ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

心やさしいハノン

2012年12月15日 | レッスンメモ
この10月から佐賀県の私の実家で教えることとなった大人の生徒の集まり、「ラ音の会」。昨日とその前の日は、そのための出張でした。ピアノを教えるだけでなく、音楽家の歴史など音楽にまつわる豆知識の講義の時間もあります。

その中の一つのエピソード。その生徒さんは私とほぼ同世代の方。基本からきちんとやりたいとのことで、ご自分からハノンがしたいとのお申し出でした。ハノンといえば、指の訓練に使う教則本で、曲らしい曲ではないのです。前回から取り組んでいますが、今回、弾いたハノンは前回に比べて、ずっと無理なく自然にきれいに弾いていらっしゃいました。レガートが素敵になったこと、手首が柔らかくなって、無理なく弾けていることが大変良かったとお伝えしました。

「先生、私、ハノンが大好きになりました。こんなにハノンって楽しくてきれいな曲だったんですね。」とおっしゃいます。不思議なもので、どんな曲でも、気持ちを込めて、この曲きれい! 大好きと思って、慈しむように弾いていると、ほんとにきれいな音が出るようになってくるものです。

もちろん作曲された曲そのものが本来持っている力というのはあると思いますが、実際に耳で聴くときには演奏者の力というものによって、せっかくの曲が生きたり死んだりりすると思います。逆に言うと、一見何の変哲もない、退屈そうな音の並びでも、弾きようによっては美しく奏でることはいくらでもできるのではないでしょうか。つまりどんな曲でも、それを魅力ある音楽としてきれいに演奏することはできると思っています。たとえ、「ドレミファソ」を弾くのだって、音楽的に素敵に弾くことができます。ただ機械的に音を並べるだけのように弾くことも可能です。この素敵に弾くところに音楽があると思っています。

ハノンも機関銃のように弾くと面白くなくて、攻撃的になってしまいます。無理なく優しいハノンは、そこに音楽があって、素敵です。

レッスンの後のおしゃべりの時にその生徒さんは、自分の夢を教えてくれました。「1年に1曲ずつでいいからちゃんと仕上げて、10年後には10曲はきちんと弾きたいんです。」とおっしゃいます。そして今年還暦を迎えられたご主人に、10年後、喜寿のお祝いで、10曲のピアノ演奏をプレゼントしたいんだそうです。

なんて素晴らしい夢なんでしょう!心が温まる、そんなお話をきき、だからこんなに心やさしいハノンが弾けるんだと大いに納得しました。

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コメント
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