躯体の一部を残して改修し、高層化された「旧東京中央郵便局」が7月17日にオープンした。郵政サイドが残したとする部分を登録文化財にするよう文化庁に要請しているとの報道がなされている。
その報は、早くから風聞のようなかたちで伝わってきた。
危機感を持った僕と南一誠芝浦工大教授は志のある方々と相談し、4月29日にドコモモ ジャパンの主催として「都市環境におけるモダニズム建築の保存・活用」と題したシンポジウムを行った。
中郵問題(主として東京と大阪の中央郵便局解体問題)を取り上げて、僕たちの抱えている現在の課題を論議しようという思惑からタイトルが総括的になったが、要は『(旧)東京中央郵便局を文化財にさせない』ためと、一方の解体が始まったものの「(旧)大阪中央郵便局を重要文化財にする」ための論議を行うためだった。
その報告は、4月30日のこのブログに記載したが、沖縄問題にも触れたために分かりにくくなったかもしれない。趣旨の要は上に記したことに尽きる。
7月19日(木)、ほぼ2年に渡って、超党派の国会議員連ともリンクを取りながら活動した「東京中央郵便局を重要文化財にする会」の南一誠教授、事務局長の多児貞子、兼松(副代表)の3人で、第一衆議院議員会館に赴き、平野博文文部科学大臣秘書官に、ドコモモのリーフレットやシンポジウムの概要を記載してくれた建築雑誌の記事などを資料として、陳情書を提出して僕たちの懸念と趣旨を説明させていただいた。
この陳情書は、6月13日付で提出済みである。
この「旧東京中央郵便局庁舎」は、躯体の一部を残したとは言え、外壁のタイルは新しいものである上に施工状態も継承されておらず、さらに窓枠とタイルの収まりなども設計者吉田鉄郎が腐心した志を継承されたとは言えず、つまりこの建築は高層化されたことの論議は別の課題だとしても、オーセンティシティ(原初性や由緒ある正しさ)を継承したとは言えないからだ。
文化庁での論議を踏まえてもし仮に「登録文化財」になると、建築文化行政の今後に悪影響を及ぼす上に、今後日本各地のさまざまな歴史を担った大切な建築が、この例に習って破壊されていくことへの懸案を憶えるからである。
さてその後、ドコモモ ジャパンの定例会議に出席した。
この会合で上記の、陳情した旨の報告し共感を得る。ところで今回の会合の大きなテーマは前川國男の設計した「京都会館問題」である。
ドコモモ ジャパンの副会長に就任した松隈洋京都工業繊維大学教授から、京都市の策定した「京都会館再整備計画」に基づいて提出された「基本設計案」についての報告がなされ、参加したメンバーによる喧々諤々な論議がなされた。
京都会館の要、第一ホールを解体、建て替える計画は、設計した前川國男の志した京都の風土への対応や、時代を超えたともいえるこの建築の価値を継承しているとは言えず、同時にこの建築が建てられてきた50年の間に、京都市民の慈しむ岡崎公園や疎水の趣を損なうものだと僕も考察する。
やはりここでも、モダニズム建築であっても「オーセンティシテヒイ」の概念の継承、そして論ずる概念の一つとして「インテグリティ(純粋性、豊かさ・言い換えると建築の相対的な価値)」という言葉が表明された。さて論議は論議、この建て替えに至る市の不透明な仕組みの気味悪さなど、沖縄問題にも通じる課題である。
どう対処すればいいのか!
<写真 国会議事堂>