ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

ラフマニノフ作曲 Op.3-1 「エレジー」

2013年11月07日 | レッスンメモ
発表会に備えて熱血指導の毎日を送っていますが、練習に精を出さなければいけないのは、実は生徒だけではありません。かくいう私も毎年恒例、発表会の最後に大トリをつとめるのです。ピアノは一生学び続けるもの。先生である私も生徒のみんなと一緒に共に学んでいるという思いを伝えたいからです。

今回私が弾く曲は、ラフマニノフのエレジーです。この曲はラフマニノフの「幻想的小品集」の中におさめられている5曲のうちの第1番の曲です。この小品集の中で最も有名な曲は第2番の「プレリュード(鐘)」でしょう。何年か前にあのスケートの浅田真央さんがフリーの演技のときに使った曲なのでみなさん良くご存じだと思います。それに比べれば第1番の「エレジー」の方はあまりなじみがないかもしれません。それでもこの「エレジー」はラフマニノフがこの小品集の第1番にもってくるだけあって、素晴らしい名曲だと私は思っています。全体を流れる曲調はそのタイトルの通り、むせび泣くような哀しい想いが切々と歌われているような曲です。この曲集が完成したのは1892年ということですから当時ラフマニノフは弱冠19歳、モスクワ音楽院の作曲科を卒業した年なのです!

それにしても19歳の学生がどうしてこんなに内向的で、むせび泣くような、哀しい曲を作曲したのか? この前年には同じ音楽院のピアノ科を最優秀の成績で卒業していて、学生生活は順調であったかのようにも見えるのですが・・・。この曲を弾いていると本当に彼の暗い哀しい叫びが聴こえてきます、切ない嘆きが聴こえてきます(少なくとも私にはそう聴こえます)。

よく知られているようにラフマニノフは裕福な家庭に生まれ育ちましたが幼少の頃に家が没落破産して、両親が離婚してしまいます。その後大変な不良少年として母親を悩ませたこともあったようです。そんな中、ようやく奨学金を得て音楽学校に進み音楽の才能が花開いたのでした。音楽が多感な少年期のラフマニノフを救ってくれたのでした。ここまででも十分ドラマティックな生い立ちですが、その後のロシアでの苦難と成功そしてロシア革命後の亡命、アメリカでの新生活などなど、その後のラフマニノフの生涯も決して平坦ではない、波乱万丈のものでした。

私たち後世の人間はラフマニノフの全生涯を一通り見渡した上で、一つひとつの曲を眺めることができるのですが、そうした目で見ると、彼が19歳のときに作曲したこの「エレジー」の中には、その後の生涯を通じてラフマニノフにつきまとう悩みや悲しみ、怒りや諦めなどの心情が、すでにもう全部詰まっていると思えてなりません。

楽しいばかりが人生ではない。一生懸命やっていればいるほど何事も綺麗事だけでは済まされない。それはピアノも同じ。そういう思いを胸に秘めて、ラフマニノフがこの曲に注ぎ込んだ情念を私なりに紡ぎだしていきたいと思っています。

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