前稿、高志保の浜辺にたどり着くには車を留めて、急傾斜の曲がりくねった坂道(コンクリートで整備されている)を降りていくことになる。その浜辺の海際には、平たい岩石が顔を出していて味わい深い。訪れた時は引き潮だったようだ。
その山側には、湧き水の出るという岩石で覆われた空洞があり、坂道にある案内看板には「豊かに湧き水流れ出て、戦前から水道が普及するまでの人々の生活を支えた」(此の一節の他省略)と書かれている。そして、`現在でも瀬名波では水の恩に感謝して大御願(うふうがん)、フトウチ御顔(うがん)で拝んでいる、とある。
此処を訪れたのは初めてだった。遠くの海は、水平線の先に太陽が落ちていく絶景。その水平線には小さく見える客船がゆったりと通り抜けていく。浜辺は左程大きくはなく、山地際・岩壁の麓には寄せ波によって(と思われる)履き潰したズックやジュースのボトル、何故か竹箒、ごみなどが散乱している。残念ではあるが妙に人の気配を感じ得て、一瞬しかたがないか! などとも思った。
そしてその異物の一角に蟹の姿が、引き潮時に海に戻れなかったのだと、瞑目したくなった。