Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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第42回 新潟神経学夏期セミナーのご案内

2012年06月21日 | その他
来る8月3日(金)~5日(日),新潟神経学夏期セミナーが開催されます.
今回のセミナーのテーマは「脳は変化する-発生から可塑性まで-」「睡眠・リズム障害と神経疾患」です.それぞれ4日と5日に行われます.
当研究所に加え,国内の最先端の研究に触れることができる絶好の機会となります.

また医学生や研修医の方など,当科に興味がある方は8月3日(金)の「脳研レジデント(臨床)体験コース」にぜひご参加下さい.
オープンキャンパス的に脳研究所を1日で御覧いただけます.
午前中は,脳神経外科(手術見学),神経内科(病棟見学・回診)体験.午後は神経病理(ブレーンカッティング,検鏡,検討会),および基礎研究を予定しています.
本コースへ参加される方は,交通費・宿泊費の支給ができますので,下記リンクを御覧ください.

期日:8月3日(金)~5日(日)
場所:新潟大学脳研究所 統合脳機能研究センター(6F)セミナーホール
主催:新潟大学脳研究所 新潟脳神経研究会


【セミナーのプログラム】
4日(土)セミナー: 脳は変化する-発生から可塑性まで-

脳の発生における神経幹細胞の運命決定:後藤由季子(東大・分生研)
胎児期脳発生と生後脳発達について:竹林浩秀(新潟大・医)
サイトカインと神経発達障害:加藤泰介(新潟大・脳研)
高次視覚野の機能獲得機構:任海 学(新潟大・脳研)
脳・脊髄損傷後の機能代償戦略:伊佐 正 (生理研)

5日(日)セミナー: 睡眠・リズム障害と神経疾患

脳の時計とその異常:岡村 均 (京大・薬)
睡眠時無呼吸と呼吸中枢:中山秀章(新潟大・医)
脳梗塞と睡眠・覚醒異常:宮本雅之(獨協医大)
中枢神経疾患におけるオレキシン値の検討:神林 崇(秋田大・医)
多系統萎縮症の睡眠呼吸障害:下畑享良(新潟大・脳研)

ご参加お待ちしています!


第42回(2012)新潟神経学夏期セミナーのご案内


昨年の様子(写真)

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明るく生きるパーキンソン病患者のホームページ "APPLE" のご紹介

2012年06月19日 | パーキンソン病
以前,若年性パーキンソニズム患者さんにおける妊娠・出産について,私どもの経験(症例報告)をご紹介する記事を本ブログに掲載しました.

若年性パーキンソニズムにおける妊娠・出産の経験

この記事をご覧になられた皮膚科医で「明るく生きるパーキンソン病患者のホームページ(APPLE)」の運営に関わっておられる岡田芳子先生から情報をいただきました.ご本人の了解を得て,ご紹介します.

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若年患者の妊娠出産についてAPPLE内で取り上げていますので、ご参考になればと思いご紹介致します。

妊娠・出産

また「女性とパーキンソン病」としてEPDA(ヨーロッパパーキンソン病協会)の記事の訳を掲載しています。

女性とパーキンソン病

妊娠出産についてはそのほかにも掲示板で何回も話題になっています。

また生理周期とパーキンソン病の症状の変動については若年患者はほとんどが知っていることです。

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とても参考になりました.APPLEはパーキンソン病患者さんの情報サイトで,岡田先生を含む若年性パーキンソン病患者さんがお作りになられたサイトです.
情報が少なかった時期には外国ページの翻訳許可をもらい記事を作成したそうで,それらの記事はいまも有効に活用されているそうです.
APPLEは情報の宝庫といえるページですので,ぜひ御覧ください.


明るく生きるパーキンソン病患者のホームページ(APPLE)

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新しいパーキンソン病治療薬の情報

2012年06月17日 | パーキンソン病
今後,期待されているパーキンソン病治療薬(新薬)について勉強する機会があったので,ここで簡潔にまとめてみたい.

1.2012年に発売予定のパーキンソン病治療薬

1)アポカイン®皮下注30mg
アポモルヒネ塩酸塩水和物(商品名アポカイン®皮下注30mg)は,本年5月29日に薬価収載された薬剤.1993年に英国で承認されて以降,世界20カ国以上で臨床使用されている.非麦角系ドパミンアゴニストで,患者自身が専用の注入器を用いて自己注射する日本初のパーキンソン病治療用注射剤.オフ症状(薬剤の効果の持続時間が短くなり,パーキンソン症状が出現すること)を,注射後20分ほどで速やかに改善することから,オフ症状を一時的に改善するという「レスキュー薬」としての使い方が期待されている.ただし,注射後120分で効果が消失する(短時間作用型製剤である).内服薬剤をいろいろ調整してもオフ症状のコントロールが困難となり,脳深部刺激療法の検討が必要といった時期において選択肢となる薬剤である.海外のWEBサイトで様子を見ることができる.

2)レキップ®CR錠
非麦角系ドパミンアゴニスト徐放剤としては,すでにプラミペキソール徐放剤(ミラペックス®LA錠剤)が2011年4月に国内で上市されているが,ロピニロール徐放剤も海外ではすでに販売され,日本でも本年度中の承認,販売されるものと期待されている.1日1回の服用で安定した血中濃度推移を示すことが確認されており,服用回数を減らせることで患者の利便性が向上し,内服忘れも防ぐことができる.

2.最近の治験の状況

1)L-dopa製剤
① L-dopa徐放剤(IPX066)
L-dopa徐放剤はこれまでL-dopa剤より長く作用するため,オフ症状の軽減,短縮につながる可能性がある.2012年4月に行われた第64回米国神経学会年次総会にて,第Ⅲ相臨床試験(ASCEND-PD)の結果が報告された.オフ症状を呈する進行期パーキンソン病患者110名に対し,carbidopa・L-dopa合剤およびエンタカポン併用(日本未発売のスタレボ®)との比較が行われたが,IPX066は有意に日中のオフ時間を短縮することが確認された(23.98% vs. 32.48%, p<0.0001).

<font color="blue">②Duodopa(ABT-SLV187)
DuodopaはL-dopa/carbidopa合剤を4:1の割合で含む腸ゲル剤で,十二指腸内へ,経胃・空腸内に吸入ポンプを用いて直接持続投与する.やはり第64回米国神経学会年次総会にて報告があり,オフ症状を呈する進行期パーキンソン病患者において,同じ成分の即放性錠剤と比較し,オフ時間を短縮することが示された(4.04時間vs. 2.14時間;p=0.0015).日本でも2011年に第Ⅱ相臨床試験が開始された.胃瘻造設による留置アクセスチューブの挿入を必要とするため進行期のパーキンソン病患者向けの治療である.

2)rotigotine貼付剤
1日1回使用する唯一の非麦角系ドパミンアゴニストの経皮吸収型製剤である.24時間一定の血中濃度を維持し安定した効果が期待できる.手術で内服ができない,もしくは嚥下障害や消化器症状のため内服ができない場合などで重宝するものと期待される.

3)アデノシン2a(A2a)受容体拮抗薬
大脳基底核に局在するA2a受容体に対する拮抗薬は,基底核神経ループの異常を制御して運動症状改善をもたらすと言われている.国内で臨床開発されている薬剤として,イストラデフィリン(KW-6002)とプレラデナント(SCH 420814)がある.前者は2012年で国内でも治験が終了,現在,承認申請中.後者は第Ⅱ相臨床試験が進行中.オフ時間が延長した患者への新たな選択肢として期待されている.

4)モノアミン酸化酵素(MAOB)阻害剤
サフィナミドはドパミン分解酵素であるモノアミン酸化酵素の酵素活性を阻害することでドパミン神経系の活性を高めるとともに,グルタミン酸放出阻害やドパミン再取り込み阻害作用を介して,パーキンソン病症状に効果を発揮するとされている.L-dopaあるいはドパミンアゴニストによる治療で運動症状の変動が認められる患者を対象に上乗せ効果を期待する薬剤である.

5)抗ジスキネジア薬
ジスキネジア(抗パーキンソン病薬の服用に伴って起きる不随意運動)に対する治療薬の開発も進められている.代謝型グルタミン酸5型受容体の拮抗薬AFQ056やアドレナリンα2受容体拮抗薬フィパメゾールの開発が進められている.

3.まとめ

基本的に上記の薬剤は運動合併症(オフ症状やジスキネジア)の改善を目的とするか,これまでの薬剤に上乗せして補助的に使用するものである.今後,症状の進行を抑える根本的な治療薬,運動合併症の出現を可能な限り遅らせる治療薬,そして非運動症状(便秘や頻尿などの自律神経の症状,不眠などの睡眠障害,うつ症状などの精神症状,認知機能障害)に対する治療薬の開発が望まれる.

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ALSにおける診断前の体重の減少率は予後の予測に有用である

2012年06月06日 | 運動ニューロン疾患
ALS患者さんでは病初期において体重減少が生じうる.原因として,代謝亢進にともなう低栄養やグルコース不耐症,脂質代謝障害,交感神経の過緊張が関与することが指摘されている.この体重減少をもらたす低栄養状態は,ALS患者さんの予後を予測する因子となることが知られており,とくにALSの診断時,ないし胃瘻造設時の栄養状態が重視されてきた.しかしいずれかの時期,つまりワンポイントにおける栄養状態よりも,発症からの栄養状態の変化を用いたほうが予後の予測に有用である可能性が推測される.今回,発症時からALSの診断までの体重の変化と予後の関係を検討した研究が日本から報告されたのでご紹介したい(東京都立神経病院清水俊夫先生をリーダーとする多施設共同研究で,新潟大学脳研究所神経内科も参加しました).

対象はEl Escorial診断基準を満たした(possible ALSより確かな症例)孤発性ALS患者77名(男性32名,女性45名).エンドポイントは死亡ないし人工呼吸器装着とした.罹病期間は自覚症状出現からエンドポイント出現までと定義した.体格指数(body mass index;BMI)の減少率は以下のように計算した.
⊿BMI = (発症前のBMI-初診時のBMI)/発症から初診時までの期間
また低栄養のカットオフ値としてしばしば使用されるBMI=18.5で2群に分け,2群間の臨床像・予後の比較も行った.

さて結果であるが,発症年齢は中央値66.4歳,罹病期間は中央値2.1年(四分位範囲1.4-3.2年).BMI(中央値)は発症時,初診時で,それぞれ22.9 kg/m2および19.9 kg/m2.BMI減少率は中央値2.5 kg/m2/yearであった.

問題の罹病期間と臨床データの相関だが,初診時のBMI値,%FVC,PaCO2は相関しなかった.しかしBMI減少率は罹病期間と有意な逆相関を示した(R= -0.5409,p<0.0001).初診時のBMIを18.5で2群に分けた場合,生存曲線のあいだ差は見られなかったが, BMI減少率として2.5を境にして2群に分けた場合,有意差が認められた.最後に単変量解析を行い,BMI減少率は生存に影響を与えることを確認した(P<0.0001).発症年齢や%FVCの影響も認められたが,その影響は小さかった(P=0.043および0.037).

以上より,発症早期における体重の減少率はASL患者さんの生存を予測する因子として重要であることがわかった.初診時のBMIは病院ごとのばらつきも大きかったことから,ワンポイントでのBMI,体重の評価より減少率の評価が有用であることが確認された.

さらに本研究の結果,予後の改善のためには栄養管理への介入,具体的には胃瘻の増設時期や必要カロリーの設定が重要である可能性が示唆された.そのためには,今後,ALSの病期ごとの必要カロリーについて明らかにする必要が考えられた.

Reduction rate of body mass index predicts prognosis for survival in amyotrophic lateral sclerosis: A multicenter study in Japan. Amyotroph Lateral Scler. 2012 Jun;13(4):363-6.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22632442

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