ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

聴くことと弾くこと

2013年10月17日 | レッスンメモ
「自分の出す音をもっと良く聴きながら弾いて!」というのは、もう決まり文句のようにレッスンで繰り返し言うことですが、初心者の人にとってはピアノの音を「よく聴く」ということが一体どんなことなのか、ピンとこないかもしれません。

音というのは、雨の音も風の音も雑踏の音も何の音でも自然に耳に入ってきて、聞こえてくるものです。ところが「聞こえる」ということと「聴く」ということは違うのです。「聞こえる」というのは耳の機能のレベルの問題であって、健全な耳を持っていればそれで十分でしょう。一方、「聴く」というレベルではそこから先の認識、分析能力が問われます。それぞれの音の微妙な音色を聴き分けて評価するという情報処理能力に関わる問題です。これは目的に応じた訓練と経験によって鍛えることが可能です。調律師さんが調律をしている姿を見ればこのことは一目瞭然ですね。

ピアノを練習する際に、鍵盤の上で間違いなく指を動かすということにとらわれ過ぎて、自分の出している音に無頓着な生徒がいます。手指の訓練にはなっていると思いますが、それではよい音楽にはなりません。100メートル競走に向けて脚力をしっかり鍛えて、いざレースに臨んだら、みんなと違うゴールに向かって駆けだしてしまうようなものです。いくら速くてもそれでは意味がありません。

ゴールはあくまで魅力ある音楽をつくること。そのために「弾く力」と「聴く力」の両方が必要なのです。

聴く力を養うためには、まずは、コンサートやリサイタルなど、生の演奏を実際に聴きに行くことです。素晴らしいコンサートもあれば退屈なコンサートもありますが、素晴らしい演奏のときは、向こうの方からギュッとつかんで耳をぐいと引っ張ってくれるので、いやでも集中して聴くことになるでしょう。そういうコンサートに一回でも多く巡り会えるように、小さな時からできるだけ数をこなすことが大切です。どのコンサートでも自分が審査員や評論家になったつもりで聴いてみると、だんだん集中して聴けるような気がします。

また、自分でピアノを練習ているときには、意識して同じ個所を違う音色で弾き比べてみるとよいでしょう。その中に自分の求める音色があるかどうか、満足がいかなくて、何度も何度も耳を凝らしてチェックするために集中して弾いて聴く、また弾いて聴く。これを繰り返していくと自然に耳と脳が鍛えられて「聴く力」が身につくようになると思います。一つ一つの音がどんな音かを深く深く掘り下げて聴き分ける精神力とでもいいましょうか?

ピアノの場合、たくさんの練習を要しますが、指を動かす運動能力とは別に耳を鍛える事が大事です。ここはバランス良く、聴くことと弾くことを一緒に進めていければいいなと思います。

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