写真家中川道夫さんを招いて「写真家は建築家と都市のたくらみを目撃してきた」という刺激的な副題のある「都市はメディアである」と題した写真を拝見してお話戴き、そのあと来場した方々と共に写真談義を行うことになった。
今年のJIA(日本建築家協会)建築家写真倶楽部のアーキテクツガーデンでの一齣である。6月19日(金曜日)の6時半から、会場はJIA建築家倶楽部です。この僕のブログを読んで下さった方々、是非お出かけ下さい。
僕は創設期からこの部会を率いてきたが、一回り若い中川道夫さんと同年代の建築家藤本幸充さんが僕の後を引き継いでくれることに成った。このトークはその彼の第1回目、とは言え中川さんとのやり取りは僕が行うことになった。
藤本さんが中川さんと打ち合わせをして構築したこのチラシの魅力的な写真は、中川さんの著作「上海紀聞」の表紙に使った『時』を感じさせる写真である。
ところで中川さんの「上海」を捉えたもう一編の著作「上海1979-2009双世紀」について、かつてこのブログに記載した一編を記載(再録)させていただく。
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「上海1979-2009双世紀」 <2010年4月7日 兼松ブログ>
写真家中川道夫さんが、写真集「上海1979-2009双世紀」(岩波書店)を出版した。1969年高校生だった中川さんが訪れた上海は、路上には革命歌が流れ,紅衛兵が闊歩しているなど文革の余波が蠢いていて大きな刺激を受けたが、外灘(バンド)に林立する西洋様式の建築の姿が脳裏に刻み込まれたという。
個人旅行が許されるようになった1980年代に待ちかねて訪れた上海は、造反の熱気は消えて改革の時代になっていたが、以降中川さんは普段着のまちと市井の人を撮ろうと30年間に渡って市中を徘徊して写真を撮り続けたのだ。
この写真集は、国際都市上海の歴史を浮かびあがらせるだけではなく、そこで生活する人々の姿を捉えていることによって、僕の心を震わせる。
僕が上海に行ったのは90年代になっていた。
今のように開発がなされておらず、中川さんの80年代に撮った写真を見ると其の時の風景が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
僕も写真を撮った。
カメラを向けた租界の町並みや、道路に面して布団や洗濯物を干す様や、朽ち果てそうな建物の入り口にたたずんだり、道端に数人で腰を下ろして路行く人を眺めている様や、掛け声が飛び交う路上、自転車に乗って仕事に向かう姿を中川さんも捉えているが、其の情景が人が生きている証のように思え、フィルムだけではなく目にもこびりついていて、「生きること」、それでいいのではないか(これで何が悪いのか)と感じたことを思いだした。
それが20年経ってもまだ僕の中に巣食っていることに驚いている。
僕はこの一度しか上海に行く機会がなかったが、開発が進み、超高層建築が林立するさまも写し撮られており、其の写真も取り込んで構成された写真集のページをめくると、租界とは何だったのか、超高層建築群は人に何を与えているのかなどなどとつい考え込んでしまう。
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