札幌市立大学那須聖准教授の院生に講義するためのPPをいじくっていたら、日付が変わって7月の4日、明け方の3時になってしまった。
テーマは「歴史性と計画 資産・遺産の継承と建築的発見の探求」という興味深いものである。羽深教授研へ留学した韓国からの院生には、韓国第三の都市大邱(デグ)の日本が統治した時代の変遷の概要もレクチュアする。
明るくなってきた5時半に起きて羽田に向かった。社会人院生2年目になったMOROさんのBOX・CARで、内藤廣さんの設計した旭川の駅舎や偕行舎などを案内してもらって小樽に向う。講義は明5日、今年は、からッとして気持ちのいい北海道をのんびりと楽しんで下され!というのがMOROさんの心遣いだが天気は良くない。まあなかなか思うようにいかないのもまた楽し。
高速を走る車の中でうつらうつらしていたら、あの赤い奴、ロータス・ヨーロッパに乗り換えたいと言う。天気が大丈夫そうだから!雨の中を走らせるのが恐いのだ。
昨年に続いて乗ってみてくださいというので、恐る恐る尻を突っ込んで地面にくっつきそうなシートにもぐりこむ。シートベルトが伸縮しないので〆ると、足の短い僕はクラッチが踏み込めない。寝転ぶように必死で足を伸ばしてギヤを入れた。
こいつ!だから僕はこの車を『奴』と言いたくなるのだ。「この赤い奴!」。
日が落ちたプレスカフェの室内から灯りが漏れてくる。ライトアップされたメニューを置いたチンクエが中庭に鎮座している。ああ!いつものプレスカフェだ。
ターマスがニコリとうなずく。天井梁のBOZEからスローバラードがながれてくる。ピアノの呟くようなタッチが僕を迎えてくれた。
プレスカフェの日常が僕の、無論MOROさんの、ターマスの日常なのがじんわりと嬉しくなる。MOROさんはマンデリンで僕はイタリアン。このコーヒーを飲むことからいつもの小樽の夕闇が始まる。そしてメインディッシュはあの赤いケチャップを使ったナポリタンだ。メニューにない特別ディナーである。
去年、ケチャップの食べ比べをやって、こっちがいいねえ!といったらニヤリとうなずき、お主味がわかる奴だと僕を喜ばせたターマス。幾つも試してたどり着いたのが、そこらにあるコンビニで売っている奴だと言うので話が弾んだのだった。