日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

晴れ日和:車窓から見た人気(ひとけ)が感じ取れない建物の群れ

2017-03-29 17:17:40 | 建築・風景
日差しはそれなりに強い。とは言え、小田急線厚木駅のプラットホームから見る大山、その左手には真っ白な富士山の裾野の断片が光り輝いている。
その右手の背後に連なる山脈、おそらく蛭ケ岳などの丹沢山塊のチラホラと雪文様が宿る朝の光景が、昨日とは違って今朝はぼんやりとしている。

三月も末、晴天とは言えない茫漠とした空。
でもなぜか建物の影はしっかりとその地や隣接する建物に影を落とす。こういう光景も現れるのだと思いながら、がら空きの各駅停車新宿行きの座席に腰かけてニーチェの「愉しい学問」第3巻148番を開く。タイトルはこうだ。”宗教改革はどこで起こるか“
そしてこんな一文に思わずにやりとしてしまう。

‥…ドイツのキリスト教文化は、あたかも百重にも絢爛と花開こうとしていた。― わずかにあと一晩足りなかった。ちょうどその晩、嵐がやってきて、一切が終わってしまった…。

町田でロマンスカーに乗り換える。多摩川を通り過ぎると東京都。でも今朝の車窓から見る建物が埋れ込まれた初春の光景、人気(ひとけ)を感じ取れなくて異様な大平野を駆け抜けていくような錯覚(?)に襲われ、我、大丈夫かと思ったものだ。

森一郎教授の「ニーチェ」 にトライ

2017-03-19 21:28:02 | 日々・音楽・BOOK
文庫本「愉しい学問」(講談社刊)をお送り下さった東北大学´森一郎教授`のトークショーを拝聴した。
この3月18日(土)、東京駅八重洲口を出た道路の向かい側、八重洲ブックセンター8階のギャラリーである。本のカバーは、仙台の写真家小岩勉さんの、広瀬川で遊ぶ子供たちの姿を撮ったストイックなモノクロ写真で構成されている。数年前に小岩さんと共に、東北各地の広大な被災地巡りをした折、この写真を撮った処で被災の様相を見て、コトバが出なかったことを想い起こした。

この507ページに渡る分厚い本には、詳細な訳注と、「訳者あとがき」とした森一郎教授の綿密な論考が記載されているが、まずこの冒頭の序文を一読することから僕の読書がスタートした。そして彼方此方に傍線を引くことになったものの、この序文もまた貴重な読み処なのだ。

森教授が東京女子大学(東女・トンジョと呼称)に在任時代、A・レーモンドの設計による東寮と体育館を何とか残したいと、トンジョのOG連と共に活動をしたものの残すことができなかったことを想い起こす。

この度のギャラリートークには、そのときの東女OGの方々が数名在席されていた。お互い笑顔で思わず握手をしたりすることになった。そして、おそらく終生、僕の心のどこかに東女でのそのときの保存活動の経緯が留まっていることに気がついた。
森先生の講話をお聞きした後、ブラ歩きをしてOGの方々と昼食を共にする。

この一文を起稿しながら『喪われたレーモンド建築』と題した、『なぜ残せなかったか?』とサブタイトルのある著書を本棚から取り出して久し振りに観ている。僕が寄稿した「不条理と戦う考」と題した一文を読み返したりした。
その表紙には、『ホンモノは、「残さないでよかった」ことは一度も無く「残してよかった」か「残せばよかった」しかない』と記された東女のOG、作家永井路子氏の一文が記載されている。

沖縄ん!(3)實清さんの器

2017-03-11 18:36:35 | 沖縄考
大嶺實清さんとの陶話が尽き無かったが、ふと陶棚に沿った床においてある二つの器を持ってきてごらん!と言われた。そして根路銘さんと僕にプレゼントしてくださるとのコト、二人で思わず顔を見合わせる。

一つは天目形、そしてもう一つは沓形。僕はこの沓形の景色と同じの小ぶりの平形に近い實清さんの器を持っている。しばし考えて根路銘さんと眼を合わせながら、持っているのと同じ景色だけどこっちにしようかな!とぼそっとつぶやいた。彼はにこやかな笑顔に・・・實清さんも笑みを浮かべる。

帰郷してからどう使っている?と電話をしたら、眼路銘さんは載いたお茶碗でご飯を食べてますとのこと、さて僕は!

空の旅を味わう~福岡・別府・大分へ

2017-03-05 20:17:50 | 自然
6ch・The World of Jazz from Concord Music Group 記載された機内オーディオ番組。ANAで飛ぶ空の旅の何よりの楽しみ。こう始まる。
「ハロー マイネームイズ ローレンス・タンター。」

この2017年3月1日.ANA243便、羽田発am8:20.福岡am10:15。ANAスカイホリデーの機内でこんなメモを´旅のご案内`に書いた。

『`ムクムクと盛り上がる雲を、窓の下方や間近に観るのが好きだ。時折りそのなかに潜り込んでくる真っ白、何も見えなくなって舌打ちすると、すぐのそっと空が開けて!
座席に設置のインターホンではJAZZ。アート・ペッパーのトランペットが叫んでいる。時折り何時までも時の経緯を忘れさせるタナーの「ベリーナイス」との一言と、この番組の懐かしきテーマソング繰り返されて聴こえてくる。』

<追記:写真は、帰郷の日、大分空港から羽田空港行きの、ANAとタイアップしているソラシドエアからの夜景です>

沖縄ん!(2)黒の筒茶碗

2017-03-01 17:41:44 | 沖縄考
大嶺實清さんの陶房に伺い、トライしていると思われる黒の筒茶碗を前にして今年もまた根路銘さん共々實清さんの陶話に聞き入った。

實清さんは予予(かねがね)利休を支えた長次郎と織部を引き合いにしながら、「楽」一徹の利休と、折々に姿を変えていく織部の作陶に目を向けながら、ご自身を「俺は織部だなあ!」と述べたことが僕の中にいつまでも留まっている。

しかし目の前の筒茶碗と、それを包み込むという若き織物師作の織物を前にした論考は、八十歳を超えてもまだ新しい世界(利休の世界だろうか!)にトライする意気込みと、思わず手に取って魅入ってしまった茶碗に魅せられた。
ふと気がつくと1時間半ほど時を経たが、その間に大勢の人々が訪れて、次々と實清さんの作品を手に入れていく。時折實清さんはにこやかに彼ら(彼女ら)に声をかけ、一瞬和やかな空気が近辺に漂うのだ。