.後遺症としてのてんかん発作は次第に悪化し,5月21日死亡した.剖検は行われず,脳は存在しないが,後にお墓が掘り起こされ,頭骸骨(図B)と事故の原因となった鉄棒はDr. Harlowの元に送られた.

この症例は19世紀当時の精神と脳に関する議論,とくに脳の機能分化に関する議論に影響を及ぼした.脳の特定の部位の損傷が,人格に影響を及ぼしうることを示唆した初めての事例と考えられている.前述のように神経学や精神医学でしばしば言及されるが,そのインパクトから歌や演劇,テレビドラマでも取り上げられ,その中では過度に誇張されたり,事実と反することが記されたりしたようだ.

近年,Phineas Gageに関するいくつかのことが分かってきた.2009年に,彼の肖像写真が発見された(図A).この写真の持ち主は,長年の間,銛を手にしたクジラ獲りの漁師を写したものだと考えていた.しかし銛ではなく,彼の脳を突き刺した鉄棒であった!片眼を閉じ,傷痕ははっきり見え,「身だしなみは良く,自信ありげで堂々とすらしている」という過去の記載に合致するものであった.

また科学の進歩は,彼が受けた脳の損傷について徐々に明らかにしていった.鉄棒により前頭葉が傷害を受けたと推定されてきたが,正確には前頭葉のどの部位が傷害されたのかは不明であった.1994年,米国アイオア大学の Damasio らは,保管されていたGageの頭蓋骨と標準的な脳のMRI画像とを重ね合わせ,鉄棒の位置を推定し(図C),前頭葉の眼窩面(前頭眼窩回)と前頭葉の先端部(前頭極)を中心とする損傷があったと,Science誌に報告した (Damasio et al. Science 264, 1102-1105,1994).

2012年,UCLAのVan Hornらは,拡散強調画像を用いた白質線維ネットワークに注目した検討を行った.25-36歳の男性のデータを集積し,それを用いて,大脳皮質と白質の傷害部位を推測した.この結果,鉄棒による直接の傷害は左前頭葉に限局するものの,その他の領域とのネットワークの傷害は広範であったことを示し,長期に渡り行動変化がみられた原因であると考察した(PLoS One. 2012;7(5):e37454).

さらにロンドンのde Schottenらは,129名の健常者の拡散トモグラフィーから,精密な白質コネクションの地図を作成した.この結果,傷害を受けた脳の領域(図D)は病変から離れた領域にも影響を及ぼすこと,具体的には感情や意思決定に関わる領域(図E)に障害が生じたものと推測された.コネクトーム解析はこの歴史的な症例を,離断症候群の1例として再評価することを可能にしたのだ(Cerebral Cortex 25;4812-4827, 2015).現在,Phineas Gageの頭蓋骨は,その肖像写真と鉄棒とともに,ハーバード大学図書館4階のWarren Anatomical Museumに展示されている.写真付きの身分証明書を提示し,署名をすれば図書館内に入り,見学することができる.同じ階にはハーバード大学のトランスレーショナル・リサーチを推進するHarvard Catalystがある.

Warren Anatomical Museum





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純粋自律神経不全症は,多系統萎縮症,パーキンソン病の病態抑止療法のターゲットである!

2017年04月19日 | 脊髄小脳変性症
純粋自律神経不全性(pure autonomic failure; PAF)は,多系統萎縮症(MSA),パーキンソン病/レビー小体型認知症(PD/DLB)を発症(conversion)しうることが知られている.もしPAFの段階で,このconversionを予測できれば,MSAやPD/DLBのごく早期(premotor phase)での診断が可能になり,病態抑止療法の実現につながるかもしれない.今回,米国Mayo Clinicが,2001年から2011年にかけての後方視的研究の結果,PAF症例のうち,いつ,どの程度,どの疾患にconversionするかを検討した論文を報告した.

対象は,起立性低血圧(30/15 mmHg以上の低下)を認め,末梢神経障害やAdie緊張性瞳孔等の合併,免疫療法への反応,中枢神経変性の合併,傍腫瘍症候群やシェーグレン症候群を示唆する抗体陽性などを除外したpossible PAF症例とし,最終解析は3年間以上経過観察できた症例に限定した.自律神経機能の評価は膀胱機能,睡眠(レム睡眠行動障害,睡眠時無呼吸)のほか,著者のLow PAが1993年に開発した総合的自律神経機能評価法Composite Autonomic Severity Score(CASS;自律神経機能検査第4版に詳しい)や温度発汗試験(Thermoregulatory sweat test; TST)を行った.ちなみにCASSは,大別するとValsalva法を用いた血圧変化,定量的軸索反射性発刊試験(QSART),呼吸性心拍変動検査,起立試験の4つを行う.検査の40%をadrenergic 機能,30%ずつを末梢性発汗(sudomotor)機能,cardiovagal機能に配分できる.またパーキンソニズムとも小脳症状とも判断のつかない軽微な運動徴候(歩行障害や振戦など)の有無も確認した.

さて結果であるが,318名がpossible PAFの基準を満たし,経過観察が3年未満のケースや軽微な運動徴候に関する記載がないものを除外すると79名が最終解析された(図).このうち,41名が症状のconversionがないstable PAFであったが,37名はconversionし,内訳はMSAが22名(59%)と最も多く,PD/DLBは11名(30%),4名は明らかな運動徴候を呈したものの両者の診断基準を満たさなかった.MSAへのconversionは中央値2.4年(四分位範囲1.9-3.3年)に生じ,大半がPAFの発症3年以内であった.一方,PD/DLBは中央値3.9年(4.2-8.4)でより長かった.Conversion率は,possible PAFを分母にすると12%(37/318名),3年以上経過したPAFを分母にすると47%(37/79名)になる.以上より, MSAがPD/DLBの2倍の頻度であったが,conversionまでの期間の長短が影響している可能性もある.

つぎにMSAへのconversionの危険因子の検討が行われた.MSA群とstable PAF群が,PAFと診断された時期の臨床像を比較すると,MSA群では重度膀胱障害が多く,総CASSスコア低値,cardiovagal CASSスコア低値,発汗異常の中枢・交感神経節前パターン,坐位および起立時のノルエピネフリン値高値という特徴が見られた.軽微な運動徴候もMSA群で多かった(32% vs. 12%).

一方,PD/DLB群はstable PAF群と比較して,総CASS スコア低値,adrenergic CASSスコア低値,末梢性発汗機能スコア低値,起立時のノルエピネフリン高値,高齢を認め,MSAとは異なっていた.軽微な運動徴候も多かった.

以上より,2つの疾患ではconversionの危険因子が異なるため,両者の発症の鑑別が可能となるものと考えられ,以下の2つのスコアが作成された.

MSA conversion score(0~5点)
1)CASS vagal score < 2
2) 神経節前性発汗障害パターン
3) 重症膀胱障害(尿失禁,尿閉,カテーテル留置)
4) 臥位ノルエピネフリン > 100 pg/mL
5) 軽微な運動徴候
➔ 0ないし1点でconversionの可能性は低い(stable PAF)
➔ 3点以上でMSAへのconversionの可能性は高い

PD/DLB conversion score(0~3点)
1) CASS total score < 7
2) 起立時ノルエピネフリン上昇 > 65 pg/mL
3) 軽微な運動徴候
➔ 0ないし1点でconversionの可能性は低い(stable PAF)
➔ 2点以上でPDへのconversionの可能性は高い

本研究の問題点としては,単一施設の評価であること,後方視的研究であること,PAFの希少性を考えると十分な症例と考えられるものの,オッズ比,感度,特異度を求めるにはまだ不足していることが挙げられる.

以上,PAFでは12%~47%の症例が診断から数年の間にconversionすること,MSAではより早期であること,特定の危険因子の組み合わせにより,高い感度・特異性を持ってconversionの予見が可能であることが明らかになった.今回の知見は,RBDについでPAFも,MSAやPD/DLBの病態抑止療法の標的になることを示している.その意味で非常に大きな成果である.一方,conversionを予見するためこれだけの自律神経機能検査をきちんと行うのはなかなか大変だと思った方も多いのではないだろうか.症例数にしても,これだけの検査を長期にわたり行ってきたことに関しても,さすがMayo Clinicと脱帽する論文であった.

Singer W et al. Pure Autonomic Failure: predictor of conversion to clinical CNS involvement. Neurology 88;1129-36, 2017




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おたまじゃくしの目,見たことありますか?

2017年04月14日 | 医学と医療
診察中,「あれっ,瞳孔が歪んでいる」と思ったことがある.過去に虹彩炎でも起こし癒着したのかなと思い,深く考えることもしなかった.しかしTadpole pupil(おたまじゃくしの目)とよばれる現象があることを初めて知って考えを改めた.これは,1983年にThompsonらが報告した所見で,瞳孔が「おたまじゃくし状」に一時的に変形し,もとに戻るというものだ.原著では,脱神経した瞳孔散大筋の一部分だけが収縮(スパスム)し,瞳孔の一部のみ散大するため,おたまじゃくしの尾のような形になると考察している(図下段).

今回,JAMA Neurology誌に報告された症例はかわいい2歳の女の子.日中,瞳孔は正円で左右同大だが,朝起きた時に右目が「おたまじゃくし」になる(写真上左).起きて10分後には改善しはじめ(写真上中),40分後には正円形になる(写真上右).この女の子は生下時に右側の縮瞳と眼瞼下垂を認めていた.とくに外傷や頭痛の既往はなかったが,0.5%アプラクロニジン(アドレナリン受容体アゴニスト)を用いた瞳孔試験を行うと,右ホルネル症候群が確認された.MRIでは交感神経系の障害をきたす器質性疾患は認めなかった.

この機序をどう考えるか?Tadpole pupilは嚥下や運動など交感神経活動が亢進する状況で引き起こされることが知られている.著者らはコルチゾールが影響した可能性を考えている.コルゾールは起床時に最も高い値を示し,時間の経過とともに低下する.このため起床時にコルゾールは交感神経を刺激し,それが瞳孔散大筋の一部を収縮させるが,コルチゾール低下とともにもとに戻るのではないかという仮説である.

Tadpole pupilはホルネル症候群のほか,Adie緊張性瞳孔(内眼筋への副交感神経支配の症候性節後脱神経)にも合併しうる.また良性間欠性片眼性瞳孔散大というほぼTadpole pupilと同義の症候を呈した19例(全例女性)の検討では,月2~3回生じ,持続時間は12時間,病因は単一ではないと考えられるものの,14名が片頭痛の既往があり,発作時には視界のぼやけ15名,頭痛9名,眼窩痛を5名で認めたと報告されている(Jacobson 1995).よって片頭痛が基礎疾患にないか確認する必要がある.

一方,縮瞳する時に,瞳孔の一部が収縮しなくてもTadpole pupilと似た形になりうる.平山先生の「神経症候学」の瞳孔の項目には,不正円形瞳孔として,虹彩の癒着があるような虹彩炎,虹彩毛様体炎,そしてベーチェット病,Vogt-小柳-原田病を,また楕円瞳孔として,中脳の重篤な脳血管障害や神経梅毒,DRPLAを紹介している.瞳孔の形も奥が深く,幾つかの疾患を疑うヒントになることを学ぶことができた.

Thompson HS et al. Tadpole-shaped pupils caused by segmental spasm of the iris dilator muscle. Am J Ophthalmol. 1983;96:467-77.

Aggarwal K et al. The Tadpole Pupil. JAMA Neurol. 2017;74:481.


Jacobson DM. Benign episodic unilateral mydriasis. Clinical characteristics. Ophthalmology. 1995;102:1623-7.


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多系統萎縮症の睡眠関連呼吸障害は約3割の症例で自然に軽減する

2017年04月06日 | 脊髄小脳変性症
多系統萎縮症(MSA)は高頻度に,睡眠時無呼吸症候群などの「睡眠関連呼吸障害(Sleep-related breathing disorders; SRBD)」を呈するが,その経時的な変化についてはほとんど分かっていなかった.新潟大学医歯学総合病院呼吸器内科と神経内科は,2001年から2015年までに経験したMSA症例のうち,複数回,SRBDに関する検討を行った症例を対象とし,その経時的変化と,SRBDの増悪を予見する因子について検討を行った.その結果をSleep Medicine誌に報告したのでご紹介したい.

本研究の対象は,いびきや喉頭喘鳴の精査のため,当科に入院したMSA症例のうち,持続的陽圧換気療法を未導入で,かつ2回以上ポリソムノグラフィー(PSG)を行った連続症例とした.初回および最終の無呼吸低呼吸指数(AHI)の変化により,増悪群と改善群に分類し,両群を比較し,SRBDの増悪を予見する因子を前方視的に検討した.

さて結果であるが,対象は24名(MSA-C 21名,MSA-P 3名)で,初回PSGまでの期間は3.1±1.7年であった.初回および最終のPSGの間隔は2.4±1.5年で,その間に2.5±0.6回のPSGが施行された.この間,PaO2と%VC(肺活量)は有意に低下し,AHIは19.4±22.8/hから34.4±30.1/hに増悪した(P=0.006)初回検査時は全例,閉塞型無呼吸であったが(図の●),経過中,3名(13%)が中枢型(図の○)に変化し,いずれの症例もAHIは増悪した(1例は急激に増悪した).また中枢型無呼吸への変化は,発症から3-4年という比較的早期でも認められた.

増悪群は17名(71%)で,無治療での改善例(改善群)が7名(29%)に認められた(体重の影響はなく,BMIが増加してもAHIが改善する症例があった).両群間の比較では,年齢,罹病期間,病型,初回検査時のBMI,疾患重症度(UMSARS),血液ガス,呼吸機能,PSG所見に差はなく,唯一,増悪群で発症から初回PSGを行うまでの期間が短かった(2.7±1.5年対4.2±1.7年;P=0.037)

結論として,(1)MSAに伴うSRBDは経時的に増悪するものの,約3割の症例では自然経過で改善しうること,(2)発症から初回PSGを行うまでの期間が短いこと,すなわち早期からいびき・喉頭喘鳴を呈する症例では,持続してSRBDの増悪が進行することを初めて明らかにした.

Ohshima Y, Nakayama H, Matsuyama N, Hokari S, Sakagami T, Sato T, Koya T, Takahashi T, Kikuchi T, Nishizawa M and Shimohata T. Natural course and potential prognostic factors for sleep-disordered breathing in multiple system atrophy. Sleep Med 34; 13-17, 2017.


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