日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

蝉の声

2013-07-25 11:31:39 | 添景・点々
窓を小さく開けて眠る。熱帯夜だ。起きてふと目をやると、アルミサッシの引き戸の縦桟に蝉が留まっていた。一瞬季節感が朦朧として何が起きたのかと戸惑った。まだ我が家の周辺では蝉声が聞こえない。ところが事務所に出てくるときの新宿中央公園では、耳が痛くなるほどの「蝉の声」に満ち溢れていて、それにも一瞬戸惑う。昨日もここを通ったのに気が付かなかったのだろうか!あるいは今朝から大挙して、セーノと声をかけて一斉に?まあそんなことはないだろう。
本物の夏がきたのだ。

講談の世界では貼り扇を釈台にポンと叩き、カラスカーと鳴いて夜が明けてと、時間空間を吹っ飛ばすが、一龍齋貞丈先生がTVで、そんなことないのだがと対談の相手を笑わせていた。いや、でも、夜明け、まずカラスが鳴くとしばらくして小鳥連がかまびすしく囀り出すことを何度も体験している。情けないことに尿意を覚えて5時ころに目を覚ましてしまうからだ。ところが一昨夜、3時ころに(夜中だ)カラスの声で目が覚めた。何かが変ではないかとぼんやりと考える。

蝉の声に送られて明日から九州に行く。福岡、長崎、天草の下田だ。懐かしき二人の建築家に会い、古町にある実家に立ち寄って叔母に会い、近くにある存続が気になる長崎市公会堂の様子を見て天草へ。小学生時代の旧友が待っていてくれるのだ。

<写真 本文と関係ないが7月17日に行われた愛知芸大の委員会時に撮らせてもらった、秋の使用開始に向けて準備の進んでいる新音楽棟>

歌舞伎座:「襲名」という概念と、新オリンピック競技場

2013-07-15 14:49:17 | 建築・風景

JIAアーキテクツ・ガーデンという、6月15日から一月に渡って様々な行事を行った締めとして、一昨日(7月15日)鈴木博之青山大学教授に基調講演をしていただいた。会場は神宮前の建築家会館である。

僕はJIAメンバーとしてこの一連の行事に参加した。主宰している「建築家写真倶楽部」のイベントで、写真家村井修さんに師事している写真家鈴木正見さんを招いて「写真家鈴木正見の撮るインドとネパール & 師『村井修』の撮影裏話」と題した写真を使った講話を開催(7月5日)。興味深い話をたくさんお聞きすることができたので、いずれこの欄でも紹介したい。

さて鈴木教授の講演である。
タイトルは「建築の現在・継承・襲名」。僕はいくつかの委員会でご一緒しているし、DOCOMOMOの代表を担った鈴木教授と共に幹事長としてDOCOMOMO Japanを率いてきた縁もあって、来場した方々へプロフィール紹介をした。

講演は二つのテーマ、「建築と都市の日本的手法」と「2020年オリンピック施設応募案から」と題した興味深いものだ。前半は「庭園的都市、借景、縮景、見立て、読み替え」とのサブタイトルによる江戸から東京に変わっていく都市の変遷とそこにかかわる企業や建築家の実像、そして、現代に眼を向けた新設された歌舞伎座への論考、継承・襲名という概念構築問題である。
保存と絡んでくる大きな課題で、歌舞伎座はいわゆる保存でもなく、レプリカでもなく、単に新築ともいえない概念「継承(伝統の!)・襲名」だが、何でもありになることへの懸念も表明、襲名とは言いえて妙だと鈴木教授の語彙の豊富なことに一驚することになった。

関連したもう一つのテーマは、都市は「無から有」を生み出すのでない。そこに建築の現在に、継承(保存)の課題があるとの論考。余談だが、17日に愛知芸大の委員会の後大阪に行き、竹原義二さんに会ってヒヤリングすることになっていて、その竹原さんの事務所名は無から有を生み出すのだとなずけた「無有建築工房」だ。都市の一般概念を飛び越える建築家竹原さんの想いを感じ取ることにもなるだろう。

さて鈴木都市論に関しては、つい最近著した鈴木教授の著書「庭師小川治兵衛とその時代」(東京大学出版会刊)を読み進めていて感じ取っていることや、著作「都市へ」での問題提起に心を打たれたことを、関連しているテーマなので追記しておきたい。

後半のいくつかのコンペ応募案を画像で写し、その新国立オリンピック競技場コンペ案に関する論考は、審査員を務めた鈴木教授ならではのもので、来場した建築家は身を乗り出しながら聞き入った。歌舞伎座とこのコンペ案の底にある都市の概念との繋がりに興味深々となる。
勝ち取ったザハの案。丹下健三の代表作、代々木の体育館の空間構成の要、二本の構造体のイメージ,つまりオマージュが読み取れるのではないかとの指摘と他の案への審査員の評価などの裏話は興味が尽きないものだった。
会場からの質疑も的を得たもので、今までにない巨大なスケールによる建築・構築物に対して、使い、見る人間との関わりをどう捉えていくのかという課題が浮かび上がった。

会場には、建築学会の委員会でご一緒した構造の佐々木睦朗さんや、剣持デザイン事務所の松本哲夫さんもいらして話が弾んだ。

梅雨明け、猛暑、参院選、ダルビッシュ、そして紅秀峰と花は花咲く!

2013-07-07 12:57:31 | 日々・音楽・BOOK

雨が降らないのに「梅雨入り」宣言があり、猛暑になって関東甲信地方では西日本より一足早く、梅雨が明けたという。
都議選があって参院選の前章だとマスコミが囃し立てたが、都民ではない僕の中にはなにやら奇妙な嫌悪感が巣食った。その参院選が公示された。
新聞ではいつものことながら当落想定表示が始まり、それがほぼ当たったりすることを知っているので、何がしかの意欲がそがれ危機感もつのる。そしてアメリカのオールスターゲームに選ばれたダルビッシュがアストロズ戦先発して打たれた。打たれたということよりも、うつむいてベンチに戻る覇気のないその姿が気になった。
それでもTVのチャンネルを回さないのは、解説者大島康徳さんとアナウンサーのやり取りが興味深いからだ。アメリカ文化の一側面が浮かび上がってくる。と同時に、なにやらまだ行く先の見えない現代の世相を目にしているような気もしてくるのだ。
マイナス思考的で僕には似つかわしくないと思うものの、昨今の事象を身に受けて、何かの変わり目を感じているのだとの実感がある。

そこへ高校時代の友人から山形の「紅秀峰」が届いた。一服の清涼風、見事な美しいサクランボである。持つものは友人だ。
さらに点けっぱなしにしていたTVから「花は花咲く」プロジェクトによる歌と映像が流れてきた。一緒に口ずさみながら、こみ上げてくるものがある。